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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/04/02(金)   CATEGORY: MUKURO・地獄篇
MUKURO・地獄篇‐27 (魔境)
 床に落ちた工藤の背中はまるで空洞だった。中にはクワガタやカミキリムシを思わせる昆虫らしき生き物が這っていて、ネチャネチャと肉や内臓を喰らっているようだった。
「うわっ! なんだこりゃ!」
 舘岡が驚きのあまり飛び退いた。
 ヴヴヴヴ、と羽音を鳴らせてその蟲は宙を飛んだ。サイズは普通だが、工藤を殺した人喰い蟲である。一同は慌てて部屋から出た。
「もうここもやばいらしい。早く逃げないと!」
 そう叫んだのは伊能だった。彼はずれた眼鏡にも構わず、この場を逃げようと走り出した。
「伊能さん、早っ」
 それを見て最年長の立脇も駆け出した。「早くこの場を立ち去った方がいい」
 残った人間もそれに続いた。石平はもう力果てそうだったが、詩帆がどうにか支えてやった。スピードは遅くなるが仕方がない。
「あ、食糧は車にも少しは積んであるんで大丈夫っす」
 何ともずれた発言だと詩帆は思ったが、どうやら彼らにも車はあるらしい。この人数はさすがにランドクルーザー1台では厳しいので助かった。
 走っていると最初に逃げた伊能の姿が見えてきた。なぜか立ち止まっていて、その後ろには立脇もいる。
「どうかしたんすか?」
 フロントまで辿り着いた彼らが見たのは、巨大な繭から這い出てくる蛾だった。
 人間の倍はあるだろう大きさの蛾だった。
「うわっ、なにこれっ? きもちわるっ」
 舘岡という男、本当にどこかずれている。
 巨大な蛾は蠕動するようにうねり、床を這っていた。まだ繭から出てきたばかりで、体の動かし方に慣れていないようにも見える。
「これを横切るしかないようだな……」
 まずは伊能が駆け出した。逃げることに関しては他の追随を許さないような男である。
 それに村田が続こうとしたが、蛾はその羽根を大きく動かしたため、走り出すタイミングを損なった。
「こえー」
 舘岡は、依然としてどこか楽天的に構えている。
 案外こういう男が生き延びるのかもしれないな、と詩帆は思った。
「この化け物がぁッッ!!」
 村田は蛾の化け物に跳びかかった。その手にはいつの間にやら大きな包丁を握り締めている。中華料理などで使いそうなやつだ。
 蛾の背中に小さく亀裂が入り、そこからぬっと人の顔のようなものが現われた。
 村田の包丁は偶然にもその顔に向かって振り下ろされていく。
 包丁が蛾の背中に――そして人面に――突き立てられた。大きく羽根をばたつかせる。辺りに鱗粉が散らばった。
「ぐああああああ!!」
 村田が両手で顔を押さえて呻いた。
「目がぁッッ!!」
 そしてよろめきながら、床に倒れこんだ。
「顔が熱いッッ!!」
 望美は村田の顔を見た。皮膚が溶けていた。「きゃーーーーーーーー!!」
「ひー、なんか溶けてる。村田さん、大丈夫っすか? んー、これはもう無理かな……」
 今度は立脇の声があがった。一斉に視線をそちらに向けると、立脇は植物の蔓(つる)のようなものに絡め取られ、宙に浮いていた。
「うひゃー、あれ、なんていうんだっけ? 名前出てこないけど、やばくない?」
 舘岡が見たのは巨大なウツボカズラだった。その蔓が意思あるように器用に動き、立脇を捕らえたのだ。
「誰かああああ!! 助けてくれええええええええ!!」
 立脇は赤子のように泣き喚き、全身で暴れた。しかし強力に巻きついた蔓は物ともせず、彼を本体へと引き寄せる。
「……いやー、あれは正直、無理っしょ。助けるたってどうやって?」
 詩帆は舘岡の軽薄さに憤りを感じたが、それでも意見は彼と同じだった。どうしても助けられそうにはない。
 立脇はウツボカズラの上部にある大きな口に吞み込まれ、ポット状の体に収められてしまった。それと同時にジュッという音が聞こえたような気がしたが、おそらく化けウツボカズラの強力な溶解液が立脇の肉体を溶かした音だろう。
 ウツボカズラの腹の中で体をドロドロに溶かしながら立脇はもがいたが、数秒もすれば力尽き、動かなくなった。あとはじっくりと彼の体は溶かされるだけだった。
「これは本当にやばそうだ。外に出たら車があるから、早く逃げよう!」
 舘岡の言葉に詩帆は頷き、石平を連れて走った。



<作者のことば>
現行ペースで最終話までいけるとか書いた気がするけど、はたしてそれが果たされるかどうか怪しい。


ペース崩すと更新しなくなっちゃうこと多いんだよなぁ。


あ、でも本来なら昨日27話を載せるはずなんですよね。
ちょっとうっかり勘違いして2日に1回ペースが崩れた。けど、偶数の日に載せたいからいいもーん。


(どうでもいいけど、このスペースが好きだって言ってくれる方もいるので極力なにかしら書こうと思う(前回はなかったから)。…でも実際どう思われてるんだろう? 作品のこと書いてもいいのか、それは蛇足なのか。ここに近況とかもどうなのか。意外と毎回悩みつつこのスペースを書いております。)


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