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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2015/10/11(日)   CATEGORY: MUKURO・黙示録篇
MUKURO・黙示録篇-12 (宴のはじまりⅡ)
 美琴はベッドから下りようとして初めて、男の存在に気付いた。
 部屋にはベッドが2つ並んでおり、美琴が目を覚ましたベッドの隣で、包帯だらけの男が眠っている。包帯で顔が隠れているので、男だというのも美琴の印象でしかない。
「目が覚めたんだね。よかったー」
 ドアが開き、酒井真美が姿を現した。その手には500ミリリットルペットボトルのミネラルウォーターを携えている。「急に倒れちゃうから、どうしようかと思ったよほんと」
 相楽のことを話すべきかしばらく悩んだが、結局話さないことに決めた。それについて説明するには、あまりに自分のことを曝(さら)け出す必要があるし、それは美琴の望むところではない。
「このひとは?」
「ごめんね、あたしひとりじゃ少ししか運べなくて。だから近くの部屋を借りさせてもらったの。それに、ここ医務室を兼ねてるようなものだし」そう言い訳したあと、酒井真美は男のことに移った。「彼は……タヅカって呼ばれてるけど、本当にそういう名前かもよくわからない。昏睡状態っていうの? ずっと寝たきりで目覚めないの」
 酒井真美の話はあまりに説明不足だった。それでは何もわからない。彼女もそれを察したのか話をつづけた。
「元々はこの人がここに立てこもってたらしいよ。みんなが持ってる武器もこの人が用意したみたいで、元からここに置いてあったの。――自衛隊員じゃないかってことだけど。服装もそれっぽかったし」
 つまり城田らが持っている銃火器は、この自衛隊員がここに持ち込んだというわけなのか。でも、なぜひとりだけ? ほかの隊員はどうなったのだろう?
「城田さんたちがここにたどり着いたときには、もう大怪我をしてて、ひとりが身動きもとれないくらいで、最初は意識もあったらしいけど、しばらくして昏睡状態になったとか。あたしも詳しくは知らないんだけどね」
 男が何者かはわかったが、なんだか気味が悪かった。ひとりで大量の銃火器を持ち込み、籠城していた男。何があったかは不明だが――化け物に襲われてたのだろうけど――、瀕死の重傷を負い、意識なく眠ったままの男。包帯のせいで顔もわからない男……。
 酒井真美から受け取ったミネラルウォーターを口に含み、美琴はもう大丈夫だと彼女に告げる。もう平気。もう歩ける。そう言いながらも、体にうまく力が入らなかった。どこかちぐはぐな気がする。動かせないわけではないけど、どうにも心もとない――そんな感じ。
「ほんとうに大丈夫? 美琴ちゃんの部屋に案内するから、そっちで休んだらいいよ」酒井真美が部屋のドアを開ける。「それに、ここにいるのもいい気がしないでしょ? こう言っちゃ悪いけど、気味悪いもんね」
 彼女もそう感じていたのか――そう思いつつ、美琴は部屋を出た。
 廊下には誰の姿もない。もちろん相楽の姿も。

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