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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2011/11/09(水)   CATEGORY: 短篇小説
ペンは剣の如く(上)
 真山戌彦はその朝、一本のペンを拾った。何の変哲もないペンだ。近所のコンビニに行けば手に入りそうなものだった。
「じゃあ、これからテスト用紙を配るからな」
 そう言って教師が一列目の生徒に用紙を配りはじめた。
(そうだった。一限目の数学は小テストだったんだ。忘れていた!)
 普段、真面目に授業を受けていない戌彦には、小テストといえど半分も解答欄を埋められる自信がない。そもそも数学は苦手教科だった。
 せめて数学でなければ勘に頼ることもできるのだが、解き方のわからない式を勘でどうこうできるものでもない。完全にお手上げだった。それでも、埋められるところは埋めておこうとペンケースからシャーペンを取り出して、テスト用紙に向き合った。
(――だめだ。全然わからない)
 苛立ちと焦燥でつい力が入りすぎて、シャーペンの芯が折れてしまった。カチカチと何度かノックするも新しい芯が出てこない。補充の芯はなかった。
(……あとはボールペンしかない)
 そのとき、今朝拾ったペンが見えた。何気なく、それを手に取ってみた。
 すると不思議なことに、先ほどまでまったくわからなかったはずの問題の答えが書けた。まるでペンが意思をもって動いているかのように、見る見るうちに解答欄が埋まってゆく。戌彦自身、どうなっているのかわからなかった。
(これは、一体どういうことだ……?)
 どんどんペン先が奔る。
 戌彦は冷や汗をかいていた。もはや完全に自分の意思では書いているのではないことに気付いていた。手が、ペンが勝手に動いている!
 戌彦はチラリと隣の席のやつの答案用紙を盗み見た。そして自分の答案用紙と照らし合わせてみる。――同じ答えが書かれていた。
 何が起きているのかはわからないが、これは限りなく僥倖だと戌彦は感じていた。もし本当にこのペンが自動的に解答を書き込んでくれているというなら、今後のテストはすべてペンに任せればいい。なんと素晴らしい拾い物だろう!
 気付けば、犬彦の答案用紙はすべて埋まっていた。全問正解だった。


 それから戌彦は毎日そのペンを使った。テストだけではなく、授業でも自動的に板書を書き写してくれて便利だった。そのペンを手に持つだけで、あとは勝手にやってくれた。まるでペンを持っている間だけ右手に何かが憑依しているようにも思えた。ペンはとにかく活躍してくれて、次の試験では学年一位の成績をおさめた。


 ある日の授業中、板書写しが誰よりも早く終わって――なにせ教師の板書と同じ速度、あるいはそれよりも少し速いのではないかと思うほどの速度でノートに写されるのだ!――暇になっていた戌彦は、ノートの隅に落書きをしようとしていた。暇といっても実際に書き写しているのは戌彦ではないのだが、あまりに馴染んでしまっていて、あたかも自分がやっているという意識になっていた。その頃にはもはや、ペンが自分の一部のように感じていたのだ。
(おや、どうした?)
 ペンが、自分の意思とは違う動きをした。いつもなら解答を埋めたり、板書を写したりするとそのあとは勝手に動くこともなく、戌彦の自由にペンを動かせていたのに、このときばかりは少々違って、写しは終えているのにペンが動いた。
(なんだ……?)
『高村繁雄は、万引きの常習犯だ』
(……これは、どういうことだろう)
 本当のことだろうか。もし本当のことだとして、どうやって事実だと確認すればいいのか。初めての出来事に戌彦は少しばかり動揺を覚えた。
『△△ストア』
 今度は下校途中にある店の名前がノートに書き出された。これはどういうことか。とりあえず高村のことを調べるために、その日帰りにこっそり高村を尾けてみることにした。
 戌彦の知っている高村は、非行にはしるタイプではない。いたって真面目で、平均的な生徒という印象を持っている。それゆえにノートに書かれたことに対して半信半疑だったが、高村が△△ストアに入ってゆくのを目にして、戌彦の心臓は高鳴った。
(……まさか、本当に)
 高村を追って店内に入った戌彦は用心して高村の様子を窺った。もし高村に気付かれたら何もかもが台無しになってしまう。
 どこか高村の挙動がおかしかった。やけに周りを気にしている。
(――やるのか?)
 高村が商品に手に取ると、戻すと見せかけて制服のポケットに放り込むのが見えた。
(やった。あいつ、本当にやりやがった)
 そのまま何食わぬ顔で店を出て行く高村を、戌彦は興奮した面持ちで見送った。



<作者のことば>
久々に書いた。朝、漫画読んでて思いついて、帰ってきて2時間くらいかけて文章にして、完成。(推敲…していない……。)
最初は一話にまとめようと思ったけど、ちょっとした時間に読みやすい分(文)量にできるだけっていうのは前から決めてることなので、2話に分けてみた。

文章はシンプルで読みやすいようになっている、はず。

漫画にインスパイアされて書いたものなので、話の脳内イメージは漫画になっていて、頭の中では漫画っぽい表現なんだけど、どう書こうかな~などとちょっと思ったりしながら書いたので、そのあたり読んでいてどう感じられるのか気になります。

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COMMENT

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ポール・ブリッツ | URL | 2011/11/10(木) 06:52 [EDIT]
半分まで読みましたが、ぞくぞくしました。

真山くんにどんな災厄が降りかかってくるのか、考えただけで怖いです。

匡介 | URL | 2011/11/10(木) 12:40 [EDIT]
>ポール・ブリッツさん
え、どうしよう、その期待に応えられる気が…(汗)
意識したのは漫画で20ページというものなので、複雑な展開などはなく、最後まであっさり塩風味です。

それにしても、ホラーとして書いたつもりなかったのに、どうしてホラーとして受け止められてるんだろう?(笑)

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