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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/03/24(水)   CATEGORY: MUKURO・地獄篇
MUKURO・地獄篇‐23 (巨鯨Ⅰ)
「本当に助かりました。ありがとうございます」
 応急処置を終え、包帯を腕に巻いた柳瀬の言葉に、骸はどうということでもないと無表情で、代わりに詩帆が「こんな状況ですしお互い様ですよ」と言った。
「これからどうするんですか?」
 と望美が柳瀬に問うた。
 すでに自己紹介を終えた5人だが、彼女は骸と詩帆のことを信用出来てはいない。以前に仲間だと思った人間が化け物だったということもあり、警戒の色が強かった。そもそもあの化け物が乗っていた車と同型のランドクルーザーに二人は乗っているのである。そう簡単に信用するというのは無理な話だった。
「耕太君の案内で仲間がいるというところに向かおう。類家さんのことは残念だけれど、それでも僕たちは進むしかないからね」
 その会話に骸が反応した。「仲間?」
「ええ。実は、この子がまだ生き残っている人たちが集まっているところを知っているというんです。これからそこに向かおうかと。人は多い方が安全でしょうし」
「この近くなんですか?」そう訊いたのは詩帆だった。
「そんな近くないけど、そこまで遠くもないと思うよ」
 耕太が答え、それを聞いてから柳瀬が二人に訊ねた。
「一緒に、行きませんか?」
 その言葉に、望美は不安に駆られた。
 おそらくそういう成り行きになるだろうことは察しがついていたが、それでもこの二人と同行するのはどうにも気が休まらない。特にこの骸という男は不気味だと思った。表情がほとんどないし、あの化け物どもと闘っていたときのあの動きはおよそ人間のものとは思えなかった。まるでやつらの仲間のようで、耕太の言う仲間のところへ辿りついたら全員喰われてしまうのではないか? そんな心配でいっぱいになった。
「ご一緒出来たら嬉しいです」
 そう言ったのは詩帆だ。
「この人数なら車にも乗れそうだし、早いうちに移動した方がいいと思います」
「確かに、いつまでもこの場に残っているのは危険ですね」
 怖い。車に対する、特にあのランドクルーザーに対するトラウマが望美を恐怖させた。このまま付いて行っていいものなのか? 柳瀬は、あの車を見て何も思わないのだろうか?
 出来ればこのまま車には乗らずに、歩いて移動したかった。
「ちょっと待ってくれ」
 骸が車に全員を制止させた。
「……何かが来る」
 柳瀬は言葉の意味がわからなかった。
「……何か?」
 そのとき、辺りが暗い影に呑み込まれた。
 一同が上空を見上げると、そこには巨大な魚影。おそろしく巨大な鯨にも見えた。
「なんだあれは……」
 柳瀬は言葉を失っていた。
 あまりの大きさ。あんなサイズの化け物に気付かれては、この5人などあっという間に全滅するような気がした。
 その巨鯨の全身には、フジツボのようなものが無数くっついているように見える。
 ――なんだろう?
 詩帆が目を凝らした。
 頭部のそれは、無数の眼であった。
 ギョロギョロと視線を泳がせ、獲物を狙っているように見える。
 そして胴体の方にあるのは、腕、脚、そして顔など。それは人間の体だった。
「なんなの……?」
 望美は後退りして、尻餅をついてしまった。
「あれは厄介だ。――出来れば気付かれずにこの場を離れたい」
 その骸の言葉に、柳瀬が反応した。「あれが何なのか知っているのか?」
「以前にも見たことがある程度だが、あれは周りのものを取り込んで生きている」
「取り込む…?」
「気を付けた方がいい。やつの体に触れると溶け込むように吸収されて、一体化するぞ」
 そのときだった。
 巨鯨の持つ無数の眼が、骸たちを捉え、体から生えた無数の腕が伸びて襲ってきた。
「急げ、車に乗るんだ!」
 柳瀬は叫びながら車内へと駆け込んだ。続いて詩帆が乗り込み、エンジンをかける。
 後部座席には耕太と望美が乗った。
「出せ!」
 骸は屋根に飛び乗った。
 詩帆がアクセルを全開に踏み、車は発進した。
 巨鯨から伸びた腕が迫る。
 骸の骨刀がそれを一途両断するも、腕は次々と迫っていた。
「出来るだけやつから離れろ! やつの動きは遅い。腕が襲ってくるのは一定の距離までだ!」骨刀で腕に応戦しながら叫んだ。「それ以上離れたら襲ってくることはない!」
 車窓を破り、一本の腕が車内へと侵入してきた。
 望美は悲鳴を上げる。耕太は必死に腕を追い払おうと脚を突き出した。
「捌き切れないッッ」
 骨刀が伸びてその腕を斬った。
 腕が車内に転がる。望美も耕太の出来るだけ距離を取った。
「出せるだけスピードを出せ! 少しだけでいいから時間をくれ!」
 スピードメーターが振り切るくらいに詩帆はスピードを上げた。今ならちょっとしたミスで全員が死ぬだろう。足元に何もないことを祈った。
 骸は骨刀を屋根に突き刺し、右手を背中に向けた。背骨がある部分に手を触れ、指先を突き立てるように、爪を皮膚にめり込ませた。ズブズブと肉を貫きながら指が入っていく。ズズズ…。その指が脊椎に触れると、それをゆっくりと引き抜いた。
 その光景はあまりに衝撃的で、誰しもが目を背けたくなるだろう。人によっては嘔吐すらしてしまうかもしれない。
 引き抜かれた脊椎骨は、骸の背中よりもだいぶ長いように見えた。
 その端に骨刀を重ねる。その二つは溶け合うかのように同化して、大きな鎌のような形状になった。
 それは骨鎌と呼ぶべきだろうか。骨刀の新たな形態だった。



