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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2008/05/30(金)   CATEGORY: 爆音デイズ
爆音デイズ(1)
 その重々しい防音の扉を開けると、そこには相変わらずの薄暗くせま苦しい世界が広がっていた。そして鳴り響く爆音。
奥にそびえるステージの上には4人の男たち。ギターとベースは掻き鳴らされ、ドラムは激しく叩かれている。そしてヴォーカルは高く声をあげている。その中でも一際(ひときわ)目立つ、真っ赤な髪をタテガミのように立ち上げている男の名は村上龍次。このバンドのベーシストだ。

 Lucyのライヴにあるのは爆音、歓声、カリスマ性。
 歌詞がいいとか、メロディーがどうとかじゃない。僕には音楽の上手い下手なんてわからないけど、彼らの音楽は、ズン、と心に響く。とにかく理屈とかそういうのを超えた凄さが彼ら――Lucy――にはある。

 あっという間に数曲が終わり、彼らはステージ上から去っていった。それと同時に交代で別のバンドが現れ、演奏を始めた。けど、彼らもLucyのあとではレヴェルの違いがありすぎるよな、と僕は思った。その場にいた誰もがそう思ったんじゃないだろうか。
「よう、来てたのか」
 ステージ上のバンドが3曲目に入ろうとしていたところで龍次が声をかけてきた。
「だって来るって言ったろ?」
 龍次は着ているTシャツで額(ひたい)に流れる汗を拭った。
「それに来いって言ったのは龍次じゃないか」
 僕がそう言うと、そうだったな、と龍次は軽く笑った。
「ライヴ、どうだった?」
「よかったよ。カッコよかった」
 それを聞いた龍次は当たり前だろ? と言いたげな表情をした。彼はいつも自信満々。たまに自意識過剰だ。
「これからメシ食いに行こうかと思ってるんだけど、お前はどうする?」
「それっておごり?」欲を出す僕。
「シンのな」それを他人に押し付ける龍次。
 時間も遅いということもあって、僕は龍次の誘いを断って帰ることにした。
 ライヴハウスから出ると蒸されるような熱気から開放され、涼しい風が心地よかった。外はもう暗かったけれど、僕は帰りにCDショップに寄ることにした。そして、結局のところCDがずらりと並ぶ店内で1時間近くも入り浸ってしまった。どうにもCDショップに入ると長くなってしまう。
 この日、僕が買ったのはポップなナンバーを歌う3ピースのガールズバンドのミニアルバム。ジャケ買い。

***

 申し遅れたけれど、僕の名前は加藤 義之。とある田舎のとある高校に通う2年生。17歳。
 メガネをかけているせいか頭がいいと見られがちなのだけれど、決してそんなことはない。僕の通う高校を見てもらえばわかると思うんだけど、我が校の生徒たちは俗にいう不良で、バカで、びっくりするほど偏差値が低い。
そんな学校に通う僕ももちろんその程度の学力の持ち主であるし、だからさっきも言ったように決して頭がいいなんてことはない。
 我が校が誇るのはその偏差値の低さだけではなく、毎年学年から20人も30人も辞めていっているのに近隣の高校より断然多いという生徒数。つまるところ、いわゆるマンモス校だったりする。バカなだけじゃなく、数も多いからやっかいなのだ。

 素晴らしいほどバカが揃ったこの高校の中ですら問題児と称されるのはLucyのベーシストである村上 龍次。まあ、彼のあの燃え盛るような真っ赤な髪を見てもらえば、彼が問題児だということは一目瞭然だと思う。きっと誰もに頷いてもらえるんじゃないだろうか。
 人を髪の色で判断しろとは言わないけれど、やっぱり彼は別。正真正銘、見た目通りなのだ。

 教室のドアが開いた。誰かが入ってくる。僕はそちらに目をやって、入ってきたのが龍次だということに気付いた。
「次のライヴが決まったぜ」
 意気揚々とした口調で龍次は言った。
「へえー、いつなの?」
「再来週」
 再来週、再来週か。
 僕が「たぶん行く」と龍次に伝えると、彼は自分の教室に帰っていった。その姿はどうにも眠そうだ。たぶんさっきまで寝ていたんだと予想。彼が「ふぁあ」とあくびをしたのが見えた。


(...to be continued)


<作者のことば>
実は一番最初に書いた小説っていうのがこれです。
いわゆる処女作?(笑)

自分では気に入ってるんですが、文章が粗かったりするのが目立ちますね。

…今後、精進していきます(笑)
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