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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/08/12(木)   CATEGORY: MUKURO外伝
MUKURO外伝(16)
 異形のイノシシ――といってもその姿にイノシシを思わせる部分は、もはやわずかしかなかったが――が挑発するように咆哮をあげ、闇に通じる双眸で骸を睨めつける。
 力強く跳躍した骸は宙で骨刀を振りかぶり、イノシシの頭を狙った。が、イノシシの口から大量の黒き触手が吐き出され、それが束になって骸に向かった。骸はそれを薙ぎ払う。
 頭部への一撃に失敗した骸は着地と同時に転げるように左に移り、立ち上がりとともに駆け出した。向かう先にはイノシシの胴体がある。背中から立ち上がる触手は、最初はピンク色をしていたはずだが、今は首や頭から吐き出されるように伸びている触手と同じように根元から黒く変色を始めていた。それは始めとは全く違う姿に変態を遂げようとしているかのようだ。
 異形のイノシシに向かって一直線に駆ける骸は、複数の影が素早い動きで自分に接近してくることに気が付いた。空を飛ぶそれは、人の顔を持った巨大な蜂である。大きな羽音を立てながら骸に近付いていて、尾の鋭い毒針が彼に向けられている。
 その接近速度は速く、人面蜂はもうすぐそこまで来ていた。
 瞬時の判断で、後ろに飛び退く。
 目の前を毒針がかすめていった。
 骨刀を振るう。
 その刃が完全に人面蜂を捉えた。
 叩きつけられるように、両断される。
 続けざまに、斬った。
 あっという間に数匹の人面蜂が地に臥せた。
 彼は再びイノシシに目を向ける。
 間の前に、イノシシの顔があった。
 驚く間もなくその大きな口が開かれる。
 骸は後ろに跳ぼうとしたが、それより早くイノシシの口から腕が伸びた。
 人の腕だった。
 細く、白い腕。
 それがイノシシの口から伸びている。
 その手が骸の腕を掴んだ。
 温度が感じられないそれは、死者の手を思わせる。
 次の瞬間、背後に気配を感じた。
 彼が振り向くのとほぼ同時に、巨大ムカデから溶解液が吐き出される。
 それが左腕にかかった。
 異臭が放たれ、それが自分の腕が溶けている臭いだと骸は気付く。
 死者の手を振り解こうとしたが、がっしりと掴まれたそれはなかなか離れない。それどころが、イノシシの口からは次々と白い腕が伸びてきた。
 骸は渾身の力で逃れようとした。だが、彼を呑み込むように黒い触手の束が襲いかかる。
 身動きがとれなかった。
 必死にもがくが、そうすればそうするほど触手は絡んでくるように思え、一向に解放される気配はない。
 巨大ムカデの溶解液が再び骸を襲った。
 しかし、すでに骸はそのほとんどを触手に呑み込まれてしまっていて、溶解液はイノシシの触手にかかった。どろり、と触手が溶けていく。黒い液になって床を伝った。
 その一瞬を見計らって骸は触手の群れから飛び出した。イノシシの頭を蹴りつけ、跳ぶ。新たな触手が襲ってくるより先に宙を舞った。
 足が地面に着くと同時にムカデの胴を両断したため、体液を散らしながらムカデが暴れまわる。その長さはほぼ半分になっていた。
 そのとき、イノシシの首と成った触手の束からぼこんと何かが現れた。



<作者のことば>
最低限のことだけ決めて(時には本当に何も決めないで)書き始めてしまうスタイルを採っているせいか、あまりプロットとか練ったことがなく、こういうのはどうだろう?というアイディアも書いてる途中に忘れてしまってることが多い。
書いたあとになって、ああ、そういえばここはこうしたかったんだった!などと思うのだが、加筆や修正をするのはなかなか骨が折れる作業なのであまりしない。
すでにあるものに何かを加えるというのは、思いのほか大変だったりする。無理に加えてバランスがおかしくなることは多々あるし、だから加筆するには全体を変えなくてはいけないかもしれないというifを前提に行わなければならないのである。それが面倒で、あまりしない。

つまり何が言いたいかというと、イノシシの口から腕が伸びてくるシーン。
あれは弘之が襲われるときに使おうと思っていたアイディアだったのだが、書くの忘れてたので違うところで使ってみた。

しかし、もはやヴィジュアル的にはイノシシではなくなってしまったこいつをイノシシと呼ぶには抵抗があるね。出てくる化け物たちには基本的に名前がないので困る。
べヒモスのように勝手に命名してしまえれば楽なのだけれど、イノシシから浮かぶ名前が特にない。

何かこのあたりをスムーズに運べる画期的なアイディアがあればいいんだけどなー、浮かびませんね。

それにしても外伝、予想外の展開になりつつある。
まさかあのイノシシがボス的ポジションに就くとは思いもしませんでした。

それと同時に延びてるぞ、外伝。
いつ終わるんだろうな~と思いつつ、続きを書くことにしよう。


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