<作者のことば>
ついに出た巨鯨!
以前からイメージがあったものの、出すタイミング待ちだった化け物。

そして骨刀の第二形態・骨鎌!!
特に名前を決めてなかったので、まんま骨鎌で(笑)
これも骸が登場したらへんからずっとイメージとしてはあって、出番待ちだった。

もう書こうと思ってたやつは書いちゃったし、思い残すことはないな!

次回は骸があんなことやこんなことになっちゃう予定なのでお見逃しなく!!(笑)


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COMMENT

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浅葱 | URL | 2010/03/26(金) 09:56 [EDIT]
巨鯨きたーっ (゚Д゚;≡;゚Д゚)
しかも描写が…っっ 想像して人面蜂の次にゾッとしましたorz
骸さんの武器もかなり想像するとあれですが(笑
でもカッコイイ!!
えぇーっ次回骸さんがあんな事やこんな事になるですと!?
楽しみです ((▽\*)≡(*/▽))

匡介 | URL | 2010/03/26(金) 10:41 [EDIT]
>浅葱さん
今回はヴィジュアルのグロテスクさに重点を置いているところがあります(笑)
巨鯨はかつてない最強の敵で、骸もまさかの骨鎌出しちゃいました!てへ♪←本当はもっとあとに登場させるはずの武器だったんですが、気付けば出しちゃってたっていう(笑)

ふと思ったんですが、巨鯨ってエンヴィー的なヴィジュアル・イメージかもしれません(本気なったときのね!)。
そして骸の武器はNARUTOの君麻呂??

なんかオリジナリティないな(苦笑)

別にそこから着想を得たとかは全くないんですが、斬新なアイデアってなかなか難しいものですね~。
巨鯨はともかく、骨を武器化するキャラクターはX-MENのマロウ(マニアックか?)など、今までも何人かいますよね。

まぁ 影響を受けること自体は悪いこととは一切思っていないので、このまま突き進もうと思います!!←強気(笑)
やっぱ何かに影響され、吸収していくことは当然ですよね。それがあって今こうして書いているのかもしれませんし、要はそれをどう自分なりに組み換えて、全体としてのオリジナルを形成するかということだと思っています。……というか思いたい!!(笑)

浅葱さんのコメントにテンション上がったので、今後のモチベーションとして発揮できそうです!!
ちなみに外伝はまだ全然ストーリーの構想がないのですが、もしかして浅葱さん好みのテイストになるのではないかな~?なんて思っています。そう、まるで媚びるかのように(笑)

そちらの方も併せて楽しみにして頂けたら嬉しいですね♪ ……ん? 自分でハードル上げた??(汗)

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