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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2008/07/28(月)   CATEGORY: 短篇小説
laugh maker.
あるところにひとりの男がいました。


男はとても人が良く、
周りからとても親しまれていました。


町で男を知らない人はいなく、
誰しもが彼のことを大好きだったのです。


男は人の“笑顔”が好きでした。
なので人が喜んでくれることを積極的にやりました。
ときには他の人なら嫌がることも笑顔で引き受けました。


男は人気者でした。
誰しもが彼を愛していました。


ある日、男は泣いているひとりの子どもに出会いました。


――どうしたの?


子どもは大切なオモチャを失くしたのだといいました。
それは自分の宝物だというのです。


男は子どものオモチャを探してあげました。
日が暮れ、太陽が傾いても探し続けました。


気付くと夜になっていました。
しかし、それでも男は暗がりの中を必死に探しました。


男は何日も、あきらめず子どもの宝物を探すことを続けました。


そして、子どもはいいました。


――もういいよ。


男は「大丈夫、きっと見つかる」と子どもを元気づけました。


――本当にもういいの。


子どもは彼にいいました。


――ありがとう。必死に探してくれただけで嬉しいんだ。


あまりに男が必死に探してくれるので、子どもはそれだけで嬉しくなってしまいました。
今までどの大人だってそんなには探してくれなかったからです。


子どもに笑顔が戻ってきたのを見て、男は子どものオモチャを探すのをやめました。
彼が本当に取り戻してあげたかったのは、その大切だというオモチャではありません。
そのオモチャと一緒に失くしてしまった子どもの笑顔だったのです。


――いいかい? きみが本当に失くしてはいけない宝物はその笑顔なんだ。


そう彼はいいました。
子どもも彼のいいたいことを理解したかのように大きく頷きました。


男は人の“笑顔”が大好きでした。
しかし自分の知らないところで、たくさんの人々が悲しみにあけくれているということも知っていました。


男はそれが悲しくて仕方ありませんでした。


戦争だってそうです。
笑顔を生み出さないだけではなく、おおくの悲しみの涙を流させます。


男は“悲しみ”が嫌いでした。


ある日、人々の笑顔をのぞんだ男は“悲しみ”をたべはじめました。
世界中の“悲しみ”をむしゃむしゃとたべはじめたのです。


それを見た人々は男をとめました。
しかし彼は食べるのをやめませんでした。


“悲しみ”でふくれあがった男は、その目からたくさんの涙を流しはじめました。


それでも男は“悲しみ”をたべ続けます。


男から流れる大量の涙は、やがて川となり、海へとつながりました。


たべ続けるのをやめない男はどんどんとふくれあがり、
もう破裂すんぜんのところまできてしまいます。


それでも男は“悲しみ”をたべることをやめようとはしませんでした。


数日かけて、男は世界中すべての“悲しみ”をたべつくしました。
すると世の中から“悲しみ”は消え、人々は笑顔につつまれました。


それを見た男も笑顔になりました。


世界中がひとりのこらず笑顔になったのです。


しかし、その笑顔が続いたもみじかいあいだだけでした。


しばらくすると、ギリギリまで“悲しみ”をたべ続けた男は、
その大きすぎる“悲しみ”に耐え切れずに死んでしまいました。


すると彼の死を知った世界中の人々が悲しみの涙を流しました。


いつしか男は世界中の人々にまで愛されていたのです。


そうしてふたたび世界に“悲しみ”が戻りました。


しかし彼の流した涙でできた川は、おおくの人々の恵みとなり、
たくさんの笑顔をつくりました。


その川には、人々の“笑顔”を愛した男の名前とおなじものがつけられました。


そしてその川は人々から愛され、
男が死んだあともたくさんの笑顔をつくり続けることになったのでした。


<作者のことば>
作者唯一の童話風小説。

タイトルはBUMP OF CHECKENの『ラフメイカー』から。

これは『ありがとうのうた』という曲を聴きながら書いたものです。
その曲は俺の親友作ったものがですが、書いてたらちょうど聴きなくなって。

大いにインスピレーションを頂きました。とても優しい歌なんです。

そんな彼を含めた俺にとって大切な人たちを想って書いた物語です。

俺はあなたたちの“笑顔”が好きだよ。
こんなこと生真面目に言うと、正直恥ずかしくもあるのですが、そんな想いも込めて。

――大切な人の、大切な笑顔を大切に。

案外、大切なものを大切にするというのは難しいことです。
だからこそ、自分たちは大切なものの大切さを忘れてはいけません。


どうかひとりでも多くの人が笑っていられますように。


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