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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/03/28(日)   CATEGORY: MUKURO・地獄篇
MUKURO・地獄篇‐25 (再会)
 詩帆たち一行が到着したのはとあるホテルのフロントだった。
 いざというときに逃げられるよう、車はホテルのすぐ前に停めている。
 建物の中は薄暗く、嫌な空気が漂っていた。フロントの隅々に白い糸の塊のようなものが点在している。それはまるで繭のようでもあった。
 それに植物らしきものも繁っている。
「本当にここなの?」
 詩帆が耕太に問うた。この様子から見て、ここに誰かがいるとは想像もできない。
「うん。ついてきて!」
 耕太が先を走って行く。慌ててそのあとを詩帆が追おうとしたが、それと同時に望美が叫び声をあげた。
「――どうしたの!?」
 びっくりして詩帆は思わず振り返った。
 そこには望美と柳瀬、そしてもう一人が立っている。
「骸さん?」
 そこに立つのは骸とは似ても似つかない男の姿。
 どうやら望美は急に現れた見知らぬ人間に驚いて叫んでしまったようだが、どうも化け物ではないようだ。
「……あれ? 石平君?」
 詩帆は素っ頓狂な声で、男に話しかけた。
「石平君だよね? わたしのこと、覚えてる?」
 男は黙ったままだった。
「忘れちゃった? もう何年も会ってなかったから仕方ないかもしれないけど、わたし、詩帆だよ。わかる?」
「……ああ、檜山さんか。久し振り」
 やけに生気のない声が響いた。
 その泥だらけの汚れた風貌からすると、かなり憔悴しているようだった。
「大丈夫? 具合悪いの?」
「いや、ずっと何も食べてないせいで、力が出ないだけだ」
 石平はかすれた声で答えた。
「知り合いか?」
 状況が掴めない柳瀬が訊く。
「ああ、そうなんです。実は中学が一緒だったんですよ」
「へえ、こんなところで奇遇だね」柳瀬は心底驚いた様子だった。「だけどこんなときだ、人手は多い方が助かるし、詩帆さんの知り合いなら多少は気も楽だよ」
「でも、どうしてここに――?」
「ここに車が走っていくのが見えたから、ここに来れば人に会えるかと思って。それがまさか知っている人間だとは思わなかったけど」
 柳瀬は歩き出して言った。「とりあえず奥へ行こう。話はそれからでも遅くはないし、ほら、君も一緒に来るだろう?」
 詩帆たちはホテルの奥に進んだ。それに石平も同行する。途中、誰もついて来ていないことに気付いて耕太が戻ってきた。耕太は見知らぬ人間が増えていることに驚いたが、詩帆から説明を受けて納得をしたようだった。
 石平はふらふらと幽鬼のように歩いた。それは見ていて、今にでも倒れるんじゃないかと思えて怖い。詩帆は心配で彼に寄り添って歩いた。
 詩帆にとって石平は懐かしい人物だった。中学の3年間、クラスが同じこともあってそれなりに会話をするような間柄だった。卒業してからは一度も会っていなかったが、あまり変わってはいない。そういえば、何度か彼が自分のことを好きだという噂を詩帆は聞いていた。彼女自身は石平に対してそのような感情を抱きはしなかったが悪い気はしない。
「今までどうしてたの? あの、こんなことになる前のことだけど」
「普通に高校に入って、卒業した。それから当たり障りもない感じで大学に入ったくらいかな」
「ははっ、わたしも同じようなもんだよ」
 一瞬の沈黙。
 会わなかった時間がそうさせたのか、この状況が悪かったのか、二人の会話はそこで途切れた。詩帆にしてみれば世界がこうして魑魅魍魎が跋扈する魔界に転じてから初めての知り合いで、どうにも嬉しい気持ちが湧き上がっていた。なんとなく、心強い。
 しかし、彼女の気持ちとは裏腹に、二人の距離は微妙な間隔を保っていた。どこかズレているように気すらした。詩帆は、久し振りの再会がこのような状況だったことが残念だった。
「まさか、こんなときに会うなんて思わなかったよね」
 石平の返事はない。
「もしかして、わたしが会う最後の知り合いかもね」
 ちょっと自嘲気味に彼女は言った。
「そうかもな」
「だとしたら、それはそれで少しロマンチックだよね? …なんて」
「それってタイタニックみたいなもんか? 沈みゆく船の上で出会った男女ってこと?」
「……そうかも。でも、あれって映画はヒロインの女の人は生き残るよね」
「そうだな。きっとお前は生き残るよ」
「ごめん、冗談だって!」
 再び沈黙。
 今度は誰も言葉を発さなかった。
 しばらくして目的地についてようで、耕太が部屋のドアをノックした。「ただいまー」
「おう、小僧。あのおっさんはどうした?」
 若い男が耕太に問いかけた。おそらく類家のことだろう。
「類家さんは亡くなられました。化け物に襲われて」
 耕太の代わりに柳瀬が答えた。
「うわっ、おっさん、誰だよ?」
「この人はね、途中で僕のこと助けてくれたんだよ」
「どうも、柳瀬といいます」



<作者のことば>
気付いていた方もいるかもしれませんが、今作の登場キャラクターである檜山 詩帆の名前表記が一部「詩織」になっていました。
特にご指摘はなかったので、誤記と理解してくださって頂いているのだと判断していますが、もし混乱を招いてしまっていたようでしたら深くお詫びします。申し訳ありません。

キャラの名前が曖昧な認識なくらい、このMUKUROの登場キャラクターは即興。
初めから名前と役割が決まっていたのは骸くらいだし、自分ほど書きながらキャラクターを作っている人って他にいるのかな?って思います(苦笑)

毎回新しい登場人物が必要になったときは、その場で2、3分ほど考えて名前を決めています。

自分、どれだけ見切り発車なんだよ。

そんな感じでMUKURO・地獄篇は続いていくのでしたー。


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| | 2010/03/29(月) 06:55 [EDIT]
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匡介 | URL | 2010/03/29(月) 10:39 [EDIT]
>シークレットさん
自分の考えていることを的確に文章にするのは難しいですよね。
なぜか凄いその能力について褒められているようですが、自分としてはいつだってきちんと伝えられているのか心配で、そして不安でなりません(苦笑)

さらには熟達しただとか素晴らしい表現力だとか、そういうことを書かれると恥ずかしい上に恐縮してしまいます。
今後のハードルの高さにどうしようかと恐ろしいほどプレッシャーを感じるのですが、まさかそういう作戦でしょうか? 未熟な素人物書き一人潰したところで何も得はしませんよ!(笑)

さて、最初の「考えを的確に記された文章」についてのことなのですが、あまり時間をかけることが出来なかったので、実際に適切なものなのかどうか、非常に心配でした。こういうのは反応を見るまで凄く怖いです(笑)
ちなみに差し出がましいなど微塵も思っていないのでご安心ください♪ 迷惑だとも思っていませんよー。

わざわざこのような長文のコメントありがとうございます。
全てに細かくお返事するのも問題あると思うので(笑)、このへんで終わりにしておきますが、全体的に凄く丁寧な印象を受けたので、何かとても気遣わせてしまったようで申しわけないくらいです(汗)

どのようなコメントでも構わないので、また好きなときにコメントして頂けると嬉しいです。
あと、ご指摘通りこの作品もそろそろ大詰めなので、もうしばらくお付き合い願えると幸いです。せっかくなので最後まで楽しんで頂けるといいなぁ、というかそうなるよう頑張りたいです!!

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