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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2011/11/20(日)   CATEGORY: MUKURO・煉獄篇
MUKURO・煉獄篇-20 (堕天/DEVILSIDE)
 ついに強大な邪悪が生まれた。
 だが何を以って邪悪とすればいいのだろう。悪とは何か。倫理や道徳から外れたものを悪とすれば、それは人ならざるものにも通用するのだろうか。
 人は、本能にのみ従った獣を邪悪と出来るか? 目の前に蔓延る醜悪な化け物――それは鬼や悪魔と呼ばれるものかもしれない――がいかに鬼畜の振る舞いにて人を惨たらしく殺し、その屍肉を喰らおうともそれは化け物の本能が呼び起こしたものに過ぎない。
 人は、化け物相手に正邪は問えないのだ。
 それでも人は化け物を邪悪と見なす。正義は常に人間(ヒト)の側にある。どうしてか?
 ――それは生きるためほかならない。
 化け物は敵と見做さなくてはならない。そのために大義名分として必要なのが、正義であり邪悪なのだ。
 欲望の赴くままに人間(ヒト)を狩り立てる化け物どもと人間(ヒト)はどれだけ違うだろうか。人間(ヒト)に理性というものが、実際のところどれだけ備わっているというのだろう。人間(ヒト)以外の生物――家畜とされたり害獣とされたりする動物たち――にとって、人間(ヒト)は理性的な生き物に見えるのだろうか?
 我々と化け物の間に、大きな違いがあるといえるのだろうか?
 しかし人間(ヒト)は理性の分野で化け物を邪悪と見做し、世界を脅かす悪魔だと仕立てあげなくてはならない。罪悪で圧し潰されてしまわぬように。すべては生きるために!
 これは、人間(ヒト)の側と化け物の側の生存を賭けた闘争なのだ。
 この闘争に理性は不要か? 否、必要だ。生を渇望する野性に併せて、人間(ヒト)が生き抜くために持っている武器は理性にほかならないだろう。
 人間(ヒト)は理性という剣を持って、化け物を対峙し、打ち克たなければならない。
 この闘争に正邪を問う余地はない。
 目の前の絶対的な力に対して、人間(ヒト)は足掻きぬかなければならない。
                   

 (――とある死体の脇に遺された言葉)

 ×××


 女の嗚咽があたりに響(こだま)していた。
 嫌がる女を下に敷いて、彼は無我夢中に腰を振っていた。その横に少年の躰が横たわっている。少年は白く冷たい。すでにヒトからモノに変わり果てていた。
 彼は、久し振りに抱く女の肌にむしゃぶりつき、その肉を存分に味わう。嫌がりつつも自分の秘所を淫猥に湿らせた女に、厭らしい笑みを浮かべながら己が肉棒を突き立てる。
 激しい快楽の渦の中で、彼は少年を拾った甲斐があったと思った。少年がいたことで、この女をあまり警戒させずに近付くことが出来た。元々心細かったのだろうが、それでも見ず知らずの男を近くに置くとは無用心な女だ――彼は女の乳房を掴み、首筋に舌を這わせた。
 女の目尻から涙が零れる。
 快感が頂点に達すると、遠慮なしに彼は女の膣内(なか)に己が熱い精を放出させた。
 息をあがらせて、彼は女の躰の上に脱力して覆いかぶさる。荒い呼吸とともに躰が上下した。
 不意に女の手が彼の背に伸びる。女の爪が肉に喰い込んだ。
 ウッ――
 痛みに、彼は貌を顰め、女の貌を見た。
 これは――
 女の貌は先ほどまでの貌ではなかった。
 人のものとは思えぬ、鋭い爪が彼を襲う。
 羽根が舞った。
 もはや女はどこから見ても人ではなくなっていた。
 それは人ならざる姿形(モノ)にもかかわらず、あまりに美しかった。
 それは淫魔(インキュバス)を思わせる美貌、
 人を魅了し破滅に導く、
 そんな女(モノ)に変貌していた。
 彼は目の前の圧倒的な存在に恐怖し、
 勃起した。
 様々な感情が綯い交ぜになり、
 渦巻き、
 嵐のような恐慌が彼を襲う。
 そして――、
 彼は声を聞いた。
 どこからするでもない声を。
 声は彼の頭に直接響いた。
 ――欲望のままに生きる、その様相(さま)。素晴らしい。
 誰だ。
 ――自分の欲望にどこまでも実直に従うお前を気に入った。
 どこにいる。
 ――その執念にも似た欲望、決して飽くことのない欲望、どれだけ充たそうとも充ち得ぬ深い欲望を持ったお前こそが我が器に相応しい。
 何の話をしている。
 ――我を受け入れよ、人間。
 彼は、手足からずぶずぶと底のない沼に沈んでいく感覚に襲われた。
 ――その欲望を充たしたければ、我を受け入れろ、渇望せし者よ。
 お前、誰なんだ。
 ――我はお前の欲望そのものである。
 欲望……?
 ――我は強欲の王にして地獄を統べし者。また反逆の冠を戴きし赤き竜。その飽くなき欲望を充たす唯一の存在である。渇望せし者よ、我を受け入れ、我の器といざならん。
 世界が暗黒に包まれた。




<作者のことば>
心機一転したいので、新章突入のための区切り回。
書いてる側の都合によって“彼”のパートは大幅カット。

でも、おかげで次回からは新たな気持ちで書くことが出来るんじゃないでしょうか?(問いかけ)

ただ、あえて“彼”のパートを必要最小限の語りで済ませてよかったかもしれないとも思っている。
どのキャラクターにも感情移入しにくい、無機質的な文章のパートにしたかったので。

さて、舞台は整い始めてきました。
やっと煉獄篇で一番書きたいシーンが見えてきたことが嬉しいです。(あと10話くらいで辿り着けるのではないかと…)

もう少し進めば、書きたいところばかりになるのでガンバリマス。

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ポール・ブリッツ | URL | 2011/11/20(日) 13:48 [EDIT]
応援しています!

これだけの迫力あるおそるべき絵図、完成させないのはもったいない(^^)

着地点はどこなんだろう?

匡介 | URL | 2011/11/20(日) 17:13 [EDIT]
>ポール・ブリッツさん
着地点がどこですと……?
そんなもの僕が知りた(以下略)

最近思いついた新要素を追加したい気持ちがあるのですが、
ただ、これまでのコンセプトから逸れる……という思いがあって悩みます。。

でも現状のままでエンディングに到達できるのだろうか。。

――と書いてる側もアバウトにしか見えていなくて不安と心配しかない(汗)
ま、自分の中で複雑になりすぎたところを整理して新章の向かいたいと思います。

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