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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/03/26(金)   CATEGORY: MUKURO・地獄篇
MUKURO・地獄篇‐24 (巨鯨Ⅱ)
 鎌状の形態と採った骨刀を骸は円状に振り回し、迫り来る無数の腕を一気に薙ぎ払った。
 巨鯨と車の距離は徐々に拡がっているが、それでも巨鯨の射程距離内からはまだ脱出できていないようで、腕は次々と襲いかかってくる。
 骸が骨鎌で応戦するも耐えられるのは時間の問題だと思われた。
 そのとき、腕のうちの一本が骸を捕らえ、強力な力で引っ張った。
 骨鎌は広範囲を刈るようにして使うには有効的だが、代わりに自分に近付かれたら対応が出来ない。その隙を突かれたのだ。
 骸は軽々と車の屋根から引き摺り下ろされ、地面に転がった。
 全身に強烈な痛みが奔る。
 骸は喘いだ。
 詩帆はミラーで骸が地面に放られたことに気付くと、慌てて速度を落とし、車を停めようとした。
「そのまま行け!」
 しかし、骸はその様子を悟り、詩帆に先を急がせた。
「停まるんじゃない! とにかく走り続けろ!」
 そこに骸の覚悟を知った。
 詩帆はわずかに頷き、再びアクセルを強く踏み込む。
 ランドクルーザーは悲鳴を上げながら、それでも目一杯のスピードを出して走り続けた。
 それを眺めながら骸は巨鯨の腕に引っ張られていく。動くと体中が軋むような音が聞こえた。
「残念だが、俺は簡単には死ねない」
 突如、骸の背中がいくつも隆起し、そこの肉を突き破って骨らしき突起が現れた。
遠目からは針鼠のように見えなくもない。
 その骨の棘が彼を引っ張る腕に突き刺さり、その力が弱まった。それを好機と骸は骨鎌を振るって腕を断ち切る!
 およそ人が生きていられるはずのない傷を受けて立ち上がった骸の姿は、身体中から骨状の棘が突き出て、片手には大鎌、それはまるで異形だった。
 双眸は爛々とオーラを放っている。
 彼は宙に浮かぶ巨鯨を見遣った。
 だいぶ遠くの空に浮かんでおり、もうそろそろ射程の外だろうと思われる。おそらく今頃は詩帆たちを乗せた車は巨鯨の手の届かぬ距離に達しているだろう。
 そのときだった。
 巨鯨の口がゆっくりと開き、その中から小さな無数の影は飛び出たのは。
 最初はそれが何かわからなかった骸だが、それが近付くにつれてその正体がわかってきた。――ピラニアだ。
 ピラニアを思わせる怪魚が巨鯨の口から次々と放たれていた。そのギザギザとした鋭い歯は鉄だろうと喰い散らかしてしまいそうに見えた。
 骸の背筋を怖気が襲った。
 彼は骨鎌を片手に走った。詩帆たちが向かった大体の方向はわかっている。走れる限界の速度で走った。
 その姿は風を切り裂く、疾風の如く。
 彼はまさに疾風迅雷の速度でその大地を駆け抜けた。



<作者のことば>
巨鯨はイメージとしてあったのだが、このようなシーンは書きながら辿り着いた。
骨鎌という新しい武器の登場はいいものの、このまま逃げ切るのでは面白くない。

そこで骸には少し苦戦してもらおう的な思いで書いたのだけれども、おかげでなかなか気に入った箇所がある。

「およそ人が生きていられるはずのない傷を受けて立ち上がった骸の姿は、身体中から骨状の棘が突き出て、片手には大鎌、それはまるで異形だった。」

この満身創痍の状態から立ち上がるシーンが、物凄く映像として脳内を通り過ぎていった。
映像というか、マンガ的かもしれない。とにかくのっそりと骸が立ち上がる姿が鮮明に見えた。

「双眸は爛々とオーラを放っている。」

そしてその双眸は烈しい精気を放ち、見るものを圧倒するのだ(…といってもこの場合、見ているのは俺なのだけれど)。
不可視であるはずのオーラがあまりの気迫で、そこだけ違う色に輝いているようであるほどだ。

それは赤いような、金のようなイメージなのだけれど、とにかく、自分で書いていてこのシーンはとても気に入った。

これは文章の良し悪しとは関係なく、ただ単に自分が見えたイメージの話なんだけれども、そのシーンがすげえカッコイイと思ったのだ。
別に自画自賛ではないけれど、こんなことを思えるときがなければ、こうして何かを書いて、しかもそれを誰かに見せるということは出来ないですよね?(笑)←なぜか投げかけて口調(笑)

まぁ、何が言いたいかというと、わざわざこれを読んでくださっている方にも、どこか一文でいいから同じようにカッコイイ!って思ってもらえたら嬉しいなってことです。
もうすでにそのようなシーンに巡り合えていれば幸いだし、まだなら今後その出会いを届けられるよう頑張ろうと思います。

そんな想いを片手に、そろそろ見えてきたような気がするゴールまで駆け抜けようかなー? なんて(笑)


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