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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2008/08/17(日)   CATEGORY: 夏のしらべ
夏のしらべ(5) 「初恋(fall in love)」
 えりなは昔から病弱な少女だった。それは彼女の生まれつきの病に起因しているもので、彼女が背負った宿命のようなものだ。彼女は勉強の成績はよかったが、体育だけは見学が多かった。あまり激しい動きができなかったし、おかげで運動が苦手だった。
 成績がよかったのは単にえりなが努力家だったということにほかならない。学校を休みがちだったえりなは普通の生徒の何倍も勉強をした。母親を安心させたかった気持ちもあるが、彼女自身勉強を嫌いではなかった。何より学ぶことの楽しさを知っていた。
 成績はよかったが、学校にあまり行けず、さらには人見知りなえりなには友達らしい友達ができなかった。それでも彼女は学校に行くことが嫌ではなかった。休み時間は読書に使っていたし、話す相手なら帰ったら母親がいた。母親にはその日に読んだ本の内容を話したし、一緒に料理を作ったりもした。彼女にとって母親であり、友達だったのだ。

 そんな日常が高校に入ってがらりと姿を変えた。

 その日の彼女は朝から体調が悪かった。いつもなら休み時間には読書をするのだが、そんな気分にもなれなかった。そんなときだ。
「大丈夫?」
 誰かの声が聞こえた。最初は自分に向けられたものだとわからなかったのだが、繰り返しその声が聞こえてやっと自分が声をかけられているのだと気付いた。
「具合悪そうだけど、大丈夫? 顔色悪いよ」
 普段母親以外と話さない彼女は、緊張で言葉に詰まった。
「立てる? 一緒に保健室に行こうか?」
 頭の中が真っ白になった気分だった。過去には出会ったことのないケース。もはや予想外のハプニングに近い。

 それでも、嬉しかった。

 人に心配されるって嬉しいことなんだ。このとき初めてえりなはそれを知った。いや、それよりも人と触れ合うことの嬉しさを知ったのかもしれない。
 その日は帰ってすぐに母親にそのことを話した。男の子と話した。一緒に保健室に行ってもらった。なんだかすごい嬉しかったの。彼女の母親はそれを楽しそうに聞いていた。

 それが陽向六飛と深凪えりなの最初の瞬間だった。

 そのとき彼女は恋に落ちた。

***

 えりなの母親と別れてからも六飛は公園のベンチに座っていた。
 彼女の母親に聞かされたえりなのこと。不治の病。六飛が声をかけたときの話。まさかたったあれだけのことが彼女にはそんなに大きな意味だったなんて。六飛は今でも思い出せた。いつもは本を読んでいるえりなが、その日は何もしていなかった。よく見ると顔色が悪い。具合が悪そうだった。それで心配になって声をかけた。それが彼女にとっては大切な思い出になっていたなんて。六飛の頬に涙が伝った。

 月明かりを頼りに、六飛は歩いていた。
 家に帰る前にほんの少し寄り道をした。このもう少しにえりなの家がある。彼女は今どうしているだろうか。
 ――もうあの子の命はなくなっちゃうかもしれない。
 えりなの母親の言葉が心の底で反芻した。彼女は今も元気にしているのか。心配だった。
「陽向‥くん?」
 えっ? 六飛が声の主に目を向けた。そこにはえりなが立っている。
「どう――してここに?」
 えりなは恥ずかしそうなポーズをとった。「ちょっと抜け出してきちゃったの」
「抜け出した…?」
「うん。たまに抜け出すの。夜に外に出るとお母さんが心配するから黙って、ね」
「どうして?」
「だって今夜みたいに月の綺麗な夜は、空を見上げながら月明かりの下を歩きたくなっちゃわない?」
 えりなは笑った。
 六飛も笑った。
「そう、かな。そうかもしれないね」
「うん。そうでしょう」
 六飛は夜空を見上げた。そこには大きな満月が浮かんでいた。
「たしかに、綺麗だね。外を歩きたくなるのも無理はない、かな」
「どうかしたんですか?」
「えっ?」
「なんか、見かけたとき元気なさそうだったから…」彼女は一瞬切なげな表情をしたが、すぐにそれを打ち消した。「勘違いならいいんです。それにもう大丈夫そうだし。…わたしの見間違いですね、きっと」
 えりなの笑顔を見て、思った。この笑顔、もっと見ていたい。
「あ、そろそろ帰らなくちゃ。すこーしだけ散歩して、すぐに戻らないとお母さんにバレちゃうから」
 六飛の中で何かが固まった。それまでおぼろげだった存在が、強くかたちを変えたようだった。
「あの、えりなさん」
(えっ、えりな? いつもは深凪さんって呼ぶのに――)
「明日、またあの公園で会えないかな」
「一緒に散歩した公園ですか?」いつもの六飛とは雰囲気が違う。それにえりなも気付いていた。
「そう、えりなさんが俺に好きだって伝えてくれたあの公園」
 一瞬であのときの光景がフラッシュバックする。えりなは思い出しただけで恥ずかしかった。
「あのときと同じ時間に。俺、待ってるから」
「えっ、あの――」
 言いかけの言葉は六飛にさえぎられた。
「じゃあ、明日ね。おやすみ」
 そう言って六飛は去ってしまった。
 残されたえりなはぼんやりと月明かりに照らされながら夜空の下、ぼーっと立っているだけだった。


<作者のことば>
この回はきつかったー。
最初から最後まで文章に納得がいかず。でも他の文章も思い浮かばず。

自分の力の未熟さを思い知らされた。

もっと腕を磨きたいです。
こればっかりは読んで読んで読みまくり、書いて書いて書きまくるしかないんだよなぁ。

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COMMENT

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凪水月 鏡花 | URL | 2008/08/17(日) 16:16 [EDIT]
文章に納得いかないなんて・・・。私よりずぅっと上手いじゃないですか・・・。いや、けなしているワケじゃないんですけど、スミマセン。
続きを楽しみにしています。今度は、納得のいく文がかけるといいですね。
あと、コメントを2つも、ありがとうございました。

