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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/08/16(月)   CATEGORY: MUKURO外伝
MUKURO外伝(18)
 悲鳴が轟いている。絶叫が響き渡る。青白き顔が血の涙を流しながら苦痛に顔を歪めていた。痛いよう痛いようと聴こえてきそうだった。それらはおんおんと泣き続けていた。
 落ちた頭は憤怒の形相で骸を睨みつけ、その口から伸びている腕たちが床にべたりと手を這わせた。ズズ、ズズズ。無数の手がイノシシの頭を引きずりながら這ってきている。ズズズズ。ズズ。恐ろしい光景だ。まさに地獄! まさに魔界! この世は邪悪な世界に呑み込まれてしまったに違いないと誰もが思うだろう光景。
 骸の背後に気配があった。巨大ムカデが、彼に突進してきていた。跳躍。ムカデは突進を避けた骸を追尾する。骸が骨刀を構えた。液状のものがムカデの口から吐き出される。――溶解液だ。
 骸はそれを飛び退いてかわす。床がジュッという音をたてて溶け出した。異臭が立ち込める。素早い動きでムカデの背後をとり、骨刀を振りかぶる――が、そこでムカデの頭がぐるりと向きを変えた。再び溶解液。今度はイノシシの胴体にかかり、ズブズブとそれは溶けて崩れ落ちた。
 イノシシの頭の切断面から触手がうようよ這い出してきて、束になる。それは脚の役割を務め、イノシシの頭は2足で立ち上がった。口からは無数の青白い腕。それが海藻のようにゆらめくように動いている。あたかも手招きしているように見えなくもない。
 2対1。分が悪いが、闘うしかない。骸は両脚に力を込めて疾駆する。
 黒い触手の脚にイノシシの頭、その口からは無数の青白い腕という異形のノスフェラトゥ(不死者)は拙い足取りで骸に向かっていく。ムカデは半分になった躰を器用に動かして骸を追いかける。舌打ちが出そうだった。勝てるだろうか。
 追いかけてくる巨大ムカデを迎え撃とうと骸は構えた。溶解液が吐き出される。それを避けようとしたとき、どこから現れたのか人面蜂が骸の背後を取り、彼にしがみついた。全身に溶解液が浴びせられる。半溶けの人面蜂が地に落ちた。骸もいたるところが溶け出して思わず膝を尽いてしまう。
 ここぞとばかりに巨大ムカデは骸に突進した。グロテスクな牙が彼の躰を貫く。脆くなっている躰は簡単に千切れてしまいそうだった。だが、そうなる前に渾身の力を込めて骸は骨刀をムカデの頭に突き刺す。ムカデは痛みに暴れ、骸の躰は床に叩きつけられた。
 あたり構わず溶解液が舞った。それをほうほうの体で骸は避ける。だが、イノシシの頭には溶解液がかかり、どろりと皮が溶け出した。
 のそり、のそり。ゆっくりした歩調で異形のイノシシが進む。顔は半分溶けている。その姿はまさに化け物のゾンビノスフェラトゥ。ムカデがその足元に近寄った。すると――
 イノシシの触手がムカデの頭にしゅるしゅるの巻きつき始めたではないか!
 そして2体の化け物は一つになった――
 巨大なムカデの胴を持ち、頭は眼のないイノシシ。その口からは無数の青白い腕が這い出し、蠢いている。醜悪な姿だ。あまりにも、醜悪すぎる。
 グオオオオオオオオ!!
 化け物が雄叫びをあげた。ギチギチとムカデの脚が動いている。
 骸が地面を蹴った。
 俊敏な動きでムカデの脚を斬り落とし、その機動力を奪っていく。
 化け物は抵抗するように体を暴れさせた。だが、骸には通用しない。さらに脚が削ぎ落とされる。
 ギィエエエエエエエエエエエエエエ!!
 化け物が奇怪な叫びをあげた。その体がボコボコと動いている。まるで内部で何かが暴れまわっているようである。
 突如、化け物の体から何かが突き出した。――腕のようである。
 口から這い出しているのと同じような青白い腕が、化け物の胴体を突き破って現れた。
 また一本腕が現れた。そしてまた一本。
 それらは失った脚の代わりのようだった。人間の腕を持ったムカデの胴体。なんとも気味が悪い。化け物はより醜悪な姿にカタチを変えた。そして、より邪悪な姿に。
 思わず、骸は後ずさった。このノスフェラトゥはどうやったら倒せるのだろうか、見当もつかなかった。
 彼は意を決する。溶解液で脆くなっていた躰はもはやほとんど元通りになっていた。尋常ならざる治癒力だ。――いや、それは治癒というよりは復元だった。他にあてがわれていたエネルギーで失われた部分を補っている。純粋なエネルギー体の彼は、傷付くという概念が人間のものとは違っているのだ。
 残った力を使って彼は、跳んだ。
 大きな跳躍。振り上げられた骨刀がイノシシ頭に突き刺さる。
 そのまま、彼は化け物の背中を走った。
 切っ先が化け物の体を縦一文字に切り裂いていく。
 頭から尾の先までばっさりと両断された。
 醜き化け物ノスフェラトゥはついに力果て、その場に倒れた。




<作者のことば>
なんだかルビ振りたいときってあるよね。
()内がカバーしている範囲が1単語とは限らないときが、特に。

それはともかく、そろそろ停滞しそうな予感。
一応、やれるだけ頑張ります。。


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