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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2011/01/21(金)   CATEGORY: MUKURO・煉獄篇
MUKURO・煉獄篇‐10 (急襲Ⅲ)
「おい、大丈夫か!」
 二人に声かけてきたのは、教師の斎藤だった。「斎藤先生!」
「怪我はないか?」
「あの、雄大君が……」
「どうした? 見せてみろ」
 そう言って斎藤が雄大に駆け寄り、手を伸ばしてきた――そのとき、斎藤はトンと軽い衝撃を躰に覚えた。彼は一瞬なにが起きたのかわからなかった。だが、千紘には明瞭(はっきり)と見えていた――斎藤の胸を貫くそれが。
 斎藤が自分の胸を見下ろすと、何かが生えている。自分のものではない。これはなんだ、と彼は思う。そして血が溢れていることに気付き、次の瞬間には視界が揺らめいた。全身に力が入らなくなり、体重を支えきれなくなった両脚からカクンと崩れ落ち床に倒れた。
 斎藤の胸を突き刺したのは、またもや蟲の化け物だ。
 それはムカデのように長い躰をしていて、数え切れないほどの脚を持っていた。他の化け物同様にサイズは規格外に大きい。そして頭と尾の区別がつかなかった。どちらも鋭い針のような形になっている。ニードルヘッズバグは斎藤の躰から針の頭――あるいは尾だが――を引き抜いて、ゾゾゾと幾本もの脚を蠢かせた。
「雄大! 逃げなきゃ!」
 千紘が雄大を支えて、走ることを促した。雄大もそれに応えるように足を踏み出すが躰の節々が痛む。「――くっ」
 トンッとニードルヘッズバグの鋭利な針が倒れていた斎藤の頭を貫いた。斎藤の頭に大きな穴が簡単に穿たれ、ぴくりとも動かなくなった。人ひとりがいとも容易く絶命する現実する非情さに、千紘の涙腺がまた反応する。――が、彼女は泣かない。泣いている暇はない。斎藤の次に狙われるのは自分たちなのだから。
 ニードルヘッズバグが俊敏な動きで二人に襲いかかろうとしたそのとき、廊下の天井が崩れ落ちてきてその瓦礫がニードルヘッズバグの上に降りかかる。千紘と雄大は驚いた。瓦礫の破片が二人にも飛んできたが、幸い怪我という怪我には至らなかった。だが、それ以上に問題だったのは瓦礫とともに落ちてきた巨大な蟹蜘蛛――ブラックシェルスパイダーの姿である。
 落ちてきた衝撃でかブラックシェルスパイダーはまだ動き出してはいない。千紘と雄大は再び走り出した。行く先にあるのは、体育館だった。



<作者のことば>
雄大と千紘、どちらをメインにしているということはありませんが、やっぱり書くときはどちらかの視点に比重がいきます。で、今回は千紘視点だったな~って思ってます。

今のところ一番ガッツリ襲われてるのがこの二人なのかな。

いやー、よく生き延びてますね。
というか生き延びさせるのが大変で仕方ない。ピンチな状況を作ると書いてる側もピンチになること多々。

頑張れ、雄大! 頑張れ、千紘!
君たちが頑張らないと俺が困るんだよね!!

ってことで引き続き楽しんで頂けましたら幸いです。

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