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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/11/22(月)   CATEGORY: MUKURO外伝
MUKURO外伝(33)
「どうかしましたか?」
 何の前触れもない突然の問いかけに、未来は躰をビクっと震わせ、あまりの驚きに動揺しながら振り向いた。そこにはナースの格好をした女性がひとり立っている。
「……いた」未来が呟いた。「ほら、いたよ! 将平!」
 確かに人がいた。そのことに将平は驚きを隠せなかった。骸の方はその表情からは何を思っているのか窺えない。未来は喜んで将平に駆け寄った。「早く看てもらいなよ!」
 ナースは疲弊しているのか、無表情だった。顔色が悪い。感情というものが窺えない。ただそこはかとなく怠惰的なものが漂っていた。生きる気力を失った、人のカタチをしたもの。そのような印象を受ける。まるで生気を感じられないのだ。
「あの、彼の腕を看てもらえませんか?」
 未来が将平の腕を取って、ナースの前に突き出す。
 キイイイ――!!
 いきなりの奇怪な鳴き声。灰色の猿が院内に侵入してきて、ついに骸たちに襲いかかる覚悟を決めたようだった。赤い眼がギョロリと将平を見定める。血の匂いに、思わず舌なめずりをする。未来は叫んだ。骸は腕から骨刀を取り出し、猿に斬りかかる!
 未来は将平を連れて院内のどこかへ逃げようと思い、彼の腕を掴んだ。しかし動かない。先にナースががっしりと彼の腕を掴んでいた。「何を――」
 ナースの顔から何かが滴った。その液体は赤い。驚いて未来は彼女の顔を見る。鼻から血が流れていた。そして口からもゴプッという音とともに血液が溢れ出した。続いて両目からも血を流し始める。
 未来は再び叫んだ。もう声にすらならなかった。ナースの眼球がグルンと回転して奥に引っ込んだ。頭頂部から噴水のように血が。頭蓋骨を割り、皮膚を突き抜けてナースの頭から何かが這い出してきた。それはクラゲかタコのような姿で、まるいボディに、いくつかの触手のような脚を持っていた。眼はない。表面はヌメリと粘液に包まれていて、色は肉色だった。内臓のようにも見える。未来はとっさにレバーを連想した。
 その肉の塊は、触手の合間に口があり――その姿はまさにタコのようである――そこで何かを喰らっていた。その何かとは、ナースの脳みそだ。彼女の脳には眼球もくっついている。その様子をして未来は嘔吐しそうになった。口元を押さえて、うずくまる。
 将平はナースの手を振り払って、ナースを蹴り飛ばした。一緒に肉の化け物も病院のリノリウムの床に叩きつけられる。彼は瞬時にナイフを取り出して、ナースの頭から出てきた肉の塊に刃を向けた。ナイフが化け物に食い込み、切り裂く。――だが、化け物は躰半分を切り裂かれてもお構いなしに俊敏な動きを見せ、将平の腕に絡みついた。彼は必死にはがそうとするが、ヌルリとした感触が気持ち悪い。なかなかはがれない。
 軟体な化け物は、その躰全体で将平の腕の傷口を刺激した。彼は痛みに喘ぐ。そして肉の触手がずぶりと傷口に突き刺さった。そのままずぶずぶと内部(なか)に入っていく。化け物は柔軟に躰を変えて、将平の体内に侵入した。





<作者のことば>
えっと、実は今日の午前に誤って1話飛ばして次回掲載予定のものを載せてしまいました。
気付いてからすぐに対応しましたが、それでも読んでいた方がいらしましたら大変申し訳ありません。(そんなネタバレ被害者がいないことを祈りながら…)

なんでこんなミスをしてしまったのか。。今後は気をつけます。。。

ということで、改めて33話(今度は正しく32話から繋がってます!)を更新。


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