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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2011/12/26(月)   CATEGORY: MUKURO・煉獄篇
MUKURO・煉獄篇-30 (魔界胎動/淫獣の館Ⅹ)
 黒川宗二郎は、斧を片手に今村冴子を捜していた。
 天井から崩れ落ちてきたコンクリート片に分断され、おそらく今は丸山と一緒にいるはずだった。庄司克利と廣石裕行を諌めた様子からすれば、きっと冴子の身を護ってくれるだろう。
 だが、一刻も早くこの建物を離れるべきだと宗二郎は思っていた。少人数の集団で、一応ながら社会性を保っていたが、極限の状況の中で冴子という唯一の女性の存在が、集団の秩序を乱してしまった。もはやここは安全といえぬ、危険地帯にほかならない。
 ライトで前方を照らしながら、用心して進んだ。分断されたエリアに行くには、モールの内部をぐるっと迂回しなければならない。
 おそらく冴子がいるであろう場所に近付いてきたとき、ライトが人影と照らし出した。そこにいたのは廣石裕行である。
 廣石には依然の神経質な様子が見られない。何か覚悟を決めたような強さがその眸(め)に宿っていた。それは狂気にも似た光であった。
 宗二郎が刃を逆向きにして斧を構えた。
 殺すつもりはない。もしものときは斧の柄で殴りつけて昏倒させられれば、と思っていた。とにかく身動きできない状況になってくれば、あとは逃げてしまえばいい。
 そのとき、ライトに照らされて何かがきらりと光った。
 それは大柄のナイフだった。
 廣石はナイフを手にしていたのだ。
 宗二郎はわずかにたじろぎ、じわりと後退した。
 廣石の貌は笑っていた。
 なぜ笑っているのか、宗二郎にはわからない。
 だが笑っている。
 笑いながら、ナイフを振りかざした。
 宗二郎は深く構えた。
 廣石が勢いをつけて走り出す。まさに猪突猛進の勢いだった。
 宗二郎は斧を逆刃にして廣石の脚に振り落とす。
 廣石が腰から床に叩きつけられた。
 しかし気にせず立ち上がり、ナイフを振るった。
 ナイフの切っ先が宗二郎を目掛ける。
 咄嗟に飛び退いた。
 刃がかすって胸元の薄皮が切れ、うっすら血が滲む。
 斧が勢いよく廣石の躰にめり込み、廣石は後方に吹き飛んだ。
 すべては一瞬の攻防だったが、宗二郎の息はあがっていた。背には冷や汗が流れている。
 廣石が立ち上がり、恐ろしい形相で宗二郎を睨めつけた。血走り、まるで阿修羅のように吊り上がった眼は憤怒に充ちている。
 狂気に駆られたその姿に、宗二郎は戦慄した。



<作者のことば>
「阿修羅のように」ってイメージで書いたけど、阿修羅って目が吊り上がってるよな?
――と軽くググってみたところ、出てくる画像がちょっと前に流行った整った顔立ちの阿修羅像ばかりで、阿修羅の顔ってこれしかないのかとちょっと焦った。

でも、修羅道がある通り、阿修羅って戦いの神みたいなものですから(という一面もあるに過ぎない)、そんな端整な阿修羅だけのはずないだろ!と探していたら、ちゃんと見るからに恐ろしい形相の阿修羅もおりました。

やっぱ阿修羅のイメージってこっちの方だと思います。
明王とか、そっち系の表情のイメージですよね。

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ポール・ブリッツ | URL | 2011/12/27(火) 16:40 [EDIT]
この事態を引き起こしているのは……「胎児」ですか?

「うろつき童子」みたいに。

匡介 | URL | 2011/12/29(木) 14:44 [EDIT]
>ポール・ブリッツさん
うろつき童子を観たことなかったので、軽く観てみましたが、エログロな感じですね(いや、好きですけども!)。
結局「胎児」どうこうってところまで観ていないので、何とも言えませんが、それはまぁ あとのお楽しみに!

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