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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/02/24(水)   CATEGORY: MUKURO・地獄篇
MUKURO・地獄篇‐18 (光の魚)
 ホテルの一室。深い静寂(しじま)の中、灯りもない暗がりで、柳瀬 隆と三浦 望美の二人は小さく息を潜めながら、この深海のような世界でしばしの休息を取っていた。
 部屋のベッドで望美が仮眠を取っている間、柳瀬は椅子に深く腰かけて、見張りをする。いつ化け物どもがここに現れてもおかしくはないのだ。
 何事もなく時間だけが過ぎ、柳瀬にも少し睡魔が押し寄せてきた頃、カーテンの隙間から不思議な光が部屋に差し込んできたことに彼は気付き、恐るおそる、ゆっくりと窓に近付き、カーテンの隙間から外を覗き込んだ。
 そこには、光の魚がいた。
 蛍光色に発光する魚が、まるでそこが海であるかのように悠々自適に宙を泳いでいる。
 それも一匹ではない。
 幻想的な光景だった。数十匹の魚が、光を放ちながら泳ぐ姿は、神々しくもあった。
 まさかそれが破滅をもたらす悪魔だとは思えない。神の御使いであるような神聖さを持って、宙を浮遊している。
「こいつらは一体……」
 思わず漏れた言葉。もし神の御使いなのであれば、自分たちは、何かの罪で裁かれようとしているのか。それは一体何の罪で?
 そして柳瀬は思い直した。何の罪で? 人間がそれを問うか。もはや何の罪かもわからぬほど、人は罪を犯してしまったのではないだろうか。いくつもの罪を犯し続けた結果、今こうして罰を受けているのではないか。
「……地獄」柳瀬は誰に向けるでもなく言葉を紡いだ。「まるで世界は地獄と化した。しかし地獄とは罪人の落ちる場所ではないか。もしかしたら、人間はもうどうしようもないくらい、それこそ地獄に落ちても仕方ないくらいの罪を犯してしまったのではないだろうか。――だとしたら俺は、人間は、一体どうするべきなんだ? このまま自ら罪と罰を受け入れろとでも? あの化け物どもに苦痛ののちに八つ裂きにされ、見るも無惨な死体を晒し、喰われろというのか?」
 柳瀬は怒りと屈辱に体を震わせ、唇を噛んだ。
「これが人間の辿る運命なのか? 神は地上を一掃して、また世界を創り直すつもりなのか? ――俺は許さない。そんな横暴は、許せない。確かに人間は罪深い。罪を犯しながら生きているかもしれない。しかし、生きるということはそういうことではないのか? 人は罪を犯し、時に後悔し、自省し、また罪を犯す。罪を犯すことが、そしてその罪を償おうとすることが、生きることではないのか? だから人はいずれ死ぬのではないのか? 生とう罪を償うために、誰もが死という罰を受けるのではないのか? ――もし、ひとつの罪も犯さずに生きろというのなら、どうして最初からそう作らなかった? 生きることが罪というなら、その結果が今というなら、どうして俺たちに生を与えたんだ」
 柳瀬の頬を、涙が伝った。
「俺はお前に屈さない。お前が神だろうと運命だろうと俺は生きる。罪にまみても、それを償いながらでも、俺は生きる。罪を犯してきたのは、生きるためだ。罪を犯してまで生きてきたんだ。ここで諦められるか!!」
 その声が部屋中を震わせ、望美は目を覚ました。
 暗がりの中に立つ柳瀬の顔は、よく見えない。
「あ、後ろ!!」
 望美の声で振り向くと、透明な魚が柳瀬を狙っていた。
 ほとんどが透けているが、よく目を凝らせばそのシルエットが見える。
 柳瀬は手にしていた手製の木の槍を構え、宙に浮く魚に向けて勢いよく一突きした。
 木槍は浮遊魚をかすめる。柳瀬は立て続けに突きを放った。
 穂先が浮遊魚の体を貫いた。
 透明だった体は色を取り戻し、床に落ちた。
「大丈夫ですか?」
「ああ、何ともない」柳瀬は額の汗を拭った。「一応、部屋を変えよう」
 二人はホテルの一室をあとにした。



<作者のことば>
時間は有限。

誰か! 面白い映画を教えてくれ!!

ちなみにこの回を書いていたときのテンションはどうもおかしかったように思える。あひゃひゃ!


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COMMENT

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ライム | URL | 2010/03/09(火) 03:58 [EDIT]
小休止、今後の展開展望中、という感じですね?
あるいは充電……いい言葉だな~充電。
携帯を充電するたびに「携帯っていいなぁ充電できて」と、羨ましくなります(違うか;;;
浮遊魚、厚みがなく半分透けてZ型に折れ曲がり、空中にゆらゆら浮かんでいる姿が見えるようでした(Zの上部の折れ曲がりが開いた口
そういうわけで(←?)連載再開を気長に、しかし楽しみにお待ちしております♪

匡介 | URL | 2010/03/13(土) 00:30 [EDIT]
>ライムさん
単純に書いていなかっただけです(笑)
映画観たり、たまに本読んだりすることを優先していました。

自分の書く文章が気に入らなかったというのもあるので、まぁ 充電といえば充電?
しかし本当に携帯っていいですね~。使っているうちに電池の減りが早くなるのは人間と一緒のようですが(笑)

しかし、どうも楽しみにしてくれている人がいるようなので、再開しないわけにはいかないようです!! なのでもう少々お待ち頂きたい!!(笑)

きゃー、脳内に暗黒世界が再来~(ノ><)ノ

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