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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/02/22(月)   CATEGORY: MUKURO・地獄篇
MUKURO・地獄篇‐17 (小さな希望)
 柳瀬は停止したエレベーターのドアを無理やりこじ開けようとしていた。どのボタンを押しても効果はなく、この異常な状況で誰かが助けに来てくれるとも思えない。どうにか自分たちの力で脱出しなければならなかった。
「どうです、開きそうですか?」
 柳瀬が両手に力を込めるが、うんともすんとも言わない。何の手ごたえもなかった。
「ダメだ。ちょっとの隙間も作れそうにない。せめて指が入る隙間さえ出来れば、もう少しやりようがあると思うんだが…」
「そうですか」
「天井の点検口も中からは開かない仕組みになっているようだし、一体どうすればいいのか」
 ガン、と鉄製のドアを力強く蹴りつけ、柳瀬は顔を歪めた。
「このまま、ずっと閉じ込められることになったらどうしよう…」
「そもそも何故停まったのかもわからないからな。単純に停電なのかもしれないが、もしかすればまた動き出す可能性だってある」柳瀬の口から溜め息が漏れた。「ただ、この状況で、今まで電気が供給され続けていた方が奇跡だったのかもしれない」
 二人は黙り込んでしまった。
もう何の手立てもないのか。ここで終わりなのか。今まで化け物相手に命懸けで闘い、生き延びてきたというのに、こんなところで終わりだというのか。
「……何か出来ることがあるはずだ」
 あらゆる思考を巡らせ、脳を余すことなくフル稼働させて、柳瀬は生き延びようとしていた。ここが自分の終わりではない。これまでもっと困難な敵とも闘ってきた。どうやっても勝てないような化け物と渡り合って、生き抜いてきた。――絶望するにはまだ早い!
「どうしてこうなっちゃったんだろう…」
 望美の手には携帯電話が握られていた。
 今までは必要不可欠だったモノ。どこへ行くにも必要だったし、誰と繋がるにも必要だった。これがなくては生きてはいけないと思っていた。
 しかし今、万能だと思っていたそれが何の役にも立ちはしない。電波は入らず、入っても誰が電話に出るだろうか。――何の意味もない。
「こんなもの!」
 携帯電話が壁に打ちつけられ、音を立てて床に落ちた。
カバーが外れ、電池パックが剥きだしになって転がったそれを拾い上げ、カバーを元に戻すと、柳瀬は携帯電話を望美に手渡した。
「希望を捨てちゃいけない。きっと俺たちは生き延びることが出来る。それは俺たちだけじゃない。他にも生き延びられる人は大勢いるはずだ。すぐには元通りにならないかもしれないが、そのうち復旧も進むだろう。そのとき、これがいるだろ? ちゃんと持ってなよ。それは希望だよ。今は何の役にも立たないかもしれないが、だからこそ希望なんだ。その携帯こそが俺たちの日常だろう? それがちゃんと役に立つ毎日がまた来るって信じよう。そいつを手放すってことは、俺たちの日常がもう戻ってこないと諦めるってことだよ。諦めたら、きっと助からない。信じなきゃ。生き延びれるって。強く、思うんだよ。生き延びてやるって。望みを捨ててはダメだよ。――だってそれが君の名前だろ?」
 こくん、と頷いて、望美は滲む涙を拭った。
「すみません。わたし、諦めません」
「ああ。一緒に頑張ろう」

 ドン!!

 大きな衝撃が二人を襲った。
 エレベーターは大きく揺れ、床が歪んだ。わずかに波打つようなカタチに変わっていた。
「なんだ……!?」

 ドン!!

 再度、衝撃。
 二人は体勢を崩して、壁に体を打ち、エレベーターが大きく持ち上がるのを感じた。
「柳瀬さん!!」
 望美が大声をあげて指差す先には、衝撃でわずかに開いたドアがあった。腕が通るほどの隙間が出来ている。
「手伝ってくれ! 一緒にこじ開けよう!」
 柳瀬がドアの隙間に手をかけた。続いて望美もそれに倣い、全力でドアを引っ張った。
「開け開け開け開け――!!」
 ゆっくりとドアが開いていく。
「お願い、開いて!!」
 精一杯の力を込めて、ドアを押し開けていく。
 そして、ついに、人ひとり通れるぐらいほど幅が出来た。
「クソッ! これは、まずい」
 エレベーターのドアの向こうは壁。そして、半分ほど見えたドア。
 どうやらエレベーターはあと少しでどこかの階に到達するところだったらしい。
「どうにかして、このドアもこじ開けよう!!」
 そのドアを抜ければ、何階かのフロアに通じているはずだった。
 今、このエレベーターの下で何かが起こっている。あるいは、何かがいる。
「早くしないと、また衝撃が来るぞ」
 柳瀬は手に汗を握りながら、ドアに手をかけた。
 今度のドアは先程と違い、意外に緩く感じる。落ち着いてやれば、すぐに開けられそうだった。
「大丈夫、開けられそうだ。力を貸してくれ」
 望美の力が加わり、ゆっくりとドアは開いた。
「ほら、先に上がれ!」
 ドアが見えているのは胸より上の位置からだった。
 望美は両手をドアに引っ掛け、力いっぱいを両腕に込めて、フロアに這い上がった。
「柳瀬さん、早く」
「ああ」

 ドン!!

 衝撃にエレベーターが突き上げられ、先程より随分とドアの高さが低くなった。
「今のうちに!」
 柳瀬がエレベーターを脱け出した。と同時に、後方のエレベーターが落下していく。
 そこには虚空だけが残った。


<作者のことば>
当初のイメージより、だいぶズレを感じる。
このままどう展開していくのか自分自身でもわからない。

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COMMENT

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ライム | URL | 2010/02/22(月) 13:49 [EDIT]
前に「クルマがトランスフォーマー化?」というよなコメをしたのは、匡介さんのコメ返しで私の読み違えと分かりましたが……。
その際、クルマがモンスターに変化するとしたら、もしやこの、灯りの落ちたエレベーターも、いや、それどころでなく建物全体も化け物に……逃げ場がない!!……と思ったのでしたf^_^;)
ここまできたら、どうぞイメージのまま突っ走ってください!
って無責任なコメかなぁ……^^;;;

匡介 | URL | 2010/02/22(月) 16:03 [EDIT]
>ライムさん
確かに、すでに世界は魑魅魍魎が跳梁跋扈する無法地帯!!
果たして人間の生き延びる道あるのか――!? って感じですよね(笑)

はい、このまま自分のイメージを追い求めて突っ走っていきます!!

もう骸を出しちゃった時点で引っ込みがつかなくなってしまったので、突っ張るしかないので!!(笑)

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