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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/02/04(木)   CATEGORY: MUKURO・地獄篇
MUKURO・地獄篇‐8 (人面蜂)
「え!?――安生さん、後ろ見てください!」
 不意に詩帆が叫んだ。
 驚いて三貴彦がバックミラーを見遣った。「今度は何だい?」
「巨人が――」
 崩壊。
 巨人――ダイダラボッチが――まるで土くれで出来た泥人形のようにぼろぼろと崩れ始めていた。その巨躯を維持できないといったかのように、重力に逆らえず、森羅万象世の理(ことわり)には克てぬといった具合に、巨人の体は崩壊を始めていた。
「助かったのか――?」
「そう思うにはまだ早いと思いますけどね」
 確かにそうだった。延々と続くループのように、次から次へと災難は降り注ぐ。新たな敵は彼らを取り囲む人面蜂。この包囲網から逃げ延びなければならない。
「あんなのに一刺しでもされたら即死だろうな」
「どうします?」
「どうするって言われてもなぁ。何かこちらに武器があるといいけど」
 そこで彼はあることに気付いた。もしかすると、これは使えるかもしれない。
「ちょっと運転代わってくれる?」
 車を停めずに再び運転を交代した。
 三貴彦は後部座席へと移り、さらに荷台から何かを取り出そうとしていた。
「どうしたんです?」
「いや、ちょっと――あったあった、これだ」
 詩帆が覗き込むと、三貴彦の手にあったのはスプレー缶だった。
「ヘアスプレーと殺虫剤?」
 取り出された数本のスプレー缶。詩帆にはこれらを何に使うのかさっぱりわからない。
「これらはいわゆる可燃性スプレーだよ。ライターもあるし、上手くいけば即席火炎放射になるかもしれない。それでこいつらを倒せるかはわからないけど」
 スプレーを構え、片手にライターを持って、三貴彦はカーウィンドウを下ろした。
 ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ――…
 ライターに火が点(とも)る。人面蜂向けてスプレーが固定された。
「喰らえ!」
 噴霧したスプレーがライターの火で引火して、大きな炎となって人面蜂を襲った。
羽が燃え、蜂の顔は苦痛に悶えた。効果はあるようだ。三貴彦はライターの火にスプレーを噴きかけ続けた。
「おおおおおおおおおおおおううううう!!」
 蜂が野太い声を上げて、地面に叩きつけられた。体中が炎に包まれ、悲鳴は止まらない。
「一匹倒した!」
 三貴彦は次の人面蜂向けて即席火炎放射を放った。
 ボオオオオオオオオ――!!
 炎は勢いよく人面蜂の体を焼いていく。
 ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ――……
 異変を察知した人面蜂が集まってきた。さすがの三貴彦も、複数匹相手には戦えない。
「安生さん!!」
 詩帆が叫ぶ。
 三貴彦の視界が一気に狭まる。車は濃い霧に包まれた。
「なんだこりゃあ!?」
「わかんないんです。急に霧が現れて、どうしようもできなくて……」
 見えてせいぜい5メートルの濃霧。先が見えないまま走行するのは当然のように危険が付きまとう、しかし今この場で車を停めることもできなかった。これ以上、人面蜂を優位にさせるわけにはいかない。
「やばい、スプレーが切れた」
 慌てて次のスプレーに切り替えようとする三貴彦。
 しかし人面蜂たちはその隙を逃さなかった。
 ――三貴彦の腕に一匹の人面蜂が止まった!!
 冷や汗が噴き出るほどに、恐ろしく大きな毒針。それが三貴彦に向けられる!
 人面蜂の、人面が、いやらしくにやりと笑った。
 三貴彦は振り払おうと頑張るが、その脚はしっかりと彼の腕を捕らえ、鉤爪が、彼の肉に食い込んでいた。
「クソ!」
 人面蜂の腹部がばっくりと割れた。そこからうねうねとピンク色の触手が現れた。
 てらてらとした質感の触手が三貴彦の腕に絡みつく。
 ぬるく、ヌメヌメとしていて、妙に柔らかい触感が三貴彦の腕を包み込んだ。
「大丈夫ですか!?」
 三貴彦の異変に気付いて詩帆が叫んだ。
「大丈夫だ、こっちで何とかする。君は運転に集中してくれ」
 しかし三貴彦は自分がもう助からないと思い始めていた。もう無理だ。
「ケケケケケケケケケケケ――!!」
 人面蜂が大声で笑い出した。
 まるで三貴彦の諦めと見抜いたかのように。
 これでは、本当に敗北だ。
 屈辱的だった。突如現れたわけのわからぬ生き物に、襲われ、今殺されようとしている。
 俺の人生はこんな終わり方をするのか、こんなやつに殺されるために生きてきたのか!?――いや、違う。俺はこの気色の悪い、不気味な、心底吐き気のする化け物に殺されるために今まで生きてきたわけじゃない! そのために頑張って生きていたわけではない!
「人間の底意地ってやつを見せてやる!」
 三貴彦は触手に捕らえられた手に持つライターを点火した。
 ――喰らえ、化け物!!
 スプレーを噴射する。
 引火。目の前の空気が炎に変わった。
 燃える、腕、触手、人面蜂。
 大きな炎、燃える、燃える。
「うああああああああ!!」
 炎に肉を焼かれ、三貴彦は絶叫した、が、その手はライターもスプレー缶も放さない。彼は燃やし続けていた。自分の腕を、人面蜂を。
 そのとき、車が宙に浮いた。



<作者のことば>
個人的に不気味ランク第1位(暫定)なのは人面蜂。
今のところ彼が一番グロテスクな存在ではないだろうか。

てか、何かが足りない。

そうか、エロスか。
エロスが足りないし、意外に人が死ぬ描写はほとんどない。もっとバイオレンスな描写増やしたい。

血とか撒き散らそうぜ! 脳漿とか撒き散らそうぜ! 肉片とか撒き散らそうぜ!

よし、今後はそういう方面のグロテスクさも取り入れよう。


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