FC2ブログ
みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2015/09/09(水)   CATEGORY: MUKURO・黙示録篇
MUKURO・黙示録篇-9 (もうひとつの世界)
 そもそもは物資の調達という話だった。なのに今は瓦礫の上で男に犯されている。なんでこんなことになっているんだろう? 抵抗を諦めた呉 頼華(よりか)はぼんやりとそんなことを思う。当然のことながら、力では敵わなかった。助けを求めて叫んだが、ここでは誰の耳にも届かない。頼華の顔は殴られたせいで腫れ上がり、加えてあふれる涙と洟(はなみず)で見る影もない。
 頼華を犯している男――井岡忠児は、瓦礫の上に寝かせられていた頼華を立たせ、壁に手をつかせた。井岡がバックから突いた。殴りすぎたせいで、腫れてしまった女の顔を見ていてもつまらない。それに背後から攻めた方が、征服感があって興奮した。すんなりと挿入できたことからも、おそらく処女ではないのだろうが、頼華は“部屋”に入ることを拒否していた。守ってもらっている分際で、どうして拒否権があると思うんだ? バカ女め。井岡はこういう女が大嫌いだった。だが、無理やり犯すとなれば話はべつだ。むしろこういう女の方が、犯しがいがある。鼻持ちならない女の心をへし折るのは実に楽しい。今後は自分専用の奴隷にしてやろうと決めていた。城田が許せばの話だが。

 ***

 雲の上まで続く、石造りの巨大な塔が見えている。2人はあの石塔からやってきたという話だった。正確には、塔は「もうひとつの世界」と繋がっていて、そこから塔を渡ってこちらの世界に辿り着いたということだった。正直、容易には理解できない話だった。「もうひとつの世界」とはなんだ?という思いがある。けれど実際に化け物が現れ、世界がこうなってしまった以上、どんなに信じがたく、突飛な話だったとしても否定することはできそうにない。黒川宗二郎は2人の話を信じるほかなかった。
「向こうの世界はどんなふうなんだ? こっちの世界とはどう違う?」
 宗二郎の問いに、「向こう側」の住人のひとりである舘岡が答える。
「んー、たぶん基本的にはあんま変わらないっすね。――と言ってもこっちの世界はすでにこんな感じだったから、あまり比べようもない気がするけど」舘岡が荒れ果てた街を示してそう言う。「俺には違いがよくわからないっす」
 舘岡とともに「向こう側」からやってきた飯沼が補足する。
「俺も大きな違いは見受けられないですね。あまり詳しいことまで知っているわけではないですが、そもそも向こうの世界がこちらの世界を模しているという話でした」
 飯沼の言葉を聞いて、宗二郎が疑問を口にした。「話っていうのは、誰の?」
「なんて説明したらいいのか正直わからないんですけど、いま何が起きているのかということについて、いちばん詳しい人でしょうか」
 飯沼の脳裡に浮かぶのは、闇のように黒い髪と血の通っていないかのような白い肌を持つ男。
「正直、俺らもよくわかってないんすよ。俺もほんとは死んでいるって話だし」
「死んでる?」
 向こう側の世界は、いわゆる死後の世界であるらしいということ、その世界では死者たちが生前の生活をリピートしながら、魂の転生を待っているらしいことを舘岡が説明した。本人もよく理解してはいないようなので、宗二郎も掘り下げて訊くことを遠慮した。ただ、舘岡と飯沼は本来肉体を持たないエネルギーの塊のような存在で、突如現れたあの化け物たちもそもそもは感情のエネルギーから生まれたという話は興味深かった。より正確にいえば、欲望のエネルギー。それが世界の飽和量を超えてしまったために、充満したエネルギーがカタチを持つようになり、欲望のままに、言い換えれば本能的に、暴れまわっているということらしい。理解(わか)るような理解らないような、宗二郎は自分が話を把握できている自信がない。
「でも、あんたたちには肉体があるように見えるが」
「そこのところもよくわかんないんすよねー。向こう側は元々“そういう”世界だったというなら、肉体がない存在でもよかったかもしれないっすけど、こうしてこちら側に来ちゃったら肉体がないらしい俺たちってどうなってんのか。実際触れちゃいますしね、黒川さんにも」
 舘岡が黒川の肩をポンと叩いた。確かに触れることは可能だと3人が再確認した。
「欲望のエネルギーが飽和状態になって、世界が弾けたということのようなんです。世界のかたちが歪んでしまったというか、それと同時に世界の律というものまで変化してしまった、とか。今では世界の理(ことわり)が捻じれて、生者も死者も混じり合った世界になってしまっているということだと思います。……これ、うまく伝わってますか?」
「あまりに概念的で、理解は難しい。けど少しは理解できた気がする。あくまで気がするだけだが」
 2人の話によれば、「もうひとつの世界」からやってきた人間はほかにもいるらしい。けれど塔を“渡り”終えたときに、こちらの世界で巨大な黒い犬に襲われ、全員がバラバラになってしまったとのことだった。
「ほかの人たちが助かったかどうかもわかんないんすよ。とりあえず俺らは逃げ延びて、その先で黒川さんに出会ったという感じっす」
 そのとき、どこかから悲鳴が聞こえた。女のものだった。そう遠くはない。3人は悲鳴がした方へと進んだ。急ぎつつ、でも物音を立てないようにゆっくりと。
 何度か短く呻き声が聞こえ、その後、肉を打つような音が小さく響いた。宗二郎は2人と目を合わせたあと小さく頷き、建物の陰からそっと覗き込んだ。視線の先には、ひとりの男が女を後ろから犯している光景があった。荒れ果てた無法の世界では珍しくない光景だが、宗二郎は全身の血が沸騰したかのような強い怒りで染まっていた。彼の脳裡には、救えなかった今村冴子の姿があった。眼前で犯され、そして化け物に殺された女。護ると誓ったはずなのに、護れなかった女。――冴子。
 宗二郎は無意識に、駆け出していた。



<作者のことば>
久しぶりに再開。半分以上は以前に書いていたものだが、読み返すとなかなかつらい。
文章も下手ながら、説明も上手くできているとは言い難く、丸々消そうかと思ったけれど、前に進むためにそのままにした。

このあたりから早く完結に向かうために、当初考えていた話から大きく作り変えている。
正直今後どのように進むのかよくわからないし、ちゃんと終わらせられるのかという不安はあるが、書けるだけ書くしかないだろう。

ちなみに黒川宗二郎がフラッシュバックしたシーンは これ です。
MUKUROは何度か中断して空白期間が空いてしまっているので、過去のエピソードと絡めるときは出来るだけそのシーンを紹介していきたいと思います。
それから、舘岡と飯沼は「地獄篇」の登場人物。ずっと再登場の予定はあったものの、久しぶりすぎてキャラを忘れました。申し訳ない。

[ TB*0 | CO*0 ] page top

COMMENT

 管理者にだけ表示を許可する

TRACK BACK
TB*URL
Copyright © みやび萬紅堂。. all rights reserved. ページの先頭へ