雨の日のうた(5)
真理子の会ってほしい人というのは男だった。でも彼氏ではない。だから俺はお父さん役をやらずに済んだ。まあ、やるとも思ってなかったけれど。
男の名前は西条ミツル。真理子の弟の友達らしい。仲間からはミッツなんて呼ばれてるそうだ。でも俺はそう呼ばないし、どうでもいいハナシ。でも彼の話は興味深いものだった。「一緒にバンド組まないか?」。不本意ながら俺はすこしだけ興奮してしまった。
「俺はもちろんベース?」
西条はにこやかに答えた。
「ああ」
「お前は?」
「ドラム」
「他のメンバーは?」
「ギターはもう決まってる。ヨシキってやつだ」
ヨシキ? どっかで聞いたことある名前。たしか去年の夏に俺がケンカでボコボコにしたやつもそんな名前だった気がする。
「ヴォーカルは?」
すこしの沈黙。そして西条は言いにくそうに言った。
「できれば、ヴォーカルも龍次君にお願いしたいんだ」
衝撃が奔った。え? 俺ですか? って感じ。
それからどうしたかって? 俺は新たにバンドを組んだ。俺はベース兼ヴォーカル。バンド名はFIRE-HEAD(炎頭)。つまり俺のこと。俺がヴォーカルまでやるんだから、これくらいは立ててもらわなくちゃ困るっていうハナシ。
+++
俺がバンドを組むって話をしたら可南子ははしゃいだ。何がそんなに嬉しいんだ?
「龍次がヴォーカルもやるの?」
「ああ」
不本意ながら、ね。
「楽しみだなー」
「なにが?」
「龍次の歌が聴けるのが!」
「俺はベーシストなんだけど」
「だってベースもやるんでしょ? だったらいいじゃん!」
どうやら可南子は俺がヴォーカルをやることに大いに賛成のようだ。
「いつやるの?」
「え? なにを?」
可南子は思いっきりの笑みを浮かべて言った。
「ライヴ!!」
ライヴだって? まだメンバーと顔合わせもしてないのに?
やれやれって感じだった。ライヴに出るためにどれだけ練習をすると思ってるんだ。出来立てのバンドだったらなおさらだ。ああ、それにしても練習するにも金がいる。バイトしないといけないな、と俺は思った。
男の名前は西条ミツル。真理子の弟の友達らしい。仲間からはミッツなんて呼ばれてるそうだ。でも俺はそう呼ばないし、どうでもいいハナシ。でも彼の話は興味深いものだった。「一緒にバンド組まないか?」。不本意ながら俺はすこしだけ興奮してしまった。
「俺はもちろんベース?」
西条はにこやかに答えた。
「ああ」
「お前は?」
「ドラム」
「他のメンバーは?」
「ギターはもう決まってる。ヨシキってやつだ」
ヨシキ? どっかで聞いたことある名前。たしか去年の夏に俺がケンカでボコボコにしたやつもそんな名前だった気がする。
「ヴォーカルは?」
すこしの沈黙。そして西条は言いにくそうに言った。
「できれば、ヴォーカルも龍次君にお願いしたいんだ」
衝撃が奔った。え? 俺ですか? って感じ。
それからどうしたかって? 俺は新たにバンドを組んだ。俺はベース兼ヴォーカル。バンド名はFIRE-HEAD(炎頭)。つまり俺のこと。俺がヴォーカルまでやるんだから、これくらいは立ててもらわなくちゃ困るっていうハナシ。
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俺がバンドを組むって話をしたら可南子ははしゃいだ。何がそんなに嬉しいんだ?
「龍次がヴォーカルもやるの?」
「ああ」
不本意ながら、ね。
「楽しみだなー」
「なにが?」
「龍次の歌が聴けるのが!」
「俺はベーシストなんだけど」
「だってベースもやるんでしょ? だったらいいじゃん!」
どうやら可南子は俺がヴォーカルをやることに大いに賛成のようだ。
「いつやるの?」
「え? なにを?」
可南子は思いっきりの笑みを浮かべて言った。
「ライヴ!!」
ライヴだって? まだメンバーと顔合わせもしてないのに?
やれやれって感じだった。ライヴに出るためにどれだけ練習をすると思ってるんだ。出来立てのバンドだったらなおさらだ。ああ、それにしても練習するにも金がいる。バイトしないといけないな、と俺は思った。
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