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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2011/06/19(日)   CATEGORY: MUKURO・煉獄篇
MUKURO・煉獄篇-17 (DEVIL SIDE)
 彼は人気のない街を彷徨っていた。
 化け物たちが喰い荒らした跡が残っている。つまりは人の屍とその一部。
 死臭漂う中を男は歩いた。生き残るために、何人かの人間を囮に使いもした。騙して化け物に襲わせることもあれば、身動きを出来ないようにして化け物を引き寄せている間に逃げることもあった。
 罪悪感は、ない。
 秩序(ルール)が喪失われた世界に、倫理は必要だろうか。弱肉強食と化した世界にも、道徳(モラル)は必要だろうか。――そんなものを守っていれば、死ぬ。
 それで死ぬようなやつは、ただの馬鹿だ。死んだら何にもならない。
 善悪に迷って死ぬよりは、悪としてでも生きる方がよっぽどまともだ、と思う。
 ――俺は簡単にやつらの“餌”にはならねえ。
 彼は知り合いを殺した。放っておいてもどうせ死ぬ運命だったろうが、殺してやった。嫌なやつだったが、殺してみて、何の感動もなかった。きっと元々が生きている価値もないやつだったのだ。目の前を飛ぶうざったい虫を叩き潰しても、何も思わないのと一緒だ。彼にとって、殺した男はその程度の存在だった。
 そして彼は知った。
 全てが崩壊を始めているこの世界では、好きに生きた方がいいのだと。
 ――どうせいつ死ぬかわからねえんだ。楽しんだ方が勝ちだ。
 どこかからすすり泣く声が聞こえる。あたりを見回すと小さな男の子がいた。彼は少年に近付く。どうやら足を挫いているようだった。
「いてぇのか?」
 彼は少年に声をかけた。
「立てるか?」
 手を差し伸べる。少年は彼の手を掴んで、ゆっくりと立ち上がった。
「一人か?」
「……うん」
「親は?」
 そう尋ねられて、少年はなにかを思い出したように涙を浮かべ始める。
「やられたのか。あの化け物どもに」
 ぼろぼろと涙が零れた。だが、声は上げまいと必死に抑え込んでいる。少年は、小さく頷くので精一杯だった。
「そうか。一緒に来るか?」
「……どこに、行くの?」
「さあな。――もうこの世に安全なとこなんて、ありゃしねえよ」男はあたりを見回した。破壊された街。それは言葉にするなら廃街といったところだろうか。「どうする?」
「………行く」
「じゃあ、来い」
 そう言って彼が歩き出したので、少年は追いかける。挫いた足が痛かったが我慢した。彼は少年のことを気遣って速度を合わせてやるつもりはないようだった。ついて来れるなら、来い。そう言わんばかりだ。
 それでも少年は必死について行った。他に頼るあてもない。今の少年には彼が頼みの綱だった。それに縋るように追った。



<作者のことば>
だいぶ路線変更した。
美術館や映画館に足を運んでいる間に、次どうするつもりだったか忘れてしまったから、とかではない。……いや、忘れました。最後に書いたとき、次をどう展開させるかイメージあったはずなのに、完全に喪失われてしまった。記憶の消失。

――で、当初考えていたのとは全然違う方向に舵を切ることに。
はっきりイメージが見えていないことがそのまま文章に反映されてしまってる気がするけれど(申し訳ないです)、このまま止まっちゃうと書けなくなりそうでもあるので、押し切ります。

そのうち、もう一回軌道に乗せてみせるので。


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COMMENT

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ポール・ブリッツ | URL | 2011/06/19(日) 14:59 [EDIT]
この子もホラー映画の作法にのっとって食われてしまうんですか?

どきどきしてます。

匡介 | URL | 2011/06/21(火) 05:31 [EDIT]
>ポール・ブリッツさん
そう言われるとその展開は嫌でも避けたい気がしちゃいますねなんか!
というか、え、ホラー映画……? えっ MUKUROってホラー映画のセオリーにのっとって展開してたんですか!?

あとホラーなんですか!?
(ホラーのつもりないのですが、特にジャンルわからないです。意識してなかった…)

こっちもどきどきします。違う意味で。
どう読まれてるんだろう、MUKUROって……。

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