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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2011/12/20(火)   CATEGORY: MUKURO・煉獄篇
MUKURO・煉獄篇-27 (魔界胎動/淫獣の館Ⅶ)
 崩落した天井の一部に、庄司克利は両脚を潰されていた。
 庄司は痛みのあまりに気を失っていたが、しばらくしてその意識を取り戻した。だが、身動きができない。もはや脚の感覚はなく、その場に拡がっていく血溜まりだけが怪我の凄惨さを伝えていた。
 庄司は朦朧とした意識の中であたりを見回した。人の気配はない。みんなはどこへ行ったのだろうか……。
 廣石も梅崎も、宗二郎の姿もない。今村冴子と丸山厚はこのコンクリート片の向こうにいて、自分たちと分断されるのと目にしていた。その直後に、庄司の脚が潰れている。
 明かりのないモールの暗がりの中から、ぬっと人影が現れた。――稲毛光男だ。
 稲毛は相変わらず怪我をした右腕を三角巾で吊るしており、左手には対化け物用のモップの柄で作った簡単な槍を手にしていた。
「たす……け………」
 残っている力をすべて振り絞って、庄司は稲毛に助けを求めた。
 稲毛は冷めた眸(め)で庄司を見下ろした。
 そして何の言葉を発することもなく、片手の槍を振りかざし、その穂先を庄司に向けた。
「なッ……なにを………」
 荒々しく削られて作られた槍の穂先が、有無をいわさず庄司の胸を貫いた。
 稲毛の貌は無表情そのものである。
 ただその双眸には昏いものが宿っていた。


 胸を貫かれた庄司は躰を動かせないものの、まだ少しの意識が残っていた。揺らぐ陽炎のように不安定で朦朧とした意識だったが、彼は自分がまだ生きていることだけは理解できていた。
 だが、どくどくと血が溢れている。躰から血が喪失なわれている。
 このままでは俺は死ぬだろう……、
 それだけは理解できていた。
 体力だけは誰にも劣らぬ自信があった。
 きっとこの中で生き残るのは、自分だろうと思っていた。
 それがどうした。
 今、俺は死のうとしている。
 ゆっくりと死へと向かっている。
 ――死にたくない。
 庄司は叫んだ。それは声になっていたかもわからない。しかし腹の底から叫んでいた。
 ――生きたい。もっと生きていたい。
 生きようとする想い。その欲望を、生への渇望を、彼は叫んだ。
 彼は身裡から膨れ上がるものを感じた。その膨れ上がったものは庄司の肉を引き裂き、皮膚(はだ)を破いて躰の外へと出ようとしている。――強烈なエネルギーが彼の中で爆発を起こした。




<作者のことば>
今月(今年)中には淫獣の館を終えたいなぁ、と思っているのだけれど、案外厳しいかも。
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ポール・ブリッツ | URL | 2011/12/21(水) 07:47 [EDIT]
筆が暴走するとコントロールが難しいんですよね(^^)

すぐにでも続きが読みたいです(^^)

匡介 | URL | 2011/12/22(木) 06:17 [EDIT]
>ポール・ブリッツさん
気付けば、どうしてそっちに~~っていう展開になってることありますよね。
MUKROはノリで書いてるところが多いので、コントロールが効かないこともよく……。

どうなってしまうのか淫獣の館編!

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