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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2011/12/24(土)   CATEGORY: MUKURO・煉獄篇
MUKURO・煉獄篇-29 (魔界胎動/淫獣の館Ⅸ)
 男が自分の上で腰を振っている。汗水を垂らしながら、必死に腰を振り、ときには胸を揉みしだき、肌に舌を這わせた。
 抵抗を諦めた今村冴子が次に取った行動は、何も考えない、ということだった。
 何も感じず考えず、ただ時が過ぎるのを待った。こうなってしまっては男が果てるのを待った方が早かった。今出来ることは何も思考を止めること。そうすることで、少しは気楽に思えた。
 男のペニスが、冴子の膣(なか)をピストンのように行き来していた。それの繰り返し。反復。反復。反復。
 あたしは何も感じていないし、何も思わない。――そう暗示をかける。
 冴子の視線が虚空を捉えた。そこには何もなく、闇だけが佇んでいる。
 ――早く終わんないかな。
 感情が死んでゆくのがわかる。感情を殺すか、感情に殺されるしかないのだから、仕方ない。もし今感情が甦りでもすれば、屈辱や嫌悪、憎悪、悔しさ、憤怒、ありとあらゆる負の感情が爆発して自分自身を押し潰してしまう。きっと、死にたくなる。
 だから感情を殺す。何も感じない。考えない。それが一番だ。
 虚空の闇が、わずかに揺らめいた。
 ピシャッ
 温かいものが冴子の肌に触れた。
 冴子は虚ろな瞳で丸山を見る。
 丸山の首に何か生えていた。
 ――棒?
 遅れて、丸山の隣に立つ稲毛の存在に気付いた。
 稲毛は怪我をしていない、動かせる方の手で、丸山の首を棒で貫いていた。
 それは手製の槍だった。
 もし化け物が侵入してきたときのために、せめてもの武器にと稲毛がモップの柄を削って作った手製の槍を冴子は一度見せてもらっていた。
 その槍が丸山の首を貫いている。
 丸山は「なぜ……?」といった表情をしながら、自分から噴き出る血を見ていた。
 槍が引き抜かれる。丸山の躰が力を失ったように、冴子の上で倒れた。
 稲毛の眸(め)は何を考えているのかわからない虚ろなもので、そこには一切の感情というものが感じられなかった。何の感情もなく丸山を突き殺した稲毛に、冴子は底知れぬ恐怖を感じた。
 稲毛は、倒れ込んだ丸山の躰を冴子の上からどかし、冴子を見下ろした。
 自分を見詰めてくる昏い瞳に、冴子は小さく身震いした。
 ふと稲毛の股間が膨らんでいることに気付く。
 無表情のまま、稲毛は穿いていたズボンを下ろし、丸山の血にまみれた冴子に抱きついた。そして怒張したペニスを彼女の秘所に突っ込もうとする。
 冴子は悲鳴をあげた――つもりだった。だが、あまりの恐怖に声は出ていなかった。
 まるで感情の見られない稲毛は、未知の生物のようだった。その不気味さに、冴子は殺していたはずの感情を取り戻してしまった。
 気付けば恐怖のあまり、失禁していた。




<作者のことば>
基本的にはエンターテイメントを意識しているので、内容にあまり深いものはありません。
「宇宙戦争」(映画でも小説でもいい)のように、圧倒的あるいは絶対的な存在との遭遇を書こうと思ったのが最初。

特にジョージ・パル版の映画「宇宙戦争」(1953年の作品)では、スピルバーグ版以上に侵略者(宇宙人)の虐殺ぶりが凄かった印象が残っていて、最終的に侵略者を倒すのが――これネタバレですが――微生物というオチ。つまり人間にとっては最後まで絶対的な存在だったのかな、と(たぶんジョージ・パル版は微生物しか倒せていないはず。スピルバーグ版はトム・クルーズの役がどうにか一体倒すのに成功した上に、大阪でも倒したという情報が劇中で流れます)。

そういうあまりに圧倒的すぎる絶対的強者を前にした人間の話が書きたかった。

さて、前回の話の続きです。
そのような絶対的存在を前にしたときに果たして人間の理性はどこまで通用するのか?

おそらく半端ではない恐怖に押し潰されてしまう人間も多いでしょう。
絶対的存在に人間が掃討されていく世界に於いては、もはや秩序は大した意味をなさない。

そのとき弱い人間や強くとも屈してしまった人間が犯罪に手を出してしまうことは不思議ではないと思います。
そういう意味では、MUKUROの世界に「悪」はいなくて、いるのは弱者と力(恐怖)に屈した人間なのです。精神が、心が、壊れてしまった人間なのです。

そして化け物ですら、実は「悪」として書いていないのですが、それについてはそのうち。

書きながら、こいつらの心情を汲んでやるとかわいそうなところあるよなぁ、などと思うのですが、そういうかわいそうな面を一切出さずに人非人の振る舞いとして「淫獣の館」は書いてます。
むしろ真実「悪」とは言い切れない人間を極悪非道の人物に変えてしまうのが楽しいという書き手の歪みっぷり(笑)

獣の狂宴はまだ続きます。

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COMMENT

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ポール・ブリッツ | URL | 2011/12/26(月) 07:44 [EDIT]
コズミック・ホラーというやつですね。

それを描くのにこの暴力と死の続く世界を延々とたどるのは理にかなった方法だと思います。

描ききるまでおつきあいします。

それにしても、まだ3日も経っていなかったのか(汗)

そういやそうだよな(^^;)

匡介 | URL | 2011/12/27(火) 09:01 [EDIT]
>ポール・ブリッツさん
まさしくコズミック・ホラーに当たるのかもしれません。
あまり読んできたわけでもないですが、イメージはそういう感じですね。

地獄篇から長らく続いているせいで、もうだいぶ経っている気もしますが、まだ「直後」なんですよね。
地獄篇も魔界篇も日数に換算するとたった数日の出来事になっていると思います(もしかしたら魔界篇は1日かも)。

もう少しかかりそうですが、最後までお付き合い願えると幸いです。

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