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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/03/20(土)   CATEGORY: MUKURO・地獄篇
MUKURO・地獄篇‐21 (遭遇Ⅲ)
 類家が先頭になってホテルの一室を出た。廊下は相変わらず静かに思える。
 そして類家に続いて部屋を出ようとした柳瀬だが、その顔に生暖かいものが降りかかった。――何だ?
「うわっ」
 とっさに塞いだ目蓋は開けるとそこには、首のない男の体。
 ――類家だった。
 巨大なカマキリの頭が視界に入ってきた。
 巨大な、鎌。
 あれで類家の首から上が刈り取られたと思うと体が震える。
 シュッ。
 気付けば鎌が、柳瀬の顔をかすめていた。
 頬が裂かれ、血が溢れる。
「う、うわああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
 叫び声がフロアに響いた。それが自分のものだと柳瀬は気付かぬままに、全力疾走で逃げる。恐怖のあまり、顔面蒼白。血走った目が見開かれていた。
 素早い動きに釣られて、巨大カマキリの注意が柳瀬に向けられる。そして彼を獲物に定めたようで、彼を追い始めた。大きいながらも、俊敏だ。柳瀬は振り向くことなく走り続けた。
 階段を駆け下りようとする柳瀬の背中に、カマキリの鎌がかすめる。それでも切っ先は確実に彼の背に届いていた。皮膚が裂かれ、肉が裂かれた。致命的ではないものの、背中から血が飛沫を上げる。
 しかし柳瀬はそれを気に留めることなく、足を止めることはなかった。むしろ絶望と恐怖の中で、生命の危機を感じる中で、大量の脳内物質が放出され、痛みはほとんど感じていなかった。
 不意に、躓く。階段を転げ落ち、体中を打った。床に這いつくばるような体勢から立ち上がり、再び走った。鼻血が出ている。頬からも血が流れ、顔中が血にまみれていた。
 出口がもうそこに見えている。満身創痍の体を引きずり、外に向かって進んだ。もう少し。あと、少し。
 そんな彼の目の前に、大きな影が道を塞いだ。車体から6本の長い脚。蜘蛛のような姿をした、化け物。
 ――もう、無理かもしれない。
 牙を生やした、車のボンネットだ――おそらく口なのだろう――が、柳瀬の腕を捉えた。
 そのギザギザとした口が、彼の左腕を喰らう。
 牙が肉に食い込んだ。とめどなく、血が溢れる。
 柳瀬は悲鳴を上げた。




<作者のことば>
1話分の長さに悩む。
本とは違うし、長過ぎるのは好まないのだけれど(何せ、疲れる)、短過ぎても物足りなさを感じる気が。

どれくらいの長さが適当かということは常に課題として考えていることのひとつ(これは何度も書いていること)。

しかし今回(というより最近)はなかなか文章が湧いてこないのが原因なのだけれど。
やはり区切りのいいところで区切りたいし(出来れば続きが気になるカタチで)、しかしそこで区切った場合短かったとして、どうにか文章を増やしたいと思うのだけれど、それが難しい。

書くことを仕事としている人たちは依頼された量の文章を書いているのだろうけど、それって凄いよなぁ。
長過ぎず、短過ぎず、毎回適度な分量を心がけたいのだけれど、その実現は程遠い。


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