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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/07/21(水)   CATEGORY: MUKURO外伝
MUKURO外伝(5)
 男が倒れている。アスファルトの上だ。
 男の頸(くび)で蠢くものがあった。それはノミのようであった。しかし大きい。手のひらサイズはある。
 そのノミがヂュヂュヂュヂュと男の血液(なかみ)を吸っていた。吸い上げた分だけ膨れ、ノミはさらに大きく変化していく。ヂュヂュヂュヂュヂュ。
 そのような光景を横目に高儀 未来は走っている。行くあては本人も知れない。ただ闇雲に、ひたすらに走っていた。幼馴染みである佐々木 弘之と共に。
 街は変貌を遂げていた。昨日までとはだいぶ様変わりしている。もはや平和は喪失(うしな)われた。当たり前だった日常はもう、ない。どこにも存在しない。あるには魑魅魍魎が蔓延る魔界のみ。平穏な街は地獄にも似た暗黒立ち込める魔街へと変貌を遂げていた。
 すでにかつての住人は虐げられている。新たな、魔界の住人によって。居場所はどこにもなくなっている。かつての住人はもう逃げるほか手立てはない。――だから未来と弘之は走っていた。逃げていた。異形の魔物から逃走(にげ)ていた。
 ジュワッという音が聴こえた。続く異臭。ひどく臭い。目の前では若い女性が半透明の液体に襲われていた。ドロドロしている。アメーバのようなジェル状の生物だ。洟水のようにも見える。実に気色が悪い。
 巨大なアメーバに全身を包み込まれた女性は断末魔の悲鳴をあげながら溶けていった。顔が爛(ただ)れたかのように見えた次の瞬間には眼球がどろりとその両の穴から這い出す。あっという間に肉はドロドロになり、アメーバの一部が赤く染まった。ほぼ骨だけになった女性の姿が血霞の彼方に消えていく。
 思わず未来は目を背ける。弘之も苦虫を噛み潰したような表情を見せたが、気を強く持って未来の手を引っ張った。しかし地獄は続く。
 ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴンンン――…
 羽音が聴こえる。おそらく蟲の。――だが、どこから?
 空は黒く覆われていた。大量の蟲。それは馴染みのある生き物。その鋭い細長い口吻はおぞましい。ただサイズだけは規格外。体長1メートルはあろうかという、蚊。
 何百という巨大な蚊が空から飛来してきていた。それは明らかに未来たちに近付いている。あるいは、未来たちを目標に定めている。2人は狙われていた。
 次々と現われる魔界の怪蟲に未来と弘之が感じることが出来るのは恐怖のみ!――2人は血の気が引いてその顔は蒼白! 出来る行動は逃げるしかない!
 自然と速度が上げながら2人は走る。疾駆(はし)る。どこに向かって? わからない。助かる希望(のぞみ)は? わからない。だが走るしかなかった。逃げるしかなかった。そうしなければ何もかもが終わるのだ。その生命に終止符が打たれることになる。だから2人は走った。一心不乱に疾駆(はし)った。
 ただ助かることを信じて。ただ生き延びることを目的に。




<作者のことば>
実に文章は変化している。進化でもなく、退化でもなく。ただ変化している。
ある部分は退化して、ある部分が進化するということは適応する上で至極当然のことだろうと思う。

全てを得ることは出来ない。
常に何かを犠牲にして、何かを得なければならない。

あるいはその変化のことを進化というのかもしれないが。
小さな部位の変化ではなく、全体として適応することが進化。つまり生き抜くことが進化。

実に文章は変化している。

それを感じる。
文章の変容は当然あり得る。文章は常に変化している。他から影響を受け、もしくは内部の変化に伴い、文章は変化を続ける。それは書いていれば当然のことだと思うし、避けられないことでもあると思う。

ただ願わくば全体としての進化でありたい。

文章にとっての進化とは?
それはもちろんより容易に、よりわかりやすく、より引き込むように、より面白く、内容を伝えること。

自分の文章は常に変化しているが、それが皆様へと物語を届ける役に立つ変化であればこれ以上望むものはない。


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