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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2014/04/12(土)   CATEGORY: MUKURO・黙示録篇
MUKURO・黙示録篇-3 (滅びゆく街Ⅱ)
 男たちは5人で行動していた。中でも大男の牧がグループのリーダー格なのだろうと美琴は考えた。ほかにはヤクザのような風体――黒スーツに坊主頭――の男、40代くらいの優男風、金髪の若い男、そしてもうひとり華奢でおとなしそうな若い男がいた。
 優男風が結城と名乗り、名前を訊ねてきたので美琴は正直に答えた。華奢な男は布川と自己紹介してきたが、残る2人は名乗らなかった。
「そこに車があるんだ」と結城が言った。そのとき、彼らが生存者の集まる拠点地からは車で来ていたことを知った。ということは結構な距離があるのだろうか? 美琴は湧いてくる疑問の数々をあえて訊ねることはなく、ただ頷いた。「行こうか」
 車は、黒のランドクルーザーだった。この車が誰のものかはわからないが、運転席には牧が座った。助手席には結城がつき、美琴を含めた残りの4人は後部座席に回った。美琴の右隣にはヤクザ男が座ったのだが、男はニヤニヤと笑みを浮かべては品定めでもするように美琴を眺めてきた。不快な男だ、と美琴は思った。
 ランクルがエンジンを唸らせて発進した。ふと美琴は、向かう先に着替えはあるだろうか気になった。もう何日も同じ制服を着ている。しかも血で汚れている。久しぶりに人と会って、いい加減に着替えたい気持ちになっていた。牧は生存者が集まっていると言っていたが、いったい何人くらいなのだろう。30人? もっといるだろうか。50人――いや、60人くらいいるかもしれない。それだけいれば物資の確保も出来ているのではないか、という気もする。たとえ無いとしても、近くに服屋でもあればそこを覗いてみればいい。まさかこんな状態になってそれは泥棒だと言う人間もいないはずだ。
「家はどのあたりなの?」
 助手席の結城が訊ねてきたので、美琴が家の住所を答えると「ああ、あのあたり」と結城は思い出すように言った。「ご家族のこと、心配でしょう」
 家族のことなど微塵も心配していなかった。両親ともにすでに死んでいるものと考えていたし、生きているとしても捜そうとは思わなかった。どこかで生きているならそれでもいいけれど、自分とは関係ない。そう思った。でもそんなことは言わず、美琴は黙っていた。結城はそんな美琴を見て彼女の心中を察し――それは結城による勘違いなのだが――、それ以上なにも言わなかった。
 車に揺られていると、ヤクザ男の手が這うように伸びて、美琴の太ももに触れた。実に不愉快だった。この男は自分のことを性の対象として見ている。――というより、性の対象としか見ていない。こんなやつの仲間になることになるのか、と思うと今からでも車を降りたくなる。
「やめて」強い口調で、はっきりと言った。それでもヤクザ男は、聞こえないふりをして太ももを触り続けている。「やめて」
 布川はあえて目をそらしているようだった。気の小さい男なのだろう、ヤクザ男のことが怖いのだと美琴にはわかった。金髪については、美琴のことなどどうでもいいといった感じだった。
「安久津さん、やめてあげてくださいよ」
 結城に注意を受けて安久津はあからさまに不愉快といった表情を浮かべた。それを見て不愉快なのはこっちの方だ――と美琴は思った。
「ンだよ、いいじゃねえかよべつに」
「揉め事はカンベンですよ、私は」
 何やらぶつぶつ言いながら、安久津が手を引っ込めた。けれど美琴の気分は晴れない。この男の触れたところを消毒したい気分だった。「誰かいるぞ」
 牧が車を停めた。前方に、3人の男たちが立っていた。いずれも若い。20歳前後といったところだろう。男たちは合図するようにこちらに手を振っていた。
「ちょっと車内が窮屈になりそうですね」と結城が言った。確かにその通りだ、と美琴が思った次の瞬間、ドドド――と地鳴りのようなものが聞こえた。

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ポール・ブリッツ | URL | 2014/04/16(水) 21:13 [EDIT]
ついにこの話も新たなステージに来ましたね。待つのはいったいなんなのか、どきどきしてます!

匡介 | URL | 2014/04/18(金) 13:53 [EDIT]
>ポール・ブリッツさん
どうにか話が流れに乗ってきた気がします。
このまま最後までいければ、と思うのですが……。

随所に稚拙さが目立ちますが、それでも楽しんで頂ければ幸いです。
どうか最後までお付き合い願えればと思います。

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