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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/08/08(日)   CATEGORY: MUKURO外伝
MUKURO外伝(14)
 顔面を斬られた巨大ムカデは、もがき苦しむように躰をくねらせ、暴れた。緑色の体液が飛び散る。
 骸と名乗った男を前にして、未来は判断に迷っていた。――この男は味方なのだろうか?
 腕の皮膚を貫き、そこから骨で出来ているらしい剣を取り出したこの男は、おそらく人間ではない。そのことだけは明白だった。しかし、敵というには違和感がある。なにしろ自分たちを窮地から救ってくれた上に、「逃げろ」と言っているのだ。ならば味方か? 本当に信用していいものだろうか。
 だが、今の未来には逃げるほか途(みち)はなかった。弘之に肩を貸して走り出す。骸はそれをただ眺めているだけだった。
 急いで出口に向かっていた未来たちだが、その途中で思わぬものと遭遇する。
 それは――イノシシのようだった。
 イノシシの体躯に、フジツボのようなものがびっしりとついており、そこからピンクの触手がまるでイソギンチャクのように伸び、うねっていた。そして猪の双眸は空である。何もなかった。眼球はなく、穴だけがそこにあった。ただ闇だけが未来たちを見つめていた。
 異形のイノシシが突進した。
 ふたりは逃げる間もなく、イノシシの牙は弘之の腹部を捉えていた。皮膚は破れ、肉は裂かれ、牙は内臓にまで達している。夥(おびただ)しい量の血がその場に溢れた。
 フジツボから伸びたピンクの触手が弘之の体に触れ、傷口に集中する。まるで血を啜っているかのようだった。触手の刺激に弘之は呻いた。
 遅れて、未来の悲鳴がこだまする。
 次の瞬間、
 血が飛沫をあげた。
 イノシシの頭がずり落ちる。
 骸の剣がイノシシを首から一刀両断したのだ。
 しかし躰の触手はまだ動いている。
 頭を失っても、生きている。
 骸が、
 その躰を蹴り飛ばす。
 弘之に突き刺さった牙を引き抜いた。
「早く行け」
 その言葉が発せられてから数秒後に未来は疾駆する。
 弘之は、未来に引きずられるように疾駆(はし)った。
 血が溢れる。
 ドバドバと、
 腹から溢れていた。
 ――自分は死ぬのだろうか。
 弘之は己の死を意識した。
 だが、疾駆(はし)っている。
 ――なぜ?
 それは生きるためだ。
 本能が、生きたがっているからだ。
 死にたくはなかった。
 死が、すぐそこまで来ているのがわかる。
 死ぬのは、怖い。
 生きたかった。
 だから疾駆(はし)った。
 血を垂れ流しながらも、彼は疾駆(はし)った。
 内臓が傷付いている。
 痛みは限度を超えて、もはや感覚が正常に機能していなかった。
 そんな満身創痍の肉体で、彼は生きようとした。
 階段を上り、辿り着いたドアを開ける。
 そこは屋上だった。
 これ以上、逃げるところはない。
 弘之の意識が、そこで途切れた。




<作者のことば>
今回の、この展開は書いていてちょっと予想外。
漠然にも、イメージしていたものと若干違ってきている。

へぇ~ そう書くんだ自分。

みたいな気分(笑)
これだから書くのは面白い。自分でも、どうなるのかわからない。

書くまでは常に、未知。

もっと上手く、もっと巧く、そのように書きたい。
語彙が足りない。表現の方法が足りない。想像力だって、足りてない。

いろいろ足りてなくて、上手くなりてぇなぁ、と思う。

書くなら、面白いものを書きたい。
もっともっと面白いものを書ければ、と思う。

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