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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/11/24(水)   CATEGORY: MUKURO外伝
MUKURO外伝(34)
 将平の腕に異様な脹(ふく)らみがある。それがゆっくりと肩の方へとせり上がってきた。化け物が体内を移動している。このままでは将平もまた、ナース同様 脳を喰われてしまう運命かもしれない。あんな死に方は考え得る限り最悪だった。
 彼は必死にもがき、どうにかしようとするが、自分の腕の中にいるわけのわからない生物に対してどうすればいいのかわからない。だが、化け物は着実に彼の頭部を目指している。時間の猶予はなかった。彼にあるのはナイフのみ。将平はごくりと息を呑む。
 ――覚悟は決まった。
 彼は自分の手にあるナイフを、己の腕に突き立てた。腕の脹らみのある部分が刃に切り裂かれ、血が噴き出す。激痛が奔った。将平は喘ぎながらも、ぐりぐりと自分の腕をナイフで抉る。痛みに失神しそうだった。でも今 気を失うわけにはいかない。彼は力強く意識を保ち、自分の腕から軟体生物を抉りだした。それを床に投げ捨て、出来るだけ距離を置く。全身が汗でびっしょり濡れていた。
 将平は力尽きて、ゆっくりと睡(ねむ)るように目を閉じた。


 骨刀が鋭く空を切り裂いた。灰色猿は間一髪のところで骸の一太刀をかわしていた。恐るべき反射神経と身軽さだ。骸はさらに続けて宙に骨刀を何度か奔らせたが、猿に傷一つ負わせられていなかった。猿の方も骸に手出しできないようだが、このままでは埒(らち)が明かなかない。
 迅(はや)さでいえば互角であった。いや、むしろ灰色猿の方がわずかに迅いかもしれない。途中、未来の叫び声や将平の苦痛による喘ぎなどが聴こえたが、目の前の猿から目を離すことは出来なかった。確かに、想像していたとおり猿はそれほど強くなかった。しかし、骸が考えていたように簡単に斬り伏せられるような相手でもなかった。――これはなかなか梃子摺(てこず)りそうな相手だ。
 骨刀が宙を奔り、空を切り裂く。
 灰色の猿がそれを縦横無尽に避けてまわり、牙を剥き出しにして気を抜けば喉元を噛み千切ってやらんとばかりの形相だった。
 何か手はないのか――
 骸に焦りの色が浮かびあがってきた。彼を支える使命感はあくまで未来たちを護ることにある。敵を斃すことではない。少しでも目を離せば自分がやられるが、このまま未来たちを放っておくことも出来なかった。


 未来が倒れている将平に駆け寄り、軽く彼を揺するが反応はない。一瞬、嫌な予感に彼女の心臓が高鳴るが、どうやら息はしているようだ。彼は気を失っているだけだった。
 彼女は将平を抱きかかえながら、小刻みに震えていた。早く骸に戻ってきて欲しかった。ひとりでは心細い。新たな化け物が現れたときに、自分と将平を護り抜く自信がない。
 そう思った矢先、視界に黒い影が過ぎる。それは一瞬の黒い風のように、物凄い迅さで未来に接近してきた。




<作者のことば>
布団に包まって目を閉じながら妄想するとかなり はかどる。
かなり鮮明に映像として骸たちの映像が観えてきて、そこから俺は傍観者になる。あるいは視聴者に。

映像を観ながら、これをどう文章にしようとか、考える。
その工程が面白い。案外、ストーリーを考えるときより、文章を考えるときの方が好きだ。

俺は小説以外にも映画や音楽や漫画が好きなわけで、絵が描けたらなぁ、とか、映像撮れたらなぁ、とか、楽器やれたらなぁ、とか思うことも多々あるし、ここを視覚的あるいは聴覚的な表現が出来たらいいのに!と思うのは常々なのだけど、それでも文章を考えるのは楽しい。
最初は自分にやれるとしたら文章しかなかった、と思って始めたことだけど、今では文章というツールに魅せられていることに気付く。文章を書くのは面白い。

それなのにめちゃめちゃ下手なのはどういうことか(苦笑)

音楽も映像も、文章と同じように身近な存在だけど、扱うことに関してはたぶん文章が一番(誰にとっても)近いわけで、そういう意味ではハードル高い分野だよね。誰でも始められますから。今すぐにでも。
その中でも上手くなるってどういうことなのかなって思う。文章もやはり才能が要る。俺は文章を書くことがド下手でへこむ。国語も苦手教科だったし(…え? 得意なの? 何言ってるのかよくわかりませんなあ)。

書くことが楽しいって再認識して、そして下手だって再認識して、その次はどうしたらいいんだろうなぁ。

好きなものを貫くのだって案外難しいもんです。
好きなのに続けることが難しいのは不思議だけど。

ちなみに今回のBGM、布団に包まってるときは清 竜人で、イザ書くとなったらHydrovibe(ハイドロヴァイヴ)っていう海外のメタルバンドです。
ここらへんからの展開に、アグレッシヴでスピード感があって、骨太な音楽が凄くマッチしてると思うので、気になる人はCD借りたりして聴きながら読んでくれるとまた違った楽しみ方ができるかも。ハイドロヴァイヴは嬢メタル(女性Vo.のメタルバンド)なので、ムサ苦しくないですよ(笑)

……またこのコーナー長くなってしまった。


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