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DATE: 2011/07/13(水)   CATEGORY: 業宿しの剣
業宿しの剣(3)
 場の空気が少しばかり張り詰めているのは、飯屋の奥の席にいる巨漢のせいであった。
 男はザンザという北からの流れ者で、このあたりでも荒れくれ者として名が届いてきている。巨躯で強面という見るからに周りを圧倒する容姿に誰もが息を呑んでいた。
 さっきから好き放題食べているが、果たして食事代を払えるだけの銭を持っているのか誰もわからない。店主もいささか不安なのだが、ザンザの横に置いてある身の丈ほどある巨刀が恐ろしくて、尋ねることなどとてもじゃないが出来ない。
「あたしからのお裾分け」
 そう云ったのは肌が蝋のように白い女だった。顔もなかなかの美人である。女はザンザの前に酒を置いた。
「これはこれは、別嬪じゃねえか」
「お世辞を云ったって、他に何も出やしないよ」
「世辞じゃねえよ。お前ほどの器量の女はそう簡単には拝めねえ」
 と、ザンザは笑みをこぼしながら云った。
「悪い気はしないねえ。お兄さん、これもどうだい」
 女が差し出したのは団子であった。特に変哲もない、普通の団子である。
 ザンザはその団子を頬張り、女の腕を掴んだ。
「姐ちゃん、己(お)れの女になりゃしねえか」
 単刀直入な言葉に、女は嗤う。
「なんでえ、何が可笑しい」
 女の笑みに嘲りの色が含まれていることに、ザンザは怒りを露わにした。
「別に。小さいことを気にすると男が廃るよ」
 女の脇に、三味線があることに気付き、ザンザは女に云った。
「お前、それを弾いてみろ」
「良いよ」
 女が三味線を手に取り、ベベンと弦を弾いた。
「滅多なことでは披露しないんだけどね、今回は特別サ」
 弦を鳴らして、女が演奏を始める。その場に居たもの全員がその技量に圧倒され、魅了された。とてつもない腕前だ。どこからともなく「おお……」という感嘆の声が漏れる。
 そのとき、グ、と呻きをあげてザンザが腹を押さえながらよろめいた。
「……おい、どうしたんだ」
 ひそひそと周りでザンザの異変について話が始まったが、誰もザンザに近寄ろうとはしない。
「ぐおぉぉ」
 よろめいたザンザは隅の席に居る少女にのしかかるように倒れ込んだ。
 ――が、少女がその巨体で潰される前にザンザは止まった。正確には止められた。
 ザンザの巨体を一本の棒が支えている。いや、棒ではない。それは槍の柄だった。
「自分の躰も支えられないのか、下衆」
 よく通った声。それはまさしく女のもの。
 少女が見上げると、笠を被った女が片手に持った槍の柄でザンザの巨体を止めている。
「下衆だと……?」
 ザンザの顔は怒り心頭で紅潮している。鬼のような形相に、周りの者たちは一歩二歩と身を引いた。巻き添えになりたくない、という気持ちが滲み出ている。
「違うのかい。あんたの悪名はこっちにも聞こえてるよ。噂が本当なら下衆以外の何者でもないじゃないか」
「いい度胸じゃねえか」ザンザは自前の巨刀を手に取った。あれを振り回せば店など簡単に崩れてしまいそうだ。店の主人の顔が蒼白になる。「女、殺してやろうか」
「あんたにあたしを殺せるのかい?」
 女は槍の穂先をザンザに向けた。
「己れとやれると思ってるのか? よく見ればお前もなかなかの器量じゃねえか。殺す前に姦(や)ってやるよ」
 ザンザが巨刀を振り上げ、叩きつけるように女目掛けて振り下ろした。刃先が天井に当たり、家屋を破壊しながら刃は進む。
 それを見て女も動いた。迅(はや)い。ザンザが巨刀を振り下ろしきるより前に槍で巨体の脚を切った。そして突き。槍の穂先がザンザの腿を貫く。
「ぬッッ」
 バランスを崩したザンザの巨刀はまるで見当外れのところに刃先を食い込ませて、沈黙した。そこに女の槍がザンザの喉元を狙う。
「どうだい、まだやるかい?」
 あと一寸でも動けば、穂先がザンザの皮を裂いて肉を貫きそうだった。




<作者のことば>
更新をあまり停滞させたくないのでササッと書きました。
もう少し書けたけど、あまり長くもしたくないので次回に。

女の名前出せずに終わりました。

ちなみに女は二人出てきましたが、槍の方しか名前決まっていないという。
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ポール・ブリッツ | URL | 2011/07/13(水) 12:41 [EDIT]
賞金首にたいしては、毒を盛った側が賞金を得るのか、殴って殺したほうが賞金を得るのか、どうなるんだろう?

……とふと思った。

匡介 | URL | 2011/07/13(水) 18:45 [EDIT]
>ポール・ブリッツさん
それは賞金首相手に同時に行われた場合ってことですよね?

まぁ、明確な証拠がある方じゃないでしょうか。
システム知らないですけど、あるいは殺した賞金首の死体を持ってる方とか?

どちらかというと後者の方が優位そうですけどね。
毒は本人の証言以外に証拠となるものがあるのかってところが難しそうなので。

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