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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/06/29(火)   CATEGORY: 短篇小説
櫻宮家の呪い(3)
 風の音が聴こえる。目が覚めてしまったが、窓を覗くとあたりはまだ暗く夜中のようだった。
 月明かりが櫻宮邸の庭を照らしていた。

 桜の木々が見えた。

 そのうちの一際大きな一本。とても、紅い、花弁。
 私はその血のような色に恐ろしさすら感じる。あまりにも、紅過ぎる。月の光がそれを引き立てるようだった。妖艶に彩られる桜。

 ふと、人影に気付いた。

 四郎だった。
 彼はその紅い桜の樹の下に立っていた。

 ――どうしたのだろう?

 私はそっと部屋を脱け出した。
 


 ***


 紅い花弁が舞っていた。それは血の雪のようだった。ひらひらと舞う、紅。
 その紅い桜を神堂 四郎は眺めていた。その紅さの根源を問うかのように、見つめている。その目はどこか哀しげだった。風が彼の髪を靡かせる。

「こんなところにいましたの。」

 声をかけられて、彼は振り向く。
 そこにあるのは、そこに居るのは、櫻宮 一葉の姿。この屋敷の主。

「母の行方、わかりそうですか?」

 一呼吸置いてから、四郎は云う。

「ええ。」

 一葉には、驚いた様子はなかった。

「そうですか。それで、母はどこに?」
「お会いになりたいですか。」
「できれば。」
「お母様は、貴女の目の前に。」
「そこには貴方しかいませんけれど。」
「僕の、その先です。」

 彼女は、四郎を越えて一本の桜の樹を見遣った。

「桜があります。」
「ええ。」
「そこに母が?」
「おそらく。」
「紅い桜は、その根が血を吸ったからだという話がありましたね。」
「綺麗な桜の下には死体が埋まっているという話です。」
「でも、その桜は私が物心をついたときからすでにそのような紅さでした。」
「あるいは、そうなのかもしれません。」
「母はもう生きてはいないんですね。」
「そうなのでしょうね。」

 沈黙。
 風が凪いだ。血の雪が、わずかに止む。

「教えてくれませんか。貴女がお母様を殺した理由を」




<作者のことば>
たぶん、当初の予定ではもっとミステリーチックな展開にしたかったんだと思うが、数年前の俺の意向など現在の俺には関係ない。もう一気に解決編にいかせてもらう(笑)

「あやかし堂」のシリーズはこれまで数本短い話を書いているが、当時の俺はシリーズ初の長編を意識していたと思う。なので多少複雑に遠回しに展開させてかったのではないかと想像できる。

だけど現在の俺は出来るだけ短く収めたいと思ってしまい、もう過去vs.現在みたな構図になっていて、正直展開が滅茶苦茶だ。
実は途中までの文章を放棄してリライトしてしまった方がいいとは思ったのだが、ぶっちゃけそれってかなりだるい作業なので過去の文章に続けて書いた。

これは過去の清算。いつも以上に自分本位。
なんとなく、これを書ききらなきゃ次にいけない気がしてしまった。ただそれだけ。


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