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みやび萬紅堂。
かつて小説に似たものが書かれていた所、その残骸。
DATE: 2010/02/02(火)   CATEGORY: MUKURO・地獄篇
MUKURO・地獄篇‐7 (ダイダラボッチ)
 彼は、巨大に盛り上がる塊を見た。
 それは小さな丘に始まって、山となり、それでもまだ肥大を続け、今は人の形を成そうとしていた。
 彼は、それを見ていた。
 巨人は、ダイダラボッチを想像させた。
 彼は、巨人に向かって歩み出した。
 それは徐々に速度を上げ、すぐに人とは思えぬ速さに達した。
 巨人はゆっくりと進行を始めた。


 ***


 突如として現れた巨人に、三貴彦たちは動揺していた。
 不意に暗くなったと思えば、後方に巨大なビルのようなものが現れ、よく見てみるとそれは人の形をしていた。詩帆はそれに見覚えがあった。アパートを持ち上げた、あの巨人。無機質な眼が、ふたりを乗せたランドクルーザーに向けられた。
「おいおい、あれは何なんだよ!」
 後部座席で休んでいた三貴彦が詩帆の肩を叩いた。
「交代しよう」
「あ、はい」
「停めている余裕はない。運転しながら代わろう」
 三貴彦がハンドルを引き継ぎ、詩帆は運転席から脱け出した。三貴彦がアクセルを強く踏み、車は加速を続ける。
「安生さん!」
 助手席に移動した詩帆が叫んだ。彼女が指差す先に、大きな断層があった。地割れ。こちらと向こうの車道の間にある、大きな溝。深く、底は見えない。
「クソッ、全速力で飛び越えるしかない!」
「飛び越えるって…」
「だってそうでもしないと逃げ切れないだろう!?」
 詩帆がバックミラーを覗いた。後方では、ゆっくりとした動きながら、確実に巨人――ダイダラボッチは彼女たちに向かって進んでいる。
「行くぞ!――掴まってろ!!」
 最高速度に達したランクルは、猪突猛進の勢いで、車道を隔てる大きな割れ目に挑んだ。ジェットコースターのような一瞬の浮遊感。詩帆は目を閉じた。あとは願うだけ。――届け届け届け届け!!
 ガウン! 車体まるごと軋むような衝撃音。
「や――やったぞ!」
 着地の衝撃による、体の痺れを感じながら詩帆は目を開けた。
 視界には、また車道が広がっていた。
「ヤッタゾ!ヤッタゾ!――ッテナンダ?」
 ハッとして、詩帆は後方を確認する。
 あの巨人は先ほどより近付いているのが見て取れた。
「安生さん、このままじゃ追いつかれちゃいます!」
「これでも精一杯だよ」
 背後から迫り来る死の足音。
 どうしてこうなってしまったんだろう――そんな思いが膨れ上がる。
「なんだこりゃ!?」
 三貴彦が奇声を上げた。
 どうしたのかと詩帆が彼に問おうとするより早く、彼女は何が起きたのかを理解した。
 窓の外に、1メートルを超すほどの、巨大な蜂がいる。
 しかも、その顔は人のそれだった。
 人面蜂。その無表情さがこれほどまでかというくらい不気味で、詩帆の全身に怖気が襲った。
「気味が悪い。一体どうすりゃいいんだ」
 三貴彦に出来ることはただただ強くアクセルを踏んで、もっと速く、もっと遠くに逃げることだけだった。
 ヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴヴ―――……
 耳障りな羽音が耳朶に触れる。
「おお――神よ!! いるなら俺を助けてくれってんだ!!」
 そのとき、彼らの後方で異変が起こった。



<作者のことば>
前回の「今後の方向性」について決定。
ちょっと迷ったけど、惑ったけど、まぁ 当初のイメージ通りに進めるとする。

決定ついでにタイトル変更。

「MUKURO・地獄篇」が今作品のタイトルになります。
地獄篇ってことは他にも○○篇があるのかってことになりますが、今のところそんな予定は微塵もありません。ははは。


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COMMENT

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ライム | URL | 2010/02/02(火) 18:59 [EDIT]
ダイダラボッチをぐぐってみたら、どうやら地形を変える巨人らしいですね。
眼は1つの場合も2つの場合もある、と。
そうか、この小説は天変地異の話なのか。
それなら怖く……いや、超怖いって( ̄◇ ̄;)

匡介 | URL | 2010/02/03(水) 09:10 [EDIT]
>ライムさん
そうです、一部の山や湖などを作ったとされている巨人です。
ジブリ映画「もののけ姫」にもダイダラボッチと呼ばれる巨人(?)が出てきていますよ!

ダイダラボッチには諸説あって、たとえば製鉄に関わる一族のことを指している等いわれている巨人です。一つ目なのは、製鉄をする人間が片目を瞑ったり、片目が失明してしまうことが多かったため、という見方もあるようですね。地形を変えるのは、製鉄のために山を削るからとか。

しかし、あくまでイメージとして捉えて欲しいだけであって、今回出てきたものがダイダラボッチなわけではないので! 天変地異の話じゃないですよ!(笑)

いりげん豆 | URL | 2010/02/04(木) 08:17 [EDIT]
スピード感があってワクワクします!

匡介 | URL | 2010/02/04(木) 09:13 [EDIT]
>いりげん豆さん
ありがとうございます!
今後もワクワクして頂けるよう頑張りたいと思います!!

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