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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/12/22(水)   CATEGORY: MUKURO・煉獄篇
MUKURO・煉獄篇‐1 (序章:終わりのはじまり)
 朝の通勤ラッシュに揉まれながら猪瀬 諒は吊り革を掴み、高速で移動する電車に揺られていた。目の前の窓から見える景色は流れるように変わっていく。
 連日の疲れが取れておらず、猪瀬は立ったままでも眠ってしまいたかった。だが、自分が手掛けている仕事にとって、今はとても重要な時期だった。当然のように帰りも遅くなり、しかし出社時間は変わらない。疲れだけが溜まっていくような日々である。
 快晴の、澄み渡った空で太陽が自由気ままにといった様子で地上を照りつけていた。外に比べればまだましだが、車内も相当に暑い。窓ガラスを通過する陽光。密集した人間の体温。無数の呼吸が、二酸化炭素の密度を増やしている。
 シャツには汗が滲み、滴(しずく)がツーと背に一筋流れていく。
 景色はまだ流れている。目的駅まではまだしばらくあった。
 不意に、猪瀬の感覚がわずかな震動を捉えた。躰を包み込むような違和感。それは電車の揺れとは違っていた。瞬間、大きな力が車両を揺する。今度はより明瞭(はっきり)、誰もが揺れに気付いた。――地震だ。
 大きな揺れに耐えきれず、思わず倒れそうになる人たち。しかしぎゅうぎゅうに詰められた車内ではそれも出来ない。場はかなりの押し合いになった。
 アナウンスが流れ、電車は一時停止した。
 激震が車両を襲う。――吊り革を掴む、猪瀬の両手に力が籠もった。
 その地震は数分続き、そののち突如として止んだ。
 猪瀬は瞑っていた目を開けて、車窓から周りの様子を窺った。地震の強さの割には、目に見えるような被害はない。彼は安堵の息を吐きながら、全身の力が抜けていくのを感じた。
 車内では何人かが押し倒されて、ところによっては積み重なるようになっている。どこからか呻き声が聞こえた。
 ふと、遠くに見える大きなタワーの存在に猪瀬は気付き、とある疑問が浮かび上がる。あんなところにあのような巨大なタワーがあっただろうか? その高さは天に届くかのようで、頂上が見えない。
 急に夜が来たかのように、一転して外は闇に包まれた。闇というよりも、黒に。車窓から先にあるのは、ただの漆黒。まるで世界が黒に塗りつぶされたかのような感覚だ。
 何が起きたのかわからず、猪瀬は混乱した。車内でもいくつものどよめきが生まれている。
「一体、何が……」
 思わず漏れた呟きの次の瞬間、猪瀬の目の前に恐ろしいものが現れた。
 黒い闇の中に、一つの大きな眼が浮かんでいた。それが窓ガラスに張り付いている。彼は思わずたじろいだ。
 ギョロリとしたその眼は車内を物色するかのようにせわしなく動いた。
 誰かの悲鳴が車内に響(こだま)した。



<作者のことば>
ついに始まりました煉獄篇。
最初は天上篇にしようと考えていたのだけれど、結局 煉獄篇に決定。

サブタイトルも「悪夢の始まり」だったのが「終わりのはじまり」に変更。
最初「終わりの始まり」って打ってみて、なんか字面が気に喰わないな、と思い「おわりのはじまり」に変えてみたら結構好きだったんだけど(ちょっと童話っぽいかな、とも思ったんだけど、あえてそれがいいかな、とも)、「終」って感じは使いたくないか? と悩み。「終わりのはじまり」に決定。

ちなみに「諒」って「まこと」です!! 特に重要キャラでもないから読み放っておいたけど!!(笑)

では、煉獄篇をお楽しみ頂けましたら幸い。
出来るだけ最後までお付き合い頂けますよう、面白いものを書いていきたい所存です。

匡介でした。

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