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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2011/01/23(日)   CATEGORY: MUKURO・煉獄篇
MUKURO・煉獄篇‐11 (最初の邂逅)
 見知らぬ男が包丁を振り上げたとき、亮太郎は死を覚悟して目を瞑った。
 怖かった。不思議なことだが、このときばかりはあの化け物たちより目の前の男の方が断然に怖いと思った。たったひとりの人間が怖くて仕方ない。化け物相手に生き延びてきたというのに、ここにきて最も死を意識したというのは不可思議だと心の隅で思った。
 カラン。何の音だろうと恐るおそる目を開けてみると、男の手には包丁はなく、初めて見る男に取り押さえられている姿がそこにはあった。抵抗しようと足掻く男を軽々抑え込み、包丁男は腕を背中の方へと捻り上げられ痛みに悲鳴をあげた。
「大丈夫か?」
 男の声に、亮太郎が小さく「うん」と答える。
「ちょっと待ってろ」
 男は包丁男を押さえつつ自分のベルトを外して、包丁男の腕をベルトで拘束する。「おとなしくしてろ」
「君、ひとり?」包丁男を地面に放ったまま、男が立ち上がり尋ねた。「うん」
「そっか。家は?」
 家のことは思い出したくなかった。あの化け物のことを思い出してしまう。それだけで鳥肌が立ちそうだった。
「――俺の名前は野坂 永一。君の名前は?」
 なかなか返事をしない亮太郎に対して、男は何かあることを察して自己紹介をし、亮太郎にもそれを求めた。
「葛原、亮太郎……」
「亮太郎君か。とりあえず安全なところに行けるまで一緒に居ようか」
 その安全なところはどこなのか、そもそも安全なところなどあるのか――と心中で野坂は思いつつ。
「俺をなんとかしろォオオ!!」
 包丁男は唾を吐き散らしながら喚き、堪らないといった感じで野坂は男を無理やり立たせた。「行け」
「……は?」
「行けよ。どっか好きなところに」
 本来なら警察に突き出してやりたいところだが、今この異常な状況で警察が正しく機能しているとは思えない。野坂は仕方なく、男を自由にする道を選んだ。
「じゃあこのベルトを外せよ!」
「それは自分でなんとかしろ。それを外した途端にまた襲いかかられちゃ堪らないからな」
 男はギャアギャアと喚き散らしながら、最後に捨て台詞のようなものを吐いて、両腕をベルトで拘束されながら走り去っていった。
残ったのは血の付いた包丁と女性の死体。
 どうしてやることもできないので、野坂は持っていたハンカチを女性の顔にかけてやった。それしか今の彼に出来ることはなく、そのことが彼には悔しかった。
「行こう」
 野坂が亮太郎に手を差し伸べる。
 亮太郎は、恐るおそるその手を掴んだ。
 そして二人は歩き出す。



<作者のことば>
どのタイミングでキャラクターたちを合流させるのか、結構難しいですが、やっと野坂と亮太郎が合流。
ここまでは何となくストーリーラインが見えていたのだけど、ここからが問題だー。

さて、どうするかー。

骸を出すタイミングも考えなきゃならないしね。
でも、やっと物語が動き出し始めた気分。ここからが煉獄篇の始まりです。

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