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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2008/07/15(火)   CATEGORY: 雨の日のうた
雨の日のうた(6)
 金曜日の放課後。俺は可南子と一緒にCDショップへと向かった。可南子が俺の聴くようなバンドの音楽に興味があるらしい。向かった先は駅の近くにある昔っからのCDショップ。それなりに大きくて品揃えも充分。
「いらっしゃいませー」
 入口のドアを通ると聞き慣れた声が聞こえた。俺はあえて声の主を見ないようにして店内へ入った。
「うわー、CDいっぱいだね」
可南子ははしゃいだ。あまりCDなんて買わない人生だったようだ。だからといって音楽と無縁だったとは断言できない。ラジオだってあるし、音楽は好きだけどCDを買わない人かも。そう願いたい。カラオケでもたくさん歌ってたし。
「可南子、めったにCDなんて買わないからあんまりCD屋さんには来たことないんだよね」
 じゃあ、やっぱりラジオ派だ。
「てゆーか、音楽もあんまり聴かないんだけどねっ」
 俺のささやかな期待は裏切られた。まさか可南子が本当に音楽と無縁の人生を歩んできていたとは!! 音楽が無縁の人生なんて考えられない俺としては驚愕の事実。俺なんて音楽と人生を歩んできたようなもんなのに。
「じゃあ、カラオケで歌ってたのは?」
 俺はおそるおそる訊いてみた。
「あれはお母さんが持ってるCDに入ってた曲!」
 どおりで選曲が古いわけだ。納得。カラオケのときに軽くジェネレーションギャップを感じていたのもこれで頷けるわけだ。
「最近の曲は?」
「すこしは知ってるけど、あんまりわかんないかなぁ?」
 大変だ! 俺の好きな曲より最近の曲を聴かせよう!(それでも俺の好きな曲なんだけれども)。俺は店に入ってすぐのところにある新譜コーナーに足を運んだ。
「お探しのCDはおありでしょうか?」
 すっかり忘れていたこの声の人物。
「……」つい黙る俺。
「龍次?」と可南子。
 声の主は俺の背後に立っていた。思い切って俺は振り返った。
「なんでここにいるんだよ、シン」
 振り返った先にはやはりシンの姿。相変わらずにこやかな笑顔。しかもシンはこのCDショップの店員と同じ格好をしている。
「実はここでもバイトしてるんだよね」
 シンは笑顔で可南子を見た。
「こんにちは。お嬢さんは龍次の彼女?」
「うるさいって、シン!」
「別に怒らなくてもいいでしょう?」と可南子は言った。「こんにちは。松本可南子です」
「可南子ちゃん、ね。覚えとくね」
 そう言ってシンは視線を可南子から俺に戻した。
「なんで新しい彼女が出来たのに教えてくれないの?」
「なんで教えなきゃいけないの?」と俺が返す。
「冷たいなぁ。聞いた? 可南子ちゃん。このとおり龍次は冷たい人なんだよ?」
 シンがそう言うと可南子はけらけらと笑った。
「でも優しいとこもあるんですよー」
「どんなところ?」
「実はですね…」
 そうやって可南子は俺と初めて出逢ったときのことを話し始めた。俺と一緒の傘で帰ったあの日のことを。可南子はとても楽しそうに話した。俺はというと、やめてくれ、って感じでその話を聞いていた。シンがにやにやしているのが見なくてもわかる。表ではいつもにこにこしてて気の良さそうな人間だけど、裏ではケン同様に意地悪いやつ。というか俺をいじめるのが好きなように思える。それもケンと同じ。
「龍次ってば優しいねぇ」
 シンは一層にっこりと笑いながら言った。心の奥では、きみにもそんな一面があったんだね、と言っているはずだ。
「可南子。その口をふさぐ方法ってあると思う?」


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