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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2016/06/25(土)   CATEGORY: MUKURO・黙示録篇
MUKURO・黙示録篇-18 (魔の狂宴Ⅱ)
 その男は老人のように白髪であった。痩躯だが、しかし肉体は若い。それは二十代のものと思われた。肌は蝋のように白く、顔には表情がない。まるで死人のようだった。
「君も生き残りだね。歓迎するよ」
 深夜の訪問者――突如現れた男に対して、城田はいつも通りに振る舞った。この魑魅魍魎が蔓延(はびこ)る大地では、憔悴のあまり誰もが死人然としていてもおかしくはない。笑みを浮かべ、右手を差し出す。「まずは挨拶を。――僕は城田といいます。この<キャッスル>の代表といったところかな」
 城田の右手はしばらくのあいだ宙に浮かんだままだった。ばつが悪くなって手を引っ込めようか思案したとき、城田は男の目を見た。その双眸の奥底は、暗黒世界へと繋がっていた。どこまでも黒い虚空が広がり、生命の輝きひとつ感じない。いま目の前にいるのはなんだ? 城田は底知れぬ恐怖に全身を包(くる)まれ、呼吸ひとつ出来なくなっていた。
「名か――」男の声は低く響いた。「私には名がない」
 男が城田の右手を掴んだ。城田は喩えようのない怖気(おぞけ)が駆け巡り、全身が粟立つ。正体不明のおそろしさ。どんな化け物にも感じたことのない恐怖だった。たった数秒の出来事だというのに、城田は目に見えるほど憔悴していった。その光景は、城田の生命エネルギーが互いの右手を介して男に吸収されているようだった。
 わずかばかりの気力を振り絞って、城田はその場にいる仲間を見遣った。目で助けを求めるも、誰もかれもが身動きひとつ出来ずにいた。それは眼前で起こっていることを理解できないばかりではない、ひとりの男から発せられる不気味な重圧に屈してのことだった。全員の本能が警鐘を鳴らしていた。逃ゲヨ――コノ男ニ関ワルベカラズ――
 それでもひとりが手にしていた89式小銃を男に向けた。意識不明の男、タヅカが集めていた火器のひとつだ。引鉄を絞る。連続した銃声が響くが、パニックのあまり照準が定まっていない。無秩序に乱射(バラ)まかれた銃弾は、床や壁を削り取るばかりで、ただの一発も男には当たらなかった。
 そのとき悲鳴が聞こえた。声の主の性別まではわからない。
 数秒後にドドドドと地鳴りのような轟きとともに黒い波が床を這って現れた。そしてキィキィという金切り音――それが鳴き声だと気付くと同時に、地を這う波が鼠の群れだといことに誰もが気付いた。数百はいる――大群だった。
 先ほどの男がまたしても銃を乱射した。銃弾は黒い波に呑み込まれて消えた。あまりに多勢に無勢。百や二百の銃弾では効果がありそうになかった。
 鼠の群れが突き進んでくるのを見ていた城田は、ふと腹に違和感を覚えた。城田は自分の腹部を見下ろす。突然すぎて痛みはなかった。ただ目の前の男の腕が、自分の腹から生えていた。
 男の腕は城田の腹を貫き、内臓を抉っていた。
 城田が絶叫する。
 男は、城田の腹から左腕を引き抜き、血に染まったその手でその白い髪をかき上げた。白髪が、血を吸うように赤く染まっていく。あっという間に、男の髪が血の赤に変わった。そしてその双眸も、燃えるような紅に変貌を遂げていた。男の本性が魔人であることは誰の目にも明らかだった。



<作者のことば>
書いてるときはそう思わなかったんですが、改めて読み返してみるとバランスの悪い文章だな、とへこんでいます。
もう少し緩急をつけた文章を書きたいです。なんだか疲れる文章だ……。(だいぶ前から気付いてはいましたが)

前回は最後の一行にすごく悩みましたが、今回はあと少しどうにかしたいと思うものの、気になるところが全部書き直すレベルのことなので、とりあえずこのまま行きます。

小説の文章の書き方を一から学びたい今日この頃。
断片的に展開しているのも、読みにくいのかなーと気になっています。全体的に展開が唐突なのかな。。

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