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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2008/07/12(土)   CATEGORY: 雨の日のうた
雨の日のうた(3)
 次の週の日曜日。俺と可南子は動物園に行った。小さな動物園だが、田舎だから仕方がない。俺は後ろに可南子を乗せてヨンフォアで動物園まで行った。そして入場料を払い、中へと入った。可南子はペンギンが水中へと飛び込む姿を見てはしゃいだ。そしてキリンを見て「まつ毛ながーい」と言い、ラクダを見てやっぱり「まつ毛ながーい」と言った。でも俺はキリンが長いのはまつ毛より首だと思うし、ラクダはこぶがあることに注目するべきだと思った。けれどそんなのは人の勝手だ。どう思おうが人それぞれ。
 可南子はライオンが好きだと言った。理由はカッコイイから。俺はトラの方がカッコイイと言った。理由はやっぱりカッコイイから。俺たちは長い時間、猛獣のオリの前で過ごした。動物園の中で過ごした時間の半分はトラとライオンを眺めて過ごしていた。
 俺はゾウも見たし、サルも見たし、フクロウも見たし、オオカミも見たし、カンガルーもパンダもクジャクやアライグマも見た。でも俺が一番長く見ていたのは可南子のことだった。それかトラ。
 可南子は笑うと左頬に笑窪(えくぼ)が出来た。俺はそれを可愛いと思った。トラのことはカッコイイと思ったが、可南子のことはカワイイと思ったのだ。てゆーか実際のところもとても可愛かった。ベリーキュート。ベリーラブリー。

 その日は動物園の中で一日を過ごした。俺は可南子を家の近くまで送ってから帰った。
「また遊ぼう!」と可南子。
 おう、俺はいつでも大歓迎。

+++

 毎週日曜日は必ずと言っていいほど可南子と会った。一緒に映画を観たり、カラオケをしたり、ちょっと遠くまでバイクを飛ばしたりした。アクション映画を観たあとの可南子は、戦おうぜ! という感じでファイティング・ポーズをとり、パンチはキックを繰り出してきた。俺はそれを難なくかわして可南子の額にデコピン。「いったーい」と可南子。当たり前だ。俺のデコピンはマイク・タイソンですら倒せるんだぜ。もちろん大嘘。それもしょうもない嘘だ。
 初めてふたりでカラオケに行き、俺が歌ったとき、可南子はすごく驚いていた。「意外と歌うの上手いんだね」。俺をナメるなよ。これでも歌唱力には多少の自信があるんだからな。
「十八番は?」
「バラード全般」
「うそっ」
「ほんと。嘘をついてどうする」
 可南子は、そういうふうには見えないねーって顔でこっちを見ている。バラードよりロックって感じだよね。それもハードでヘヴィなやつ。でも残念なことに俺はハードで経ヴィなロックやメタルより切なくて涙がでちゃいそうなバラードを歌う才能を持って生まれてきてしまった。うらむぜ、ロックの神様。
 その日、俺は可南子の疑念を晴らすためにバラードを歌いまくった。主にGLAYとミスチル。すべて歌い終わったあとに可南子は言った。すごい才能だね。俺にとっては皮肉にしか聞こえないのが残念。


<作者のことば>
俺の実力不足が目に沁みるぜ。

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