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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2008/08/14(木)   CATEGORY: 夏のしらべ
夏のしらべ(2) 「来訪」
 ピンポーン。
 玄関のインターホンを押してしばらくすると「はあい」という声が聞こえ、ひとりの女性がドアを開けた。どうやらえりなの母親のようだ。
「こんにちは。えりなさんの友達の、陽向六飛です」
「いらっしゃい、どうぞあがって」母親はとても嬉しそうに言った。「えりなの部屋まで案内するわね」
 階段をのぼってすぐのところにえりなの部屋はあった。彼女の母親はそこのドアをノックした。
「えりな、お友達が来てるわよ。陽向六飛くん」
 その呼びかけに素早く応答があった。
「え!? もう来たの!?」
「来たのもなにも、ここにいるわよ。あなたの部屋に入れてもいいかしら」
 ドタドタと音がした。そしてドアが開く。
「あ、六飛くん…こんばんは」
 部屋から半身だけ出してえりなが挨拶した。それに六飛も返す。
「ほら、えりな、早く入れてあげなさい」
「もう! お母さん、いきなり部屋まで連れてこなくてもいいじゃない!」
「なにを怒ってるのあなたは。いいから入れてあげなさいよ」
「べつに怒ってなんかないわ!」
「ほら、怒ってるじゃない」
 その会話を聞いていて、六飛はつい小さく笑ってしまった。
 彼を前にして、ついムキになってしまった自分をえりなは恥ずかしく思った。
「あらあら、六飛くんにも笑われてるわよ」
「お母さんのせいよ。まったく」えりなは軽く母親を睨んだ。「六飛くん、部屋に入って」

 えりなの部屋は綺麗に片付いていた。女の子の部屋はあまり入ったことがない六飛だが、少しさっぱりし過ぎている印象を受けた。女の子らしいぬいぐるみのひとつも見当たらない。ただ少し大きめの本棚が目を引いた。
「結構さっぱりしてるんだね」
 何気なく六飛が言うと、えりなは恥ずかしそうに「そうかな」と答えた。
「あ、これ。例の本」
 彼女は部屋の中央にある本を指さした。それは六飛が借りにきた本だった。
「ありがと」
 彼は置いてある本を手に取った。ぱらぱらとページをめくる。本の綺麗な状態に、少しだけ嬉しくなった。予想通りだが、えりなは本を丁寧に扱う人らしい。いや、彼女のことだから何を扱うにしても優しく丁寧なのだろう。
 六飛が本を眺めている間、若干の沈黙ができた。彼は気にもしていないだろうが、えりなはどうしようかとうろたえている。
 ちょうどそのとき、ドアをノックする音が聞こえた。「えりな、入るわよ」
 ドアが開き、えりなの母親が紅茶とお菓子をお盆に載せて部屋に入ってきた。
「六飛くん、ゆっくりしていってね」
 そう言ってえりなの母親が部屋から出ていこうとしたが、自分の娘がみょうに緊張していることに気付く。それも仕方ないことだ。彼女は今まで男の子どころが、友達ひとり家に招いたことなどないのだから。
「そういえばね、六飛くん」
 母親は彼女の緊張がほぐそうと会話に入ってきた。しばらくするとえりなもいつもの調子を取り戻し、気付けば3人で楽しく会話をしていた。えりなが体育の授業で跳び箱から落ちてケガをし大騒ぎになったこと、六飛は魚が嫌いなのに鮭おにぎりだけは好きでいつも食べてること。あっというまに時間は過ぎていく。
 いつの間にかに、外は暗くなっていた。
「あー、もう帰らなきゃ」
 六飛が呟く。
「あら、もうこんな時間なの。六飛くんウチでごはん食べていったら?」
「いえ、俺も急に来ちゃったし、今日は帰らせてもらいます」
 六飛が玄関を出ようとすると、えりなが何かを言おうとした。しかしそれは口から発せられぬまま、飲み込んでしまう。
 えりなの様子から彼女が何を言いたいのか察した母親は、彼女の代わりに言った。
「また遊びに来てね。今度はごはんも用意しとくから」
「ええ、ぜひ。また来ます」
 そうして六飛はえりなの家を出た。
 彼が家路を歩く間、その瞼(まぶた)の裏には、楽しそうに笑うえりなの姿が焼きついていた。


