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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2011/01/15(土)   CATEGORY: MUKURO・煉獄篇
MUKURO・煉獄篇‐7 (静寂の街Ⅱ)
 化け物と目が合った次の瞬間には野坂は走り出していた。いつもの訓練で、走ることには慣れている。全力で走れば逃げ切れると本能的に感じていた。それに相手は見るからに動きが鈍そうである。走り続ければ振り切れる! それは半ば確信だった。
 どれだけ走り続けただろうか。さすがの野坂も息があがり、全身からは汗が噴き出ていた。額から流れる汗が目に入って沁みる。後方を確認すると何の影もない。どうやら逃げ切ることができたようだった。
 無性に喉が渇いていた。コンビニが見えたので店に入るとそこにも誰の姿もなく、やや困惑しながらも冷蔵棚からスポーツドリンクを取り出して半分ほど一気に喉に通す。
(一体、何がどうなっているっていうんだ……)
 ザザ、ザザザ……。何か物音を野坂の聴覚が捉えた。全身に緊張が奔る。警戒しながら、野坂はゆっくりとコンビニを出た。ザザザ、ザザ……。(まさかあの化け物なのか?)
 野坂がそれを見たとき、最初は人かと思った。だが、すぐにそれは違うと気付いた。地を這うそれは腕が4本もあり、哺乳類というよりは昆虫を連想させる。そして顔。それの顔はつるりとしていて何もない。まさにのっぺらぼうだった。マネキンの顔とも思える。
 顔無しの化け物――ノーフェイスヘッドが素早い動きで接近してきた。野坂は反射的に蹴りを繰り出す。野坂の蹴りはノーフェイスヘッドの頭に当たり、ノーフェイスヘッドはそのまま吹き飛ばされて壁にぶつかった。
 ――倒せない敵ではない。
 そう確信した。見た目は化け物だが、抵抗すれば勝つ見込みはある。野坂の本能がそう告げている。
 起き上がろうとするノーフェイスヘッドに続けざまの蹴りを放った。相手が這っているため、有効なのはやはり蹴りだ。わざわざ姿勢を低くしてまで攻撃する必要はない。鋭い蹴りがノーフェイスヘッドの頭を何度も襲う。
そのうち化け物はぐったりとしたまま動かなくなった。
 息を切らしながら、野坂は目の前で倒れている化け物を見下ろした。これは何なのか。あのゲル状の化け物といい、世界は地獄と化したのか。まるで魔界に呑み込まれてしまったかのようではないか。
 ザザザ――
 また先ほどと似た音が野坂の耳に届いた。
 建物の壁に新たなノーフェイスヘッドが2匹。そしてアスファルトの地面にも1匹這っていた。
 ――いくらなんでもこの数は相手にできない。
 野坂は再び走った。行く先はわからない。そして、この先に何が待つのかもわからなかった……




<作者のことば>
やはり野坂パートは書きやすい。
まさか格闘で敵を倒してしまうほど強い設定ではなかったのだけど、まぁ ノーフェイスヘッドは弱い部類のいわばザコキャラなのでOKとしよう。

そして、今回初めて化け物に名前を付けました。
実際、今までも「巨鯨」とか「人面蜂」とか、あと「べヒモス」などあったんですけど、今回ほど意識的に命名したことはなかったです。
そもそも今までのパターンでいくと「顔無し」とか呼ばれる感じになったと思います(千と千尋か…)。「巨鯨」「人面蜂」パターンですね。で、「べヒモス」も『まるでべヒモスのよう』みたいな説明のあとでそう呼称されるようになったんじゃなかったかなと思います(いま確認しないけど)。

なので今回みたいに急に名前が付くパターンって初なんです、自分としては。

ゲームっぽい感じを意識しての命名。煉獄篇はこんな感じでザコキャラにも名前付けていきたいです(できれば)。
なぜかっていうと、「化け物」ってだけでやつらに専門的な呼称はなく、しかも複数違うタイプのやつが現れたときとっても説明が面倒だという。あちらの化け物こちらの化け物でわかりにくいので、今まで意図的にあまり名前付けてこなかったんですけど、考えを変えて命名してみました。

今回のノーフェイスヘッド。ヴィジュアル的にかなり某ゲームに影響されていると思うのですが、それはまた今度に(ちなみに思いついたときは意識してなかったです。あとから思いました)。
ちなみに名前はそのゲームのクリーチャー名をアレンジして名付けました。そうしていろんなものの影響を受けながらMUKUROは書かれています。

まぁ そのへんの話はいずれ。

煉獄篇、書くのがちょっとだけ楽しくなってきました。
読んでくれている方も楽しんでくれるととっても嬉しいです。

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