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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2008/07/11(金)   CATEGORY: 雨の日のうた
雨の日のうた(2)
 曇り空。予報では雨は降らないらしい。俺は自慢のヨンフォアを大学病院へと走らせていた。さっき電話があって婆ちゃんが倒れて病院に運ばれたらしい。あの殺しても死ななそうな婆ちゃんが倒れたなんて信憑性に欠けるが、実際に病院から電話があったんだから仕方ない。
 空を見上げると今にも雨が降りそうな怪しい雲行きだったが、どうにか雨は降らず俺は大学病院へと着いた。婆ちゃんのところへと急ぐ。「婆ちゃん大丈夫か」なんて言って入ってみると意外と元気そうな婆ちゃんがいた。倒れたっていうからてっきり病気かなんかを患っちまったのかと思っていたけれど、本当のところは誤って踏み外して駅の階段を転げ落ちたというハナシ。まあ、実際骨折してるんだけど全然元気だし心配し損な感じだった。ちなみに病院からの電話をとったのは親父。俺は親父から話を聞いただけ。やつめ、ちゃんと説明しやがれ。
 さすがに婆ちゃんを後ろに乗せてバイクで走るわけにも行かないし、ここは親父が来るまでどうしようもないだろう。俺は医者から簡単な説明を受けたけれど、半分以上聞き流していた。とりあえず無事ならそれでいい。細かい説明はあとでもう一度親父が受ければ充分だ。俺は病院を出た。そとは雨だった。それも大雨。これだから天気予報なんてあてにならない。それに梅雨なんて大嫌いだ。

+++

 俺は売店で傘を買った。安っぽいビニール傘が300円もした。これは親父につけておく。俺は300円の傘を持って外に出た。雨はしばらく止みそうにないし、俺のヨンフォアは置いていくしかないだろう。最悪。
 病院の玄関にひとりの女の子が立っていた。見た感じ、歳は俺より少し下。それで綺麗な黒髪と白い肌。髪はボブっぽい感じ。それで目が大きい。とても可愛い女の子。どうやら雨が止むのを待っているように見える。俺の手には安っぽい300円の傘。
「こんにちは」俺は声をかけた。
 彼女はこっちを向いて俺を見た。そして少しの間。ほんと少しの。
「こんにちは」
 彼女の声はとても可愛らしかった。少し高くて上品な声。
「雨、止むの待ってるの?」
「ええ。そうです」
「家はどこらへん?」
 彼女は怪訝な顔をした。おっとこれはマズイ。
「傘、一緒に入らない?」
 少しの沈黙。
「俺、バスなんだけど、キミもそうなら入っていかない?」
「わたしもバスなんです」
 そう言うと彼女は優しく微笑んだ。それはとっても可愛いかった。思わず抱きしめたくなっちゃう! そんな感じ。

+++

 彼女の名前は松本可南子。歳は意外にも19歳。俺より年上。両親は別居中で母親は実家に住んでいるそうだ。ちなみに母親の実家があるのは俺の地元。さらに言うと母親は倒れて入院。だから可南子は東京からこんなド田舎に飛んでくることになった。
「すごい頭ですね」
 一緒にバスを待っているときに言われたヒトコト。まあ、そう思うのも仕方がない。なにせ俺の髪は燃えるように真っ赤なんだから。もはやトレードマークの赤い髪。
 可南子がこっちで住んでいるのは母親の実家、ではなくて短期契約のアパートらしい。俺はなんで母親の実家に泊まらないのか訊かなかった。ただ単に母親の両親、つまり祖父母と仲が良くないだけかもしれない。
「今度、遊びに行っていい?」
きっとこっちには知り合いはいないだろう。慣れない土地で、ひとりで生活するのも寂しいと思う。大丈夫、下心はないから。俺がそう言うと可南子は、ふふ、って感じで笑った。笑顔が可愛い女だ。
「ぜひ、来て」
 俺らはバスを待つ短い時間でだいぶ仲良くなった。意外と色々な話ができたし、連絡先も交換した。そしてしばらくしてバスが来た。
「連絡する」
 俺がそう言うと可南子はまた、ふふ、って感じで笑った。可南子がバスに乗った。バスのドアが閉まって発車した。俺は遠くなっていくバスを見つめていた。バスに乗った可南子もこっちを見ていただろうか。もしそうだとしたなら、さぞよく見えただろうと思う。俺の真っ赤な髪はよく目立つ。


<作者のことば>
「雨の日のうた」は作者的には賛否両論。
なにせ、爆音デイズのメインキャラクターの龍次のイメージを、作者の実力不足で壊しかねない。

今でも一人称でよかったのかなぁ、と不安になります。

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