<作者のことば>
えー、友人との共作コラボとなった「夏のしらべ」第2話です。
友人がストーリー原案を、俺が実際に文章の方を担当させて頂きました。

個人的には友人・紅林歩夢とのコラボの話題になったとき、彼と書くとしたらファンタジー色の濃いものになると思ってました。今回タッグを組んだ彼がファンタジーものが好きだからです。

でも彼から渡されたストーリー原案を見て、めちゃめち恋愛色の強いものだな、と(笑)

それでも特に問題ある点はなかったので、了解しました。
いつか恋愛で長編(といっても玖堂の長編はあまり長くもない)を書きたいな、とは思ってたからです。

原案を2、3度読み返すと、もうそこには「夏のしらべ」ワールドが広がっていました(当初はタイトル決まってませんでしたけど)。
頭の中で鮮やかに、なぜかアニメ形式で(笑) ストーリーが展開されていきます。

よし、これなら書ける。

もうほとんどのことは決まっていたので、書き始めたらすぐにキャラクターたちが勝手に動き始めました。
キャラクターが自ら意思を持って行動し始めるときは、リズムよく文章が書けるときです。

もしかしたら良いものが書けるかもしれない。

で・今回は初めからそんな予感めいたものを持ちつつ、挑んじゃいました(笑)
実際に良いものが出来たか。それは読み手の方に判断を任せるところですが、本人的には自分に出来る力量のことは出来たんじゃないかと思います。

少々長くなりましたが、しばらくの間「夏のしらべ」にお付き合い願えるとこの玖堂匡介としては嬉しいです。

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ミーコ | URL | 2008/08/14(木) 15:50 [EDIT]
昔の少女漫画みたいで、ちょっといいかも(笑)
● 管理人のみ閲覧できます
| | 2008/08/14(木) 16:37 [EDIT]
このコメントは管理人のみ閲覧できます

匡介 | URL | 2008/08/14(木) 16:44 [EDIT]
>ミーコ
ラブコメの王道っぽいよね(笑)
俺はベタベタなのも嫌じゃないかな。

匡介 | URL | 2008/08/14(木) 16:48 [EDIT]
>シークレットさん
特にコメントも残していないのにわざわざありがとうございます。
正直、まだ少ししか読ませて頂いてない状態で、申し訳ないです(少しずつ読んでいこうとは思っているのですが)。
スゴイやカッコイイは言いすぎのような気もしますが、そう言って頂けるのは嬉しいです。本当にありがとうございます。

リンクの件は大歓迎です。
こちらからもリンクさせて頂こうと思いますので、ご了承願いたいです。
これから仲良くして頂けると嬉しいです。どうかよろしくお願いしますね。
● はじめまして。
ベイビーラブ | URL | 2008/08/14(木) 23:10 [EDIT]
足跡ありがとうございますv-22
読んでて親近感がわかきましたi-237
お互い頑張りましょうねi-234

匡介 | URL | 2008/08/15(金) 00:11 [EDIT]
>ベイビーラブさん
ちらっと立ち寄っただけだというのに、わざわざお越しくださいましてどうもありがとうございます。
親近感というのは同じ恋愛モノを書くもの同士ということでしょうか? …普段はあまり書きはしないのですがe-330

ええ、お互いに頑張りましょうね!
たまに覘きに行かせて頂こうかと思います。
● こんにちは
きゃら | URL | 2008/08/15(金) 14:59 [EDIT]
はじめまして、足跡ありがとうございます。
素敵な小説ですね。

なんか・・・好きです、こういうの。

また伺います。

匡介 | URL | 2008/08/15(金) 15:54 [EDIT]
>きゃらさん
初めまして。こちらこそありがとうございます。
そう言って頂けると原案の紅林も喜んでいると思います。

またのお越しをお待ちしていますね。

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