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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2011/01/19(水)   CATEGORY: MUKURO・煉獄篇
MUKURO・煉獄篇‐9 (急襲Ⅱ)
 巨大なカマキリが教室に侵入し、暗転、雄大のかつての日常は崩壊した。そして現れたのは阿鼻叫喚の地獄絵図。血に塗れ、肉塊が積まれた教室だった。
 千紘が悲鳴をあげ、その場にしゃがみ込むのを見て、雄大はハッと正気を取り戻す。体験したことのない恐怖が躰に貼りついて離れないが、それでもこの場を逃げなければ!という気持ちがどこからかふっと湧いてきたのだ。
雄大は千紘の腕を掴んで走り出した。
「痛い」という言葉が思わず口から漏れたが、千紘もこの教室から逃げなければならないことはわかっていた。だから、強気に行動を起こした雄大について走る。涙が頬を伝ったが、知らないふりをした。今は泣いている場合ではない。悲しみに暮れている場合でも、恐怖に慄(おのの)いている場合でもないのだ。そう自分に言い聞かせて、走った。大人でも恐怖に立ち竦むであろう場面を二人は強く生きようと全身全霊で駆け出した。
 巨大カマキリが現れたのとは別のドアから教室を抜け、廊下を突き進む。むっと押し寄せる血臭に二人は耐えた。廊下にも、多くの死体が、その肉片が散らばっていた。
 階段がもうすぐというときに、目の前の教室から壁をぶちやぶってまたも巨大な化け物が現れた。見た目は蜘蛛だ。だが、表面は甲殻類のそれに似ている。蟹のように硬く、刺々しい表皮。色は黒い。それでも八つの眼と独特の牙がある口元は蜘蛛そっくりだった。
 巨体を持つその蜘蛛――ブラックシェルスパイダーはその大きすぎる躰ゆえ、身動きが取りづらそうである。硬い表皮で壁を削りながら動いていた。そのことに気付いた雄大は、もしかすれば潜(くぐ)り抜けれるのでは? という気持ちが湧いた。
 ブラックシェルスパイダーの脚は長く、床と腹部の間に人が通り抜けられる程度には空間ができている。もし失敗すれば待つのはおそらく死だが、後方からはあのカマキリがいつ追ってくるかもわからない。「千紘、行けるか?」
「え?」
「あの化け物の下を潜って向こう側に行けば、あとは階段を下りれば逃げられると思う。あの化け物の大きさだときっとすぐには追って来れない。逃げるとしたら、こいつを潜り抜けて逃げるしかないって!」
「……わたし、できないよ」雄大が大声をあげた。「できなくったってやらなきゃ!」
「でも、でも……」
 千紘の両目からぶわっと涙が溢れ、嗚咽を漏らしながら頬を濡らした。
 ブラックシェルスパイダーは、ゆっくりだが二人の方へと迫ってきている。
「千紘!! 今行かなくちゃおれたち死ぬんだぞ!!」
 ポタッ。そのとき床に落ちた一滴の涙は千紘のものではなく、雄大のものだった。
「おれだって怖えよ。でも、二人とも行かなきゃ死んじゃうんだぞ……」
 雄大の手にギュッと締め付けられる感覚があった。「ごめん」
「……行こう」
 二人はお互いに頷いて、同時に走り出した。ブラックシェルスパイダーの脚が二人に襲い掛かるが、それは間一髪のところで逸れ、二人は走り続けた。ブラックシェルスパイダーの口から紫色の液体が放たれ、壁や床にかかる。ジュッという音と異臭。廊下の一部が溶けていた。
 だが、二人は走り続ける。何も見ない。ただ走ることだけに専念する。
 ブラックシェルスパイダーを潜り抜けて、二人は階段を下り始めた。ここは三階だ。いち早く一階に辿り着きたいという思いが二人を焦らせる。
「あっ」
 階段に躓き、雄大が全身を打ちつけながら転げ落ちる。慌てて千紘が駆け寄った。
「だっ 大丈夫?」
「……うん、なんとか」
 上の階から破砕音が聴こえてくる。おそらくブラックシェルスパイダーが校舎を壊しながら追ってきているのだろう。
「早く、立って」
「いてて……」
 苦痛に顔を歪ませながら雄大は立ち上がり、残る階段を下り始める。そっと千紘は肩を貸してあげた。




<作者のことば>
雄大が思ったより漢だな。君の勇気には驚いたよ、作者として。

ザコ敵にもネーミング!第2弾は「ブラックシェルスパイダー」。
この蟹蜘蛛(←この呼び方でもよかったか)はヴィジュアル的なイメージはあったのだけど、呼び方が難しいな、と。できればこの甲殻類っぽい感じを出しつつ、蜘蛛ですよ感を出したいな、と。そんな感じで蟹って英語でなんだっけー? いや、蟹より甲殻類の方がいいか? って思った次の瞬間に浮かんできたのが「シェル」だったので、そのまま黒い蟹蜘蛛なのでブラックシェルスパイダーと。シェルスパイダーでもよかったんだけど、なんか語呂的にもう一単語あった方がよかった気がしたんですけど、どうでしょう?

……結局、甲殻類は英語でなんなのかわからないままだ。あとで調べよう。

なんか次回もう2桁で、このペースじゃ予定している今年度中に終わらないんじゃないかと焦ってます。
まだ全然始まったばかり!! というか俺の中では始まってもいない!!

ひーーー。

ちなみに、こっちで「日常は崩壊した」って使ってしまってどうなの、と思った。
それ亮太郎パートで使うべき言葉ではなかっただろうか~~~。

ところで拍手をクリックして頂いた方にほんと感謝!
以前に比べてコメントないのは少し淋しいですけど(内容に対する反応気になるもので)、読んで頂けてるんだな~って思えます! そして、すっごい前の作品にも拍手してもらったりして恥ずかしいやら嬉しいやら、過去作品も覗いてもらえてるんだなー。
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