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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2011/06/11(土)   CATEGORY: MUKURO・煉獄篇
MUKURO・煉獄篇‐15 (Si vis pacem,para bellumⅡ)
 意識が朦朧としていた。先ほどまであった激痛は遠退いている。躰のどこかを怪我しているはずだが、今は何より寒かった。
 視界がぼやける。自分の手が見えた。指の本数が合わない。それは欠損(うしな)ってしまったからなのか、視界がぼやけているのせいなのかわからない。――いや、多い。5本以上はある。きっと、視界がぼやけているせいなのだろう。
 それから赤が見えた。手が赤に染まっていた。これは……血だ。血で手が汚れ、て、どこかから、血が、溢、れ、てい、る……確か、俺は……あの、ばけ、ものに………さむい。しぬ、のか……お、れは、しぬのか………?
 そのとき何かが聴こえた。
 そう、おれに、もっと、ちから、があれば……。なか、まを、たすけられ、たのに……
 ――………か?
 お、れが、もっと、つよ、ければ………
 ――汝は何を欲する?
 な、んだ……?
 ――汝、力を欲するか?
 ち、から……?
 ――汝、力を欲するか?
 ちか、ら、ほし、い……
 ――汝、生を望み、力を欲するか?
 いき、たい……
 ――汝、生を渇望し、力を欲するのだな?
 おれは、いきたい。そ、して、ちから、が、ほしい………
 ――その願望(のぞ)み、我が叶えてやろう。

 ***

 銃を構えた野坂が建物の中をゆっくりと進んでいた。今のところ何かの気配は感じられない。そこにあるのは屍とその死臭だけだった。
ちなみに亮太郎は車両(くるま)の中に置いてきている。
 野坂はさらに歩を進めた。何事にも対応できるように、常に緊張の糸を切らさずに、そっと足を滑らせる。
「いき……た、い………」
 今、確かに声が聴こえた。知った声だ。野坂はつい小走りになった。
「伊藤!」
 野坂には確信があった。さっき聴こえてきたのは同期の伊藤の声だという確信だ。
「伊藤、いるのか?!」
 声がした方へと野坂は駆けた。知っている人間がいる。知っている人間が生きている。頭の中にはそれしかない。気付けば、全力で駆けていた。
「の、さか……」
 ――いた。確かに伊藤だった。
 伊藤は片腕を喪失い、両脚を喪失い、血まみれの状態で床に這いつくばっていた。
「伊藤!! 大丈夫か!!」
 野坂が駆け寄る。これでは助からないだろうことは野坂も理解していた。それでも助けてやりたい。助かって欲しい。そう願ってしまう。
「………ら………い…」
 息絶え絶えに伊藤が何かを口にした。「え? なんだ?」
「おれ、は、ちか、ら、が、ほし、い………」
 ――では汝に我が力を貸そう。
 どこからともなく声が聴こえた。まるで頭の中に直接響いているようだ。
 ミシッ――
 突如として、天井に罅(ひび)が入り、それが野坂の目の前に落下してきた。その下には、伊藤がいる。
「――伊藤!!」
 眼前にあるのはただ瓦礫の山。伊藤の姿は見えない。
 そのとき、
 瓦礫の中で何かが動く気配があった。
「……伊藤?」
 さすがの野坂も半信半疑に問いかける。
 返事は、ない。
 だが、確実に瓦礫は隆起して、内部(なか)で何かが立ち上がろうとしている。
 煙をあげて瓦礫が崩れ落ちた。
 シルエットが浮かびあがる。
 両の脚はついている。伊藤ではない。
 では……?
 野坂がM9を構えた。
 砂埃の中から現れたのは、予想外にも鎧武者の姿だった。

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COMMENT

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ポール・ブリッツ | URL | 2011/06/11(土) 15:18 [EDIT]
鎧武者? うむむ……。

次回を待ってます。

匡介 | URL | 2011/06/11(土) 23:20 [EDIT]
>ポール・ブリッツさん

反応しにくいです。。(苦笑)

ここらへんから地獄篇との違いが出てくればいいかなーって思ってます。
今までは地獄篇を踏襲したような内容で、導入部だったので。

上手くいくかわかりませんが、頑張ります。


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