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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2012/03/09(金)   CATEGORY: MUKURO・煉獄篇
MUKURO・煉獄篇-36 (魔界胎動/黒き犬Ⅰ)
 二色で構成された迷彩柄の車輛は、遠目で見るとオリーブドラブ一色に見えた。大地震と突如現れた魑魅魍魎による破壊の爪痕が見え隠れする悪路のなかを軽装甲機動車――通称LAV(ラヴ)――は勇敢に進んだ。道路のアスファルトはところどころ盛り返されたり、亀裂が入っていたりし、さらには破壊された建物の瓦礫が散らばっている。
 車輛に揺られながら、葛原亮太郎は尾谷雄大と一ノ瀬千紘、そして佐々木隆裕を見た。この三人は化け物の巣窟となった学校から命からがらに逃げ延びてきた。それをLAVを運転する野坂大吾が見つけ、車輛に乗せたのだが、偶然にも三人は亮太郎のクラスメイトだった。特に雄大と千紘とは仲が良かった。
 だが、状況が状況なだけに会話は弾まない。誰もが肉体的にも精神的にも疲れていることが顔に出ていた。車内の空気は重い。
 ハンドルを握る野坂は、どこに向かっているわけでもなかった。化け物がどこからか這い出してきた現在(いま)となっては、どこに向かえばいいのかわかるはずもなかった。街は荒らされ、政府も何も機能していないことがわかる。地獄が溢れていた。いったいどれほどの人間が生き残っているのだろうか。それすら見当もつかなかった。
 フロントガラスの向こうには、巨大な塔が見えていた。あんなところに塔はなかった。いつの間にかに、突如として現れていた塔だった。その塔はまさしく天を衝(つ)くほどの高さで、天辺(てっぺん)がまるで見えなかった。塔の尖端は雲の上にまで突き抜けていて、霞んでいた。
 あの塔は何なのか。
 化け物どもと何か関係があるのだろうか。
 塔の麓は丘になっていた。その丘も、以前はなかったはずだ。塔と一緒に現れた丘だった。地震によって盛り上がったものかもしれない。もはや世界にはこれまでの常識は通じない。何が起きても不思議ではなかった。
 迷彩柄の車輛はその丘を目指していた。
 特に意味は無い。
 もしかすると、向かう先は魑魅魍魎が跳梁跋扈する魔の巣窟かもしれない。だが他に指針となるものもなく、野坂は引きつけられるように丘に向かって車を走らせた。自分は、松明の火に群がる蛾なのかもしれない。そういう思いが脳裡をかすめた。
 バックミラーを覗き込むと子供たちの顔が見える。せめて彼らのことだけでも護りたい。そもそもそのために、自分は自衛官になったのだった。父のように、大切なものを護る人間に憧れて自衛隊に入った。いまこのために自分は自衛隊で多くのつらいトレーニングを積んできたのかもしれない。
 そのとき、視界に黒い影が過ぎった。
 ――なんだ、いまのは。
 巨(おお)きな影だった。
 それに俊敏でもあった。
 人ではない。では、化け物か。
 また黒い影が走って、すぐに消えた。
 とてつもなく巨きい。熊のようであった。
 車体に強い衝撃が奔り、大きく揺れた。
 野坂は手元のM9――9mm機関拳銃――を握った。
 影の主が姿を現せた。



<作者のことば>
連載再開しますが、とりあえず見通しあるのは「黒き犬」編だけ。
「黒き犬」編は数話で終わる予定で、そのあとまた少し時間が空くかと思います。

まぁ、地道に進めていくつもりです。


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ポール・ブリッツ | URL | 2012/03/10(土) 14:23 [EDIT]
待ってました煉獄篇。

近代兵器が登場しましたが……。

効かないんだろうなあ(^^)

匡介 | URL | 2012/03/11(日) 00:14 [EDIT]
>ポール・ブリッツさん
でも、原始的な武器で敵を倒してるシーンもありますよ!(……あった、はずだ)
なので近代兵器でも倒せないことはないです、きっと。

実はこのLAV、プチ武器庫みたいになってるんですよ~。
そのなかには有効な火器があってもおかしくありません!!

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