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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2011/01/07(金)   CATEGORY: MUKURO・煉獄篇
MUKURO・煉獄篇‐4 (日常の崩壊Ⅱ)
 世界が暗転した。それは一瞬の出来事で、彼はもはやこれまでの日常が喪失(うしな)われたことを理解した。
 見たことのない怪物が街に蔓延り、人々を喰らう姿を目撃した。いずれ自分もあの中の“餌”のひとつになるのだろうか、と夢想する。
 彼は逃げ惑う人々を見下ろしていた。馬鹿なやつらだ、と思う。そして自分もそのうちのひとりであることを無意識下に理解しつつ、彼は魑魅魍魎が跋扈する街の闇に紛れていった。

 ***

 血が滲んで、少しだけ沁みた。どこまでも走り続けた亮太郎は体力が尽きて、ついには躓き、アスファルトの上に転がっていた。見上げる空は青く、清々しくて、さっき化け物を見たことが嘘のようにそこには「いつもの空」があった。まるで現実感がない空だ。本当に現実感がないのはさっきの化け物の方のはずだというのに。
 亮太郎はゆっくりと起き上がり、ここがどこなのかとあたりを見回した。知っているようで、知らない場所だ。何度か通ったことがあるのかもしれないが、その程度のおぼろげな記憶しかなく、実際どこなのかわからない場所。
 母親は無事なのだろうかという気持ちとこれから自分はどうすればいいのだろうという気持ちで、亮太郎は涙が溢れた。洟をすすり、とにかく歩き続ける。だれか、だれかいませんか…
 全くといっていいほど人の気配はなかった。
 自分の足音がやけに耳に障る。呼吸もうるさくて、息を潜めた。静けさが落ち着かない。
 そこにヒュッと風を切るような音が聴こえた。ヒュッ、ヒュゥゥゥ。
 気付けば目の前に魚が浮いていた。何の魚かはわからない。ズブッと魚の額から角のようなものが突き出す。次の瞬間には頭部が醜く膨れ四方八方から口が生えてきた。もはや最初の姿形を留めていない。異形の魚を前に、亮太郎は再び走った。ヒュウウウ――風を切る音で、魚が追ってきているのがわかる。亮太郎は走った。できることはそれしかなかった。走って走って走り続け、逃げ続けるしか生き延びる方法はなかった。
 ふと前方に何かの姿が見えてきた。ぴょこぴょこ、と歩くそれは一見すると人のようでもあったが、裸で肌は青白く、口はとんがった耳のあたりまで裂けている。眼はぎょろりと大きかった。背はそれほど大きくなく、小鬼のような印象を受ける。複数のそれは亮太郎の方へぴょこぴょこと独特の動きで近付いてきていた。
 亮太郎は振り返り、後方を確認した。あの異形の魚の姿は消えていた。前方からは小鬼が近付いてきている。少し迷って、亮太郎はすぐ横にあった雑居ビルに逃げ込んだ。
 何かのオフィスらしいところに入るとデスクの下にもぐり込んで隠れ、息をひそめた。耳を澄ますと足音が聴こえる。それはゆっくりと近付いてきていた。
 口元を押さえていた手が震える。
 気配がすぐ近くまで迫っていた。
 デスクの上に何かが乗った音。
 亮太郎は悲鳴をあげたかった。大声で泣いてしまいたかった。それでも懸命に堪えようとする。
 にゅっ、と青白い顔が亮太郎の目の前に現れた。不気味に裂けた口が笑っているように見える。
 亮太郎はデスク下から飛び出して、駆けた。だが、小鬼の腕が亮太郎を掴まえる。それを精一杯の力で振り解いて、再び駆け出した。小鬼たちも亮太郎を追いかけて走り出す。
 小鬼たちが笑う。
 まるで獲物を追うのを愉しんでいるかのように。
 そこに一台の自動車(くるま)が突っ込んできた。




<作者のことば>
すっごい筆が進まない。文章が浮かんでこないならともかく、次の展開が見えてこない。
こういうときが一番書くのが辛いです。どうすることも出来なくて、もう書くのやめたいなー、なんて思ったり。

でもMUKUROは終わらせたいので、どうにかイマイチ納得いかないけど第4話をお届けしました。

ちょい不本意ですが、進めなきゃ調子も出てこないような気がして。申し訳ありません。
もう誰か少しでいいからアイデア出して(泣)ってくらい。あー 先行きが不安で仕方ない。。

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COMMENT

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ポール・ブリッツ | URL | 2011/01/11(火) 17:33 [EDIT]
煉獄篇も凄まじい迫力の作品ですが、「天国篇」になったらどうなるんだろう、と思いました。

ほんとの天国を描くのか、

ほんとの地獄を描くのか、

そのときが楽しみであります。

匡介 | URL | 2011/01/12(水) 00:43 [EDIT]
>ポール・ブリッツさん
勝手に天国篇があるみたいに言わないでください!(笑)
一応、完結篇と銘打ってるんですよ今回!! 最初は煉獄篇にするつもりなかったくらいです!

しかも「凄まじい迫力」だなんて本当に実力ある人に言われると困っちゃいます。
いま絶賛スランプ中というか、そもそもそれほど文章力ないのにさらに納得いかない感じでして…。

そのうち調子出てくるといいんですけれどもね~。

ほんと天国篇の構想なんてないですからね!
そして煉獄篇も期待しないで読んで頂きたいです(笑)!!

ただ一人でも読んで頂けてるうちは、やれるだけ頑張りたいとは思いますのでよろしくお願いします!!

ポール・ブリッツ | URL | 2011/01/12(水) 13:06 [EDIT]
だってダンテの「神曲」は、地獄篇、煉獄篇、天国篇そろってこそじゃ~ん!(^^)

そもそも煉獄いうんは天国へ行くために修行する場ですし。

書きましょうよ~(といってプレッシャーを与える男であった(爆))

まあそれはおいといても、とりあえず当面の目標のクリアですね、おたがい……。

匡介 | URL | 2011/01/12(水) 20:41 [EDIT]
>ポール・ブリッツさん

※本作はダンテの「神曲」とはなんら関係がありません。

いや、天国篇はほんとないです!!
これ以上は煉獄篇とした意味がバレてしまうので、もうやめてーー!!(笑)

それについてはいずれ書こうと思いますので!!

とにかく煉獄篇始まったばかりなのに、続編とかやめてください(笑)
なので完結篇として、煉獄篇ガンバリマス!!

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