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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/02/18(木)   CATEGORY: MUKURO・地獄篇
MUKURO・地獄篇‐15 (深夜行)
 モスグリーンのランドクルーザーが、まるでグランドキャニオンを思わせる崖沿いを走ってした。ハンドルを握る詩帆は、この車の持ち主の不在を案じていた。
 ――安生 三貴彦は無事なのだろうか。
 そして隣、ランドクルーザーの助手席に乗っている男を見遣った。
 骸と名乗る男。見た目は美形だが、氷の刃を思わせる冷たい双眸。何を考えているのかわからない無表情。どうにも不気味だった。しかしそのミステリアスな雰囲気が、また彼に似合ってもいた。並の女ならば彼の醸し出す妙な色気にゾクッとしてしまうかもしれない。
「このままどこへ行くの?」
「わからない」
「わからないって――そんな、無責任な」
「今はまだわからない。しかし進んでいればいずれ道は見えるはずだ」
 何を言っているのかわからなかった。考えが読めない。
「――あれって」
 詩帆は、闇が覆い尽くす黒い空に、白く輝くはためきを見た。
 それはオーロラだった。天空をはためく光のカーテン。
 しかしなぜこんなところにオーロラが? これも怪異の一部なのだろうか。
 幻想的な白光が、詩帆の行く先を示しているかのようだった。
 自然とアクセルを踏み込む足に力が入り、オーロラ目掛けてランクルは加速した。
「あなた、何者なの?」
 ふと疑問が滑り出た。
「俺は骸だ」
「それは聞いたわよ。名前じゃなくて、どういう人間かってこと。どうしてあの化け物たちと渡り合えるの?」
「それは――俺がやつらを倒す力を持っているからだ。やつらが何なのかを知っている。やつらに対抗する術を知っている。俺はやつらの目的を阻まなくてはならない」
 それは詩帆の質問の答えとは言えなかったが、しかし彼女にはもっと気になることがあった。「やつらが何なのか、知ってるの?」
「ああ。やつらは――」
 ダン。
 強い衝撃が車を襲った。
 ダン。
 車体が大きく揺れる。
 ダン、ダン。
 何か大きなものが、車にぶつかってきているのは明らかだった。
「きゃっ――」
 フロントガラスの向こう側に、大きな虫がひっついていた。
1メートルはあるであろう、ノミだ。
「運転を続けろ」
 ダン。
 ノミがその力強い跳躍で、車体に体当たりをしてくる。
 ダン。
 ボディがへこんだ。
 ダン。
 逃れられたと思った恐怖が、再び、別のカタチを擁して襲ってきている。
 この悪夢はいつまで続くのか。この地獄はどこまで続いているのだろうか――…
「しっかりとハンドルを握るんだ」
 骸の掌(てのひら)が、ハンドルを握る詩帆の手の上に重ねられた。
「キィィェェェェエエエ!!」
 ノミの口が、四方に割れてグワっと開き、奇声を上げた。
 詩帆は映画で観たエイリアンの口を連想し、恐怖で全身が硬直してしまった。
「冷静さを失うな」
 カーウィンドウを降ろし、骸が車外に乗り出す。
「ちょ、ちょっと! 何するつもり!?」
「化け物退治だ」
 骸は手を肩に当てた。指先がズブリと皮膚を突き破って、体内に入り込んだ。
 ズブブブブブ……。指は肉を裂いて、深く体内に潜っていく。そして腕までが体を突き進み、彼の手が何かを掴んだ。
 彼は肩から何かを引き抜いた。骨のような、白く、長い――あれは、骨?
「……それ、何なの?」
「俺は骨刀(コツトウ)と呼んでいる」
 あれが、人面蜂を屠り、怪猿の腕を斬り落とした、武器。
 彼の、武器なのか。
 彼は一体――骸とは一体“人”なのか? 本当に我々の味方なのか?
「ちゃんと前を見て、運転を続けろ」
 骸は車を飛び出て屋根に登った。車体のひっついていたノミどもが彼を注視した。
 握られた骨刀をフロントガラスの巨大ノミに突き立て、骸は怪虫の体を真っ二つに切り裂いた。ギョイイイ――
 フロントガラスに赤く、どろどろとした液体が撒き散らされ、視界が塞がれるのを見て、詩帆は慌ててウォッシャー液を吐き出させ、ワイパーを動かした。それでもガラスの汚れは除去しきれてはいなく、悪い視界の中で、彼女は少しの余所見も出来なくなった。
 屋根に乗っている骸は、車体にひっつくノミを次々と薙ぎ払っていた。闇の中から現れる、無数の怪虫。薙いでも薙いでも現れる。
「キリがないな」
 骨刀がノミの背中に突き刺さる。グチュ、という不快音に続いて、血が溢れた。それはこの虫が吸い取った、人間の血かもしれない。
 そこで今までと違ったことが起こった。避けた巨大ノミの背中から、何かが這い出てきたのだ。
それはムカデのようだった。怪虫の傷口からウヨウヨとムカデが這い出てくる。
「まずいな」
 這い出てくる無数のムカデの一部が、詩帆のいる車内に侵入していった。
「キャアアアア!!」
 続く叫び声。
 車が大きく揺れた。
 定まらない不安定な走行。
 骸はノミを数匹蹴飛ばして、車内に向かって大声をあげた。
「大丈夫だ、運転に集中しろ!」
 その言葉は詩帆の耳には受け入れられはしなかった。



<作者のことば>
このペースでいくと近々連載ペースが落ちそう。
今後の展開について考える時間も欲しいし、一時休載的なことになるかも?

まぁ、短い休みにしたいとは思ってます。


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COMMENT

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ライム | URL | 2010/02/20(土) 06:44 [EDIT]
驚異的なスピードで書き進めてこられたので、途中でイメージを充電したり、展開を展望したりするのもいいかもですね。
にしても、こういうものを書き進められるスタミナもすごいですね。私だったら1回分でエネルギーが尽きてしまいそうです……。

匡介 | URL | 2010/02/20(土) 10:56 [EDIT]
>ライムさん
驚異的な(笑)
最近は書くことに集中出来てないので(映画が観たい、あの本読まなきゃ~!(笑))、こういうときは書くことから離れてやりたいことやろうかと。
それにここのところイメージとのブレが気に入らなくて、今はいくら書いても良いものが書ける気がしないんですよー(泣)

しかし1回分で尽きそうって、ライムさん結構タフそうですけれども?(笑)

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