錆浅葱 | URL | 2008/08/17(日) 17:09 [EDIT]
こんにちは~ 浅葱です
コメント久し振りな感じで(^_^;)
物語を最後まで読まないとどうやら感想言えないみたいで…自分でも発見です(笑)
活字に挫折はしてないですよ~
っつか おもしろいんで挫折しようがないです はい(^◇^)
● ガンバ
ペリット | URL | 2008/08/17(日) 18:45 [EDIT]
もしかしたら、この回だけ女性視点で書いてみたら別なのが出来たかもーって思ってしまいます。何か中盤で凄く書き悩んでいるのが、こちらにも伝わりましたから。勝手な思い込みだったら失礼しましたです。

最後まで頑張って下さい、地味に応援しています。

ミーコ | URL | 2008/08/17(日) 19:27 [EDIT]
あぁ、無理矢理感(笑)
えりな的にはお母さんにそんなことまで話されてるなんて!!ですよねー。キャー!!

嫁バズ | URL | 2008/08/17(日) 20:51 [EDIT]
こんばんわ!初めまして。

ブログ訪問して頂いて、どうも有難う御座います。
(訪問履歴から此方へ伺った次第です)

取り急ぎですが、挨拶をしに参りました。
それでは、お邪魔しました!<(_ _)>

匡介 | URL | 2008/08/17(日) 23:42 [EDIT]
>凪水月鏡花さん
いえいえ、俺はまだまだ未熟ですよ。頭の中にあるイメージを上手く再現できなくて四苦八苦してます。
だからこそ、上手く書けた! と思うときは快感です(笑)

ご期待に添えるかどうかわかりませんが、続きもよろしくお願いします。

匡介 | URL | 2008/08/17(日) 23:47 [EDIT]
>錆浅葱さん
コメントの件はお構いなく。たまにあるだけでも充分です♪
どうやら面白いと思って頂けているようで何よりです。マジ励みになりますよ。

若干プレッシャーも感じてしまいますが(笑)、今後も頑張っていきます!

匡介 | URL | 2008/08/17(日) 23:51 [EDIT]
>ペリットさん
正直、告白シーンからあとはずっと「参ったなぁ」て感じです(苦笑)
自分の力量を思い知らされましたね。
あと地味にじゃなく、盛大に応援してくださっても結構ですよ?(笑)

またのお越しをお待ちしています。

匡介 | URL | 2008/08/18(月) 00:05 [EDIT]
>ミーコ
その無理やり感は母親の話の内容にかな?
俺としては本来すべて母親の会話シーンだったところを回想っぽく仕上げて、どうにかごまかしたつもりです(笑)
実は紅林のストーリー原案の後半を読んだときに、俺自身無理やり感を感じてました(紅林君、批難ではないよ)。なのに何とかなるだろうと放っておいた俺のミスです。今度また一緒に作るときは、もっとストーリーに自分の意見をぶつけていきたいと思います。
やはり任せきりはよくないよね。

匡介 | URL | 2008/08/18(月) 00:06 [EDIT]
>嫁バズさん
わざわざお越しくださいましてありがとうございます。丁寧にどうも。

またお越しくださると嬉しいです。

lolina | URL | 2008/08/18(月) 20:40 [EDIT]
自分をかいできた物語?
私は好きだ。
先にリンクに追加するいいですか。

匡介 | URL | 2008/08/18(月) 21:30 [EDIT]
>lolinaさん
你是中国人吗?
間違っていたら申し訳ありませんが、中国の方でしょうか? そちらのブログを窺ったところ中国語の文面だったように思えるので。
どうやら日本語をかなり理解しているようで驚きです。わざわざ慣れない(?)日本語でコメントを頂き、本当に嬉しいです。

好きといってもらって嬉しいです。ありがとうございます。
リンクの件ですが、構わないですよ。こちらからもリンクさせて頂きますね。

またのお越しをお待ちしています。

lolina | URL | 2008/08/18(月) 22:04 [EDIT]
>>匡介さん
ありがとうございました。
そうです,たしかに中国人です。
アニメとコミックが好きのて,自分は少し日本語を勉強した。
好きといってもらって嬉しいです。
優しい物語と思うです。だから頑張って下さいね。
私今日本語を書くことは出来ないです,だから全部copyしているのです,たいへんですT T。
では、まず今日はここまでだ。
この物語は頑張って下さい。^^

匡介 | URL | 2008/08/18(月) 23:18 [EDIT]
>lolinaさん
書くことはできなくても読むことはできるんでしょうか?
どちらにしても日本語を勉強なされるなんてすごいですね。実は自分も少しだけ中国語を習いました。まぁ、挨拶程度しか覚えれませんでしたが(笑)
他の国の言語って難しいですよね。

応援して頂いてるようなので、もっと頑張りたいと思います。

lolina | URL | 2008/08/18(月) 23:54 [EDIT]
>>匡介さん
匡介さんの英語はどうですか? 英語は上手なら良いよね。
日本語は書かなくて本当に不便ですTUT。~~~
でも読むことはつづきます^^。
自分も中国語は難しいです(笑),だから頑張って下さい。
私の出来ることは言ってなさいね^^,全力手伝いします!~~~

匡介 | URL | 2008/08/19(火) 15:54 [EDIT]
>lolinaさん
英語もそれほどわかるわけではないのですが、その方が楽でしたらコメントは英語でも構いませんよ。
もし難しい日本語がありましたら訊いてください。答えられる範囲でお答えしようと思います。

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