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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/03/30(火)   CATEGORY: MUKURO・地獄篇
MUKURO・地獄篇‐26 (不休)
 部屋には5人の男が待っていた。最初に話しかけてきた若い男の他に4人。
 まずは柳瀬たちが自己紹介を終え、継ぐように若い男が喋り出した。「俺、舘岡っす。詩帆ちゃんも望美ちゃんもかわいいね。今まで男ばっかでむさ苦しかったから、なんか地獄に仏って感じ。……なんか違うか」
 舘岡は金髪の長い髪を垂れ流し、頭にはバンダナのようなものを巻いていた。どうにも軟派な印象を詩帆は受けた。
「僕は伊能です。伊能 大介。この中では立脇さんに次いで年長ですね」
 昔っぽさを感じる、少し大きいレンズの眼鏡をかけた中年の男が言った。あまり頼りがいがあるようには見えない。伊能の隣には白髪混じりの男性がいた。おそらく彼が立脇だろう。
「立脇 五平。一応、この中では最も歳は喰ってる」
 彼には伊達に歳は取っていないという、落ち着きが見受けられた。
「村田です」
 村田という坊主頭の男は体格が良く、他と比べて頼りがいがあるように見える。年齢はよくわからないが、それなりに若いようだ。普段から鍛えているのか、筋肉質な太い腕が窺えた。
「それで、奥にいるのが工藤さん。こんなことになって神経参っちゃったみたいで、精神的にアレなんで、なかなか話そうとしないんすよ」
 舘岡が指差す先には、確かに神経質そうな面持ちの男が椅子に腰掛けていた。全体的に細く、今にも栄養失調で倒れてしまいそうだ。
「あと飯沼さんっていう、すげえ人の良い人がいるんすけど、なんか飯沼さん、帰りが遅い類家さんたちのこと心配して、二人のこと探しにどっか行っちゃったんすよ。そのうち帰ってくるとは思いますけど」
 一応互いに簡単ながら自己紹介は終わったようだ。
「あの、申し訳ないのですが、何か食べるものってありますか? 彼がずっと何も食べていないらしくて」
 そう言って柳瀬が指差したのは石平だった。
 何も食べていない中で、この魑魅魍魎が跳梁跋扈する街を生き延びてきたのだ。もう体力はほとんど残っていないだろう。柳瀬は、石平には早急に休息が必要だと思っていた。まずは何か食べさせてやらないといけない。
「あー、食糧っすか。いくらかはありますけど、あれ? 坊主、類家さんと食糧探しに行ったんじゃねえの? もしかして収穫なし?」
「ごめんなさい。化け物に襲われて、持って来るの忘れちゃった…」
「マジかよー」
 伊能が耕太を庇うように言った。「まあ、仕方ないじゃないか。その代わり味方も増えたことだし」
「ここにいるやつ同様、どれだけ役に立つかわからないけどな」
 そう言ったのは村田だった。余程自分の力に自信があるようで、他の人間をやや見下しているらしい。確かにこの中では最もサヴァイバルを生き残れそうではある。
「えー、村田さんってもしかしてホモ? ゲイ? 女の子が二人も増えたっつーのに嬉しくないんすか?」
「いざってときに足手まといになるだけだろ」
「うわー、こわっ。ひどっ。……あ、俺は君たちのこと置いていったりなんかしないし大丈夫だから」
 舘岡はへらへらと笑った。
 詩帆はどちらも大して頼れそうもないな、と判断した。そもそもこの中で柳瀬や石平以上に頼りになりそうな人間は一見して見当たらなかった。
「それで、食糧は……」
「ああ、そうそう食べ物ね。ちょっと待ったー」
 柳瀬の問いに舘岡が立ち上がった。「あれ? 工藤さん、大丈夫? 顔色悪いよ? まあ、そりゃいつもだけど。今日はまた一段と具合悪そうっすよ?」
 工藤の体がもたれていた椅子からずり落ち、床に転がった。

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