FC2ブログ
みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/03/16(火)   CATEGORY: MUKURO・地獄篇
MUKURO・地獄篇‐19 (遭遇Ⅰ)
 カーテンの隙間から漏れ出す日光で、望美は目を覚ました。
 隣で寝ている柳瀬を起こさぬよう、ベッドを抜け出て、窓の外を覗く。どうやら朝のようだ。
 水道の蛇口を捻り、勢いよく放出される冷水で顔を洗い、ついでに喉を潤した。そういえばずっと何も食べていない。何かないだろうかと冷蔵庫のドアを開けてみたが、そこは空だった。
「他の部屋にも何もないのかな?」
 柳瀬を起こすか悩んだが、少しでも長い休息が必要だろうと思い、望美はひとりで食糧を探すため部屋を出た。
 廊下は静まり返っていた。誰かがいる様子も、また、何かがいる様子もない。
 他の部屋を覗いてみるも、当たり前のように人気はなく、また化け物どもがいる様子もなかった。彼女は自動販売機の置いてあるエリアを見つけるとそこに駆け寄った。どうやら機械は動いているらしく、販売中のランプが点灯している。そこで彼女はデニムパンツのポケットから小銭を取り出して、投入口に入れた。このような状況になっても、まだお金には価値があるらしいことに、わずかに苦笑。そしてミネラルウォーターのボタンを押した。
 ゴトン。
 ペットボトルが吐き出される音が響いた。
 それを取り出して、もう一度ボタンを押す。ゴトン。
 そのとき、彼女は思わず硬直した。
 ――何かの気配を感じる。
 何か、わずかな物音が聞こえた気がする。
「こんにちは」
 ――!?
 望美は驚いて、持っていたミネラルウォーターを床に落とした。
 そこには、少年が立っていた。
彼女には、少年は11、12の年格好に見えた。
 彼はひとりのようで、その顔には子供らしい笑みを浮かべていた。
「お姉ちゃん、ひとりなの?」
「――え? ……ううん。お友達と一緒なの。きみは?」
「僕はおじさんと一緒なんだよ」
 愛らしい、ニコニコとした笑顔。
 しかし気は抜けない。誰が化け物だっておかしくはないのだ。何しろ望美には、こんなところに少年がいるということがにわかに信じられなかった。子供だからといって彼女の警戒が解かれるわけではなかった。むしろ子供だからこそ、警戒しなければならないと思っている。やつらは巧みに化けてこちらの隙を突いてくるのだ。
「僕の名前は小畑耕太。お姉ちゃんは?」
「三浦望美っていうの。耕太君、その、おじさんっていう人は?」
「部屋で寝てる」
「どこの部屋?」
「連れてってあげる!」
 どうするべきか、彼女は悩んでいた。もし目の前の少年が化け物だとしたら明らかに罠だ。きっと逃げられない場所に連れていかれるのだろう。しかし、本当に生き延びている人がいるのならば――そしてそれが大人ならばより――それは自分たちが探していた仲間になってくれる人間かもしれない。やはり、柳瀬を起こすべきだろうか。
「お姉ちゃんのお友達も一緒に行っていいかな?」
「いいよ。友達ってどこにいるの?」
「お友達もおじさんと同じでお部屋で休んでるんだよ」
 耕太を連れて望美は柳瀬のいる部屋に戻ると、すでに彼は起きていてベッドに腰掛けていた。
 柳瀬は望美が見知らぬ少年と一緒にいることに驚き、彼のことを望美に訊ねた。望美が耕太のことを説明すると、柳瀬はペットボトルのミネラルウォーターを一口飲み、「じゃあ、行こうか」と部屋を出た。



<作者のことば>
自分のイメージと文章のズレを感じることほどストレスになることはない。
しかしどう頑張ってもイメージ通りにならないことはある。

そこで、これはウォーミングアップ的な気持ちで書き始めたことを思い出した。

ならばとりあえず書くしかないか。
だって、ウォーミングアップが気に入らなくて、そこでやめる人はいないだろうし。


←応援してくれる人はclick!!
[ TB*0 | CO*0 ] page top

COMMENT

 管理者にだけ表示を許可する

TRACK BACK
TB*URL
Copyright © みやび萬紅堂。. all rights reserved. ページの先頭へ