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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2011/12/18(日)   CATEGORY: MUKURO・煉獄篇
MUKURO・煉獄篇-26 (魔界胎動/淫獣の館Ⅵ)
 ゴゴゴゴゴゴ――ッッ
 突如、烈しい揺れと轟音がモールを襲った。
 丸山が体勢を崩して、尻餅をついた。
 ミシミシミシ――どこかが軋む音がする。
 庄司も廣石もその場に伏せた。
 上下左右に大きく揺さぶられて、宗二郎は思わずよろめいた。
 天井が悲鳴をあげた。
 烈しい音とともに天井の一部が崩れ、落下する。
 巨大なコンクリート片が降り注いだ。
 巻き上げられた砂埃に宗二郎は顔を顰める。目の前には巨大なコンクリート片が壁のように現れていた。
 庄司は、脚がコンクリート片に押し潰され身動きが取れなくなっていた。
 他は無事かと宗二郎が見回すと、冴子の姿がない。それに丸山の姿もなかった。
 もし、目の前のコンクリート片の下敷きになったのでなければ、二人は出来立ての壁の向こうにいることになる。
 その場は、降ってきたコンクリート片によって、見事に分断されてしまっていた。


「大丈夫かい」
 揺れが治まり、丸山が手を差し伸べてきたが、冴子はそれを受けずに自ら力で立ち上がった。それには男の手に触れられたくない、という気持ちが陰で働いていた。
 事実、丸山の視線は冴子の躰を舐めるように這っていた。
 それは男の性であった。
 女の躰を前にして、男としての本能が抑えきれない。
 しかもこの異常な状況、世界が引っくり返り、化け物どもが跳梁跋扈する地上となった今、いつ死ぬかもわからない。己が種を残そうという本能的な働きが男たちを突き動かすのだった。
 逼迫した状況が逆に男たちの性欲を昂らせていた。
 法の秩序の崩壊がまたそれに拍車をかけている。
 冴子は今、ライオンの檻に入れられた兎同然であった。
 見事に屹立した男根が、冴子の目の前に現れた。ズボンを下ろした丸山が下卑た眼差しで冴子の躰を見る。それはまさしく視姦であった。己が欲を剥き出しにした淫らな獣が、その眸(まなこ)で女を犯していた。激しい嫌悪感に、冴子は小さく身震いした。
 丸山は男で、それに大柄である。力では到底敵わない相手だ。
 “弱肉強食”という言葉が冴子の脳裡を過ぎった。力の弱い女は、男の喰い物にされるしかないのか――底なしの絶望と悔しさと烈しい怒りが冴子の身裡で渦巻いた。あまりの悔しさに、恐怖に、頭がどうにかなってしまいそうだった。
 ――救(たす)けて!
 冴子は心中で叫んだ。そしてこのとき心に描いたのは、他の誰でもない、黒川宗二郎の姿だった。
 宗二郎だけは他の男とは違う。弱いと見て襲いかかってきたり、偽善を見せつけて近付いてくることもない。目の前にいる欲望にまみれた獣とは違って、気高さがある。
 宗二郎のことを深く知っているわけではなかったが、冴子にはその確信があった。
 ――お願い、救けにきて!
 丸山に躰を押さえつけられ、身動きができなくなった。それでも抵抗しようともがくと丸山の平手が飛んで頬を張られた。屈辱だった。女を、同じ人とは思わぬこの男の醜悪さに反吐が出そうなほどだった。そして、その男に対して自分は何もできないという事実が、冴子の胸を締め付けた。
 なんて無力なんだろう。
 あたしに、もっと力があれば……――
 丸山のペニスが、冴子の秘所に擦り寄った。
 悔しいことに、冴子の意思とは関係なく、そこは淫らな液で濡れていた。
 まるで男を誘っているみたいだ。あたしが誰にでも躰を許す淫乱女だと告げているみたいだ。そんなことはないのに、どうしてあたしの躰は男の侵入を許そうとするの……。
 悔しい。
 行き場のない怒りが、憤りが、冴子の中で渦を巻く。それは嵐のような烈しさで、身裡を暴れまわった。
 そして――、
 丸山の醜悪なモノが、冴子の内部(なか)に侵入した。



<作者のことば>
書くなら徹底的に。これがひとつの信条で「エロスの書くときは徹底的に書こう」というのがずっとあった。
バイオレンスを書くときも徹底的にバイオレンスで、グロテクスなシーンは目を背けたくなるような嫌悪感を与えたい。そういう徹底した作品が結構好きだったりする。

その傾向が特に『シュヴァルダンの獣』以降の作品に強く出ている…と思う。
描写的な文章に特化し始めたのも、この作品以降で、つまりは転換期だと認識している。

だからといって残虐非道、冷酷で目も向けられないだけになってしまえば、それもまた違うという気持ちがある。

この微妙な境界を自分の中で探りながら書いてます。
あくまで根差すのはエンターテイメントでありたい。その境界が難しい。

まぁ、永井豪作品を読んでるともっと残虐非道でショッキングな展開があってもいいのかなって気も(笑)


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COMMENT

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ポール・ブリッツ | URL | 2011/12/19(月) 07:03 [EDIT]
おおっ(^^)

その意気に感服しました。

ともに表現の限界を目指しましょう(^^)

匡介 | URL | 2011/12/20(火) 13:02 [EDIT]
>ポール・ブリッツさん
そこまで大層なものを持ち合わせてもいませんが、やってて一番面白いところだと思ってます。
表現幅が狭いことは自覚しているので、地道にでも広げていきたいですね~。

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