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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/11/26(金)   CATEGORY: MUKURO外伝
MUKURO外伝(35)
 まず鋭く太い牙が目の前にあった。咬みつけばいとも容易く頸(くび)をへし折りそうなほど逞しい顎。眼はなかった。凶暴な口からは唾液が滴り、未来の手が汚れた。それは黒い体毛をしていて、巨躯(おお)きいが細くしなやかでもあった。それは黒豹に似ていた。黒豹と明らかに違う点は、それには眼球がなく、脳が剥き出しであった。牙も恐ろしく長く、サーベルタイガーを連想させる。
 その黒豹の大きな口が、牙が、顎が、未来の目と鼻の先にあった。息が噴きかかる距離。本来なら不快だが、今は緊張と恐怖で嗅覚が正しく機能していない。心臓が鼓動を速めた。
「待て」
 誰かが言った。男の声だった。
 異形の黒豹は未来に襲いかかる様子はない。息荒げにしているが、それでも寸前のところで静止していた。
 そこで未来は、黒豹の首に鎖が巻きつけられていることに気が付く。
 視線が鎖を追い、ある男のところに到達する。黒い長髪を垂らした、痩躯の男だ。眼窩が窪み、目の下の隈(くま)が酷い。男は愉快そうに未来のことを見下ろしている。にいっと口元が歪んだ。
 男の肌は異様に白く、血が巡っていないかのようだった。それとは対照的に衣服は黒で統一されている。――その印象は骸を初めて見たときのものに非常に似ていた。
 だが、男は骸とは決定的に違う何かがある。相貌に違いが? 見た目は遠くもないが、近くもない。もっと違う何かだ。顔は端整で、見方によれば美しさすらあった。骸も造形は美しい。しかし、それとはもっと違う、妖しげな魅力を発している。恐怖(こわ)い。未来はそう思った。――そう、それは恐怖の向こうにある美しさ。凄惨で、禍々しく、そして静謐な一枚の暗い絵画のような魅力。人間の暗部を描きながら、しかし美しい。そんな絵画だ。そのような印象をその男は持っていた。
「いい子だから少し待ってな」
 男は異形の黒豹に言い聞かせているようだった。
 一瞬、未来の視界が遮られる。
 ――骸だった。
 骸が灰色猿との闘いを放棄して、未来を護りに入ったのだ。
 彼の骨刀と黒豹の太い牙がぶつかり合う。お互いに弾き飛ばされ、骸は体勢を整え直し再度接近する。黒豹の反応も速かった。再び骨刀と牙がぶつかり合った。
 ぐるるるるるる。
 黒豹が唾液を垂らして、唸る。
 三度目の合しようと骸が骨刀を構えたとき、彼の視界の隅に小さな影が奔った。
 キイイイ――!!
 灰色猿が未来を目掛け、牙を剥いて飛びかかった。




<作者のことば>
ついに書きたかったシーンの目前まできた! このために外伝がある!的な!
黒豹とか灰色猿とか相変わらず即興の敵キャラだけど、なかなか黒豹の描写いいんじゃないの?って自分で思っちゃった(笑) 結構気に入ってます。

BGMは引き続きハイドロヴァイヴ。
個人的にはぜひメタルをBGMに読んで欲しい。最近のイチオシだと他にはパラモア。
映画「トワイライト/初恋」で主題歌をやってたバンドで、超かっこいい。映画よりかっこいいからゼヒ。

さて、次回はついに男の正体が!? it's show time!! (正体なだけに!笑)


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