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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2011/06/17(金)   CATEGORY: MUKURO・煉獄篇
MUKURO・煉獄篇‐16 (Si vis pacem,para bellumⅢ)
 朱色の甲冑を着た鎧武者がいる。
 野坂は思考が追いついていかない。――どういうことだ?
 鎧武者は大きく一歩前へと進み出る。
 野坂は機関拳銃――M9を握り締めた。
「ヌシは我に対峙する気か」
 それは、先ほどの頭に直接響いた声と同じものだった。
「ヌシは我に挑もうというのか」
 あと少しで引き鉄にかけた指に力を入れれば銃口が火を噴く。――だが、その少しがなかなか出来ない。凄まじいまでの威圧感に圧倒されて、野坂は身動きひとつ取れなくなっていた。額から伝った汗が頬を通って床に落ちる。
「相手になろう」
 そう言って、鎧武者が腰の刀を抜いた。
 戦慄。それは戦慄というしか言葉が見当たらない。野坂の躰を突き抜けたのはまさしく戦慄であった。鎧武者から発せられている大気を震わせるほどの気迫(オーラ)が、抜刀とともに一気に増したのだ。
 野坂は立っているだけでも辛かった。膝を突いて倒れ込んでしまいたいほどに体力を消耗している。それだけの気迫なのである。
 鎧武者がまた一歩前に出た。
 刀が正眼に構えられる。
 それと同時に引き鉄は引かれた。
 自分の意思かどうかもわからないほど、野坂はこのときのことを覚えてはいない。ただ引き鉄を引いて、銃弾が放たれた。連続して銃口が火を噴く。M9の装弾数は25発である。発射速度は約1,185/分。一瞬でその全弾を撃ち尽した。
 矢継ぎ早に放たれた銃弾を鎧武者は全てまともに受け止めた。弾が甲冑にめり込む。だが、それでも倒れることはなく刀は依然として正眼の構えである。野坂は恐怖に打ちのめされそうだった。心が折れかけている。
 そのときだった。野坂の耳に亮太郎の声が聴こえてきたのは。
 視界に亮太郎の姿が見えると無意識に野坂は叫んでいた。「逃げろ!」
 咄嗟に腰の拳銃――シグサワーP220に手をかけ、鎧武者に照準を合わせる。そして引き鉄を引いた。銃弾が一直線に空気を裂いて、螺旋を描きながら鎧武者の面頬にヒットする。
 そのときにはもう野坂は走っていた。
 あれは倒せないと本能が語っている。生き延びるためには逃げるほかはない。
「――ヌシ、逃げるのか!」
 鎧武者が野坂を追った。
 野坂は途中で亮太郎を抱き上げ、LIVのところまで駆け抜けた。そのまま運転席に飛び乗ってエンジンをかける。タイヤが地面と摩擦した。車体が前に進み出す。
 追いつけないと察した鎧武者が刀を投擲した。
 刀はまるで弓矢のように真っ直ぐに飛んでLIVの装甲に突き刺さったが、その程度では軽装甲機動車は止められない。
 こうして、野坂と亮太郎は駐屯地を脱出した。



<作者のことば>
この鎧武者はもう少し無口なイメージでいたのだけど、書いてみると結構喋ってました。
そもそも登場シーンが最初に想定していたのと違うので、煉獄篇書き始めたときとかなり違う展開なってます。

まぁ 基本的には書きながら作っていくタイプなのですが。

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COMMENT

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ポール・ブリッツ | URL | 2011/06/17(金) 22:01 [EDIT]
鎧武者みたいなやつがこれからぞろぞろ出てくるんですか?

まさに地獄絵図ですな……。いや煉獄絵図か(^^)

続き楽しみです(^^)

匡介 | URL | 2011/06/18(土) 00:55 [EDIT]
>ポール・ブリッツさん
煉獄絵図って…(笑)
鎧武者は地獄篇書いてるときから出したかったんです実は!

てか、これがぞろぞろ出てきたら、まるで違う内容になっちゃうかもしれないですが、それやりたい気も……(笑)

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