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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/11/18(木)   CATEGORY: MUKURO外伝
MUKURO外伝(31)
 街は廃墟の連なる荒地の様相を呈している。そこを骸たちは突き進んでいた。彼らが思いついた病院までの最短ルートで。
 未来は先ほどから後方に意識を張り巡らせていた。目的地へと歩き始めて早数時間、その間のほとんどをずっと付いてきている存在を気にしているのだ。それは灰色の猿のようだった。猿といってもそれなりの大きさがある。だが、他の化け物のように規格外というわけでもなかった。あくまで猿と呼べる範囲内の大きさである。決してゴリラのような巨躯ではない。人間の、小学生程度のサイズの体躯をしている。
 その猿は建物の屋根などを器用に伝って骸たちを追ってきていた。おそらく将平の血の匂いにでも惹かれてきたのだろう。その眼は求めるものと同じ、血のような赤であった。灰色の体毛の中に浮かぶ2つの赤い眼が彼らを狙っていた。
 未来は気にしていたが、骸はそれほどまで灰色の猿に意識を向けているようではなかった。猿は自分の力に自信がないのか、あるいは己と力と骸の力を正確に見極め、天秤に掛け、まともに闘っては自分では敵わないとわかっていて隙を窺っているように見える。それをわかっていて、骸は猿を大して問題視していなかった。最低限の注意さえしていれば、猿は自分たちを襲ってこないだろうという考えからだ。そして、出来るだけ戦闘は避けたかった。猿1匹だけなら苦戦もしないだろうが、もし途中で他の化け物が現れでもしたら未来や将平の命を危険にさらしてしまう。骸はそれだけを危惧していた。ただし、機会があれば始末しておこうという気持ちも確かに存在している。だが、それは急ぎではない。最優先すべきは、将平を病院に連れていって彼に適切な処置を受けさせることだった。
 空は、錆(にび)色に染まっていた。怪しげな雲が立ち込めている。どこか人の心を不安にさせる空模様だ。未来はずっと胸騒ぎがしてならない。何もなけれはいいけれど――…


 ***


 わずかに風が吹いていた。男の長髪が靡いている。眼窩の窪んだような双眸で、男は虚空を見つめている。だが、男が見ようとしているのは目の前の虚空ではない。まだ見えぬ彼の姿だった。男は彼が近付いているのを確かに感じ取っていた。彼はまだ男に気付いていないようだ。男はゆっくりと口元を歪ませ、にいっと笑った。
 2人はもうすぐ出遭う運命(さだめ)にある。
 その刻は着実に近付いていた。砂時計の落ちる砂のように、着実に。




<作者のことば>
これ、少し前に読んだ作品の影響受けてるなって思う。文章が。
個人的にちょっとした新しさとの邂逅だったから。こういう書き方もあったのか、と。

あと内容とは一切も合切も関係ないと思うけれど、この回を書いてたときにBGMは清 竜人です。
結構音楽に耳を傾けながら書いてたので、いちお。特に内容について何か影響受けた、とかじゃない(と思う)けど。

余談:少し前に「一切合切」と「一切合財」ってどちらが正しいとかあるのだろうか?と思って調べてみたら、どちらが間違いということではないらしい。…が、説明に『一切と合切を重ねて意味を強めた語』とあって、だったらどちらかというと「一切合切」が正解なのかな、と思った。じゃあ「合財」ってどこから来たんでしょうね